2025 東北旅紀行 「旅館 多郎兵衛」~湯沢 小安峡温泉~
角館を経ち、大曲、横手と国道13号を南下し、湯沢に向かった。
弘前に近い大館、海沿いの秋田や能代に比べると、内陸の大曲や横手が秋田県のどの辺りにあるのかをイメージするのはなかなか難しい。湯沢となると、尚更である。
秋田の温泉といえば、玉川温泉や乳頭温泉、後生掛温泉などの超有名な温泉が知られる。しかし、これら八幡平山麓へと続く路の多くは、冬期間は通行止めとなっていた。
秋田に住んだことのある歌の先輩に訊いてみたところ、「湯沢にいい温泉がある」らしい。
国道13号を左に折れ、国道398号を走る。
途中、うどんの製麺所や店を数多く見かけた。通りにあるバス停を見て、ここがあの有名な「稲庭」だと気づいた。
稲庭の集落を過ぎると、路の左右は山に囲まれ始めた。道沿いに流れる皆瀬川は峡谷となり、やがて「小安峡」と呼ばれる険しくも美しい絶景が現れた。
「小安峡」には、いくつかの温泉が点在する。その中でも際立った存在感を魅せるのが「旅館 多郎兵衛」である。
険しい山の中にあるとは思えぬ外観。建物の中も高級感が漂っている。
「多郎兵衛」の特徴は、「薬師の湯」「陶喜の湯」「風の湯」「三宝の湯」と、4種の温泉があり、しかもそれらが独立しているのだ。(ただ、冬期間は「三宝の湯」はお休みらしい)
一般的な温泉は浴場に入ると、メインの浴場や露天風呂を一度に味わうことができる。しかし「多郎兵衛」は、それぞれの浴場で脱衣しなければならない。日帰り入浴は15時までとなっていた。あと1時間。時間の配分が難しい。
まずは、メインの「薬師の湯」に浸かろう。
幸運なことに男湯には誰もいない。独占浴だ。
床や湯舟は熊本阿蘇の石で造られている。見上げると、迫力のある秋田杉の梁に驚かされる。なんとも贅沢な造り。
湯は思いのほか熱くはなく、ほんのりと良い加減。単純泉らしく色は無色透明で、味も匂いもほとんど感じられない。
ゆったりと浸かりたかったが、露天も味わいたかったので、早々に体と頭を洗う。二度、湯船に浸かり、すぐに着替えて「陶喜の湯」に向かう。
「陶喜の湯」は、上の空間が外と繋がっている半露天風呂で、湯船に「栗駒焼」が敷き詰められた変わり風呂である。
外の景色は見えなかったが、壺などの工芸品が飾られたお洒落な空間。洗い場はなく、湯に浸かるだけの空間。瞑想をするような場所にも思えた。
ただ、ここでもゆっくりと瞑想している時間はなかった。
再び着替え、すぐ隣の露天「風の湯」に向かう。外へと出る扉にお知らせの貼り紙があった。
「本日の風の湯は、14時で終了とさせていただきます」
ガーン!な、なんと…もう終わっているではないか。
残り20分をどうするか。結局、最初の「薬師の湯」に再び浸かることになった。
それにしても、数十分の間に3回も服を脱いでは温泉に浸かるという…
津軽のオッさんがひとりアタフタとする光景は、我ながら「笑いまっしょ、ワッハッハ! ああ〜オモシロイ!」であった。
さて本日の宿、山形へ。
3月20日(木) 東北旅紀行一日目 その2
まったりと、続く。