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2019-09-03

「椅子は小さな建築」② / ハンドメイド家具とモダニズム


 

小さい頃から何でも自分で作ることが好きだった。

プラモデルはもちろん好きだったけど、既存のものでは満足できずに1/35スケールの兵隊を熱したドライバーで少しずつ溶かし、ブルースリーを作ったりもした。ミニチュアねぶたは毎年作っていたし、鳩小屋も作った(鳩は飼わなかったけど)。

そのせいか、店の内装は自分で手掛けることが多かったし、店に置く什器もトンカチトンカチと自分で作っていた。

昔はネットの検索もなかったので、外国のショップや住居が載っているインテリア雑誌やファッション誌をとにかく読みまくっていた。

インダストリアルなテイストの無骨なテーブル。経年でペンキが剥がれ落ちたような壁。

 

20年以上前に作った什器はまだ現役。
フィギュアが並ぶ棚もハンドメイド

 

ミリタリーやアメリカンダイナーなど、古き良き50年代のアメリカにも惹かれたが、100年以上も前の古い建物にビビッドな色を塗りたくる、ロンドンのショップファサードもカッコよかった。

 

しかし、ハンドメイド&セルフビルドに変わり、90年台後半あたりから、ファッションやインテリアに新しい波が来始めた。デザイナーの再認識である。

ファッションでもインテリアでも、デザイナーというものは昔から存在していた。ファッションにおいては、70〜80年代に活躍していたデザイナーが作る服は、個性が際立つモノが主流だった。

ところが、90年代後半になるとファッションはベーシック&スタンダードに変化し始める。だがこれまでの定番では少々物足りない。そこで新しいジャンルのデザイナーが脚光を浴び始めることとなる。

以前のデザイナーとは異なり、無からデザインするというよりは、既存のもののアレンジ、別注、そしてコラボレーション。いわゆる編集能力が高いデザイナーの存在が注目されるようになったのだ。

彼らは、何かを作り出すというよりは、広い視野を持ち、多角的に編集する感覚に優れていた。一般的なファッションにおさまらず、ストリートファッションやネイティブインディアンのスタイル、そしてアート、家具、やがては建築の分野まで、彼らのアンテナが張り巡らされるようになった。

この流れは、家具やインテリアの世界にも大きな影響をもたらした。編集能力の高いデザイナーたちが注目し出したのが、かつて30〜60年代に活躍した家具デザイナーたちの作品だった。

セルフビルドやハンドメイドなど、ナチュラルスタイルが定番になりつつあったインテリア業界だったが、そこにデザイナー家具を取り入れる。それにより、店舗や住宅はモダンなスタイルに変化し始めたのだ。

 

一般住宅の場合、ファッションとは違い、部屋に置くものは他人に見られることはない。私自身もインテリアにお金をかけることはほとんどなかった。もちろん嫌いではなかったので、テーブルやテレビ台などは自分で製作した。レトロな雰囲気が出るよう、塗装も工夫した。

しかし、金属や革を使ったデザイナー家具が醸し出す雰囲気。あれは、ハンドメイド家具で出すことは難しい。やがて私はセルフビルドテイストの雑誌から、もっとモダンでエッジの効いたインテリアを特集する海外誌を読むようになった。

 

そして海外のインテリア誌を読むうちに、あることに気づいた。有名な家具デザイナーのほとんどは、有名な建築家でもあるということだった。

 

ハーマンミラー社の家具で有名な「CHARLES & RAY EAMES(チャールズ&レイ・イームズ)」は、『ケーススタディハウス』を手掛けた。

『カウフマン邸(落水荘)』で有名な「Frank Lloyd Wright(フランク・ロイド・ライト)」は、タリアセンというシリーズの照明をデザインした。

有名な『バルセロナ・チェア』をデザインした「Mies van der Rohe(ミース・ファン・デル・ローエ)」は、バルセロナ万博におけるドイツ館(バルセロナパビリオン)を手掛けたドイツで最も知られた建築家である。

 

そして、ライト、ミースとともに「近代建築の三大巨匠」の一人と言われたのが「Le Corbusier(ル・コルビュジエ)」 

今さらここでの説明は不要だと思うが『サヴォア邸』、『ラ・トゥーレット修道院』、日本の『国立西洋美術館』など、数々の有名建築があり、その多くが世界遺産となっている。

世界遺産となっているコルビジェ建築の中で、最も古いものは「レマン湖の小さな家」で、これは彼が自分の母親のために建てた家である。なんと1923年の竣工。日本ではまだ大正時代のこと。

私は、美術館や庁舎などの公共建築よりも、小さい建築やその内装の方に興味があったので、この「小さな家」についての本はかなり読んだ記憶がある。

やがて、それらを読み進めるうちに、自分も自分なりの「小さな家」に住みたいと思うようになった。そして、そんな「小さな家」にお気に入りの家具を置いてみたいという気持ちが湧いてきた。

ちょうどモダニズム建築の本を読み始めた頃、結婚し娘が生まれた。私は建築家ではないし、専門的な建築知識も全くなかったが、自分で小さな住宅をデザインすることに挑戦した。

 

ジョージネルソンの時計とアンティークのカレンダー

当時はまだFacebookもやっていなければBLOGもやっていなかった。カチンコチンになった自身の頭の中を引っ掻き回して、10年以上前の記憶を掘り起こせるだろうか。

 

* 前回の記事 → 「椅子は小さな建築」① / 家具と写真」

 

 


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