「 三浦孝治展 」
コージ先輩の個展を拝見してきた。
過去のブログで書いていたかもしれないが、コージ先輩は村上研究室の私のひとつ上の先輩である。
先輩ではあるけれど、私は一浪していたので歳は一緒だった。でも同い年と思ったことはなく、やはりコージ先輩は何十年もの間、私の先輩だった。
村上先生の研究室には、ふたつ上に木村先輩がいて、ひとつ上にコージ先輩がいた。木村先輩は一番弟子でコージ先輩は二番弟子だった。
しかし私は三番弟子ではなかった。何故なら、よく遅刻をしては先生に叱られ、ロクな仕事もせず、だらしない学生だったからだ。
そんなだらしない後輩だったが、どういうわけか2017年の1月に田中屋画廊にて開催された『村上善男とその弟子達展』への誘いをいただき、木村先輩やコージ先輩と一緒に出展することになった。
( ⇨ 「村上善男とその弟子達展」備忘録 )
コージ先輩が作品を描き続けていたのは知っていたが、実際にどのような作品を描いていたのか?それを知ったのはその弟子達展のときだった。
村上先生の色をしっかりと引き継ぎながら、自身の色をガツンと出していて、付け焼き刃な私の作品を我ながら恥ずかしく思った記憶がある。
それから数年が経ち、2022年にギャラリーデネガにて『 二人展 杉原しあん / 三浦孝治 』が開催された。
先輩の娘さんとの二人展だった。そのとき私は、コージ先輩の小さな作品をひとつ購入した。村上善男イズムの残る作品で、少しだけパリの匂いのする作品だった。
その後、コージ先輩にお誘いを受けて、先輩のアトリエで二度ほど酒を共にした。先輩は美味しい料理も振る舞ってくれた。
この度の個展もギャラリーデネガで開催された。
遅い時間に訪れたが、コージ先輩は娘さんと一緒に在廊していた。弟子達展の頃に比べると、先輩の頭もだいぶ白くなっている。でも、相変わらずダンディでカッコよい。
いただいた案内状を見たときに、これまでとは作風が違うような気がしていたが、会場で観るとそれは明らかだった。
私の勝手な感想かなと思い、先輩に尋ねると「そう、これまでとは全然違う」と答えた。
あるとき、先輩が尊敬するアーティストに作品を見てもらったのだそうだ。その際「村上先生の色が強すぎる。お前は三浦孝治なんだから三浦孝治の仕事をしろ」と言われたそうだ。
コージ先輩は、村上善男の系譜を踏襲しながら描き続けていくつもりだったらしい。どんな人間でも恩師の影響は多かれ少なかれあるし、それを踏襲できるのもまた一部の限られた人間にしかできない。
それでも、そのアーティストの言葉に触発され、新たな表現を模索し始め、わずか2年足らずでこれほどまでの多くの作品を描き上げた。
作品の素晴らしい質はもちろんだが、この新たな表現をこの期間で描き上げる才能と執念には嫉妬すら覚える。
年齢を重ねても、進言してくれるアーティストがいるというのは、コージ先輩にとっても有難いことだろうし、人間いくつになってもエポックメイキングは訪れるのだ。
「弘樹も、やるなら個展やれよ」
私自身にとっても、辛口なアドバイスをくれるのはコージ先輩だけだ。
同い年だけど、コージ先輩の前では常に緊張する後輩になる。
『三浦孝治展』
2024年9月23日(月)まで。 つまり本日まで! ギャラリーデネガにて。
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