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2025-06-06

「舞戸小学校写真クラブ」 〜母校での講義〜


 

ゴールデンウィークが終わった5月の中頃、故郷の鯵ヶ沢へ車を走らせた。久しぶりな気がする。

昼飯がまだだったので、駅の近くにある「番場食堂」へ向かう。自分が小さい頃は、もっと駅に近いところにあったが、今は踏切を越えたところにある。

「番場食堂」で注文するのは、決まってチャーシュー麺だ。以前ブログで書いた頃に比べると、結構値段が上がっている。

 

 

窓の外を走る列車を見ながら、ラーメンをすするのも良い。

腹を満たした後は、食堂の前の坂を上がってみる。坂の上からは、グランド越しに小学校が見えた。校門はあるが、車は入れないようになっていた。

 

ちょうど半世紀前、私はこの「舞戸小学校」の6年生だった。当時はこの門が正門だった。

グランド越しに見える校舎も当時のものではない。新しい校舎は、昔の校舎があった場所の後方に建てられていた。

ぐるっと道を回り、バイパスの方から学校の駐車場に入る。現在の正門はそちら側にあった。

 

 

予定よりも少し早く着いたので、受付で挨拶を済ませ、グランドの方を散歩する許可をいただいた。

校舎の裏にあるグランドは昔のままだった。かつての正門の方に歩いてみた。

門の側に像が立っている。男の子と女の子が大きな球(地球だろうか)を天に向ける像。

 

この像は開校100周年を記念して建てられた。ちょうど6年生だった自分がこの像の除幕式の役を担った。

同級生の女の子と一緒に幕を引っ張った記憶があるが、誰だったかは覚えていない。50年も前の話だ。

 

 

なんとも言えぬ感慨に浸りながら、私は校舎に戻った。再度、受付で挨拶をすると図書室へ案内された。

図書室には誰もいなかった。6人掛けの大きなテーブルを少し移動させて、話をしやすい配置を考える。なるべく子どもたち全員の顔が見えるようにした。

 

「小学校に写真クラブを作りたいので、是非講師として来てほしい」という依頼が、鯵ヶ沢写真クラブへあった。

地元の学校からの依頼ということもあり、快諾することになった。そしてその一発目の講義を私が受けもつことになった。

14時50分。12名の子どもたちが図書室に集まってきた。

昨今は名札をつけていないので、名前も学年もわからない。まだまだ小さな子もいれば、中学生に見える子もいる。

コミュニケーショをとるために、私はひとりひとりの名前を聞いてメモをした。

 

「写真クラブ」ではあるが、子どもたちが手にしているのはカメラではなくタブレットだった。

日頃の授業でタブレットを使っているだけあって、写真を撮るツールとしてはカメラよりも馴染むのだろう。

クラブの時間はわずか50分。タブレットを使用ということもあり、カメラや写真についての難しい話はナシ。

「学校の中を散策して、気になる光景やモノをいろんな距離やアングルで撮ってみよう!」ということになった。

子どもたちは廊下に寝そべって撮ったり、職員室で仕事をする先生を撮ったり、バケツの中の水をアップで撮ったり。楽しそうにタブレットを覗いている。

 

クラブが終わる15分ほど前に、再び図書室に集合。

各自で撮った写真の中からお気に入りの1枚を選んでもらう。そしてさらに、その1枚にタイトルをつけてみることにした。

それぞれのお気に入りを机の上に並べた。長い廊下の写真。消火器の写真。階段の写真。

おもしろい写真に意欲のある子は、やはり「おっ!」と目を引く写真を撮る。

おとなしそうな子は、やはりおとなしい写真を撮る。階段を被写体にした子の写真はどこか静かだ。タイトルもストレートに「階段」である。インパクトはないが詩的に思えた。

インパクトのある写真はわかりやすいし褒めやすい。しかし地味でおとなしい写真も選んで褒めた。私自身の写真がモノクロが多く地味ということもあり、そういう写真に惹かれてしまうのだ。

全員の写真について感想を伝えようとは決めていたが、時間もあまりなく、感想の中身が少し薄かったかな。そこは自分の力不足だ。初めての講義ということもあり段取りもよくなかった。

でも自分自身も楽しくできたように思う。

 

6月5日。2回目の写真クラブ。

前回と同じ席に座ってもらい、なるべく子どもたちの名前で話しかけ、コミュニケーションを取る。

今回は外に出て、学校の周りの気になるものを撮ることにした。さっきまで降っていた雨も上がっている。子どもたちは外履きを履いて、中庭やグランドに散っていった。

植物を撮る子、水飲み場を撮る子、サッカーボールを撮る子。みんなそれぞれに気になるものを撮っている。

当時と変わらぬグランドに、50学年も下の後輩たちと一緒に立っているのは、なんとも不思議な感覚だった。

 

再び図書室に戻り、各自が撮った写真を見せ合いながら鑑賞会をする。

タブレットで撮る写真は、デジタルカメラよりも解像感に劣る。故にピンボケもあれば、白飛びや黒潰れも多い。

でも、そういう風に撮った写真も見方を変えればオモシロい。案外子どもたちもそういう写真のオモシロさを感じているようだ。

作戦通りに撮れた写真も良いが、意図せずに撮れた写真の方が良かったりもする。

それは大人でも同じ。

  

 

「あまり難しく考えずに、まずは気持ちが動いたものにレンズを向けて撮ってみよう」と、子どもたちに伝えた。

そしてそれは、自分に向けて言っていることに気づいた。

 

 


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