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2024-04-28

東北一周旅紀行 その11 〜鶴岡のラーメン「琴平荘 中華そば処」で 1時間待ちを体験ス〜


 

福島市音楽堂での演奏は銅賞に終わり、残念ながら最終日の「本選」に進むことは叶わなかった。

「本選」の金賞団体の演奏を拝聴する選択もあったが、私は朝早く福島を後にして、山形県へ向かった。

 

国道13号線を西へ走る。

山間に入ると急に霧が立ち込めてきた。蔵王や会津磐梯の山々の姿は霧に隠れ、まったく見ることができない。

信号はほとんどなく、すれ違う車もない。いくつもの長いトンネルを抜けると、車は県境を越え山形県に入った。

時折、温泉や米沢ラーメンの看板を掲げるドライブインを見かけるが、そのどれもが廃れた印象を受ける。しばらく走ると米沢市に入った。

 

米沢の街並みは、五所川原や黒石などに雰囲気が近い。

盛岡から仙台、福島へと向かう国道4号沿いの街に比べると明らかに田舎くさく、むしろホッとするところがある。

至るところに米沢ラーメンの名を目にする。そういえば米沢の名がついたご当地カップラーメンを見たことがあったな。しかし、今回はこの先に別の目的があるので素通り。

国道13号を北へ向け、南陽市、上山市を走り、やがて県庁所在地である山形市に入るが、ここも郊外のバイパスを走り、街中には立ち寄らず。

国道13号から112号へと入り、山形市に隣接する寒河江市を走り抜け西へ向かう。ここまで来ると日本海が見える鶴岡市まではあと70kmほどだ。

 

30分ほど走ると視界の向こうに美しい山が見えてきた。月山である。

標高1984mを誇る月山は真っ白に雪で覆われており、青空に美しい稜線を描いていた。

やがて左手には月山湖が姿を現し、これもまた雪の山間に美しい湖面を輝かせていた。

 

美しい山の姿を目にしながら車を走らせると、やがて鶴岡市に入る。

鶴岡市は平野にあると思っていたが、意外にも山並みが市街地の近くまで迫っていた。

鶴岡の街には鶴ヶ岡城跡が残る大きな公園があり、なんとなく弘前に似たイメージを持っていた。

大学の時の先輩と後輩が住む街でもあり、本当はゆっくりと歩いてみたかったが、今回はそのまま通り過ぎ、三瀬海岸の方へ向かう。

 

馴染みのある国道7号線を走ると、日本海が見えてきた。

国道を右折してとても細い道を走り海沿いまで来ると、その店はあった。

 

「琴平荘」

 

「琴平荘」と書いて「こんぴらそう」と読む。もともとは旅館だったらしく、現在もその面影が残る。

なんでも冬場の閑散期にラーメン店を始めたところ大変評判となり、多い日には数百人が並ぶほどで、山形県屈指の名店になったのだそうだ。

今回の東北一周にあたり、いろいろ検索した中でも最も興味を持った店だった。確かに、店の前に100人ほどが列をなしている画像がいくつもあった。

この日も行列があるのだろうか?…少々の不安はあったが、幸運にも駐車場に車を停めることができた。

 

 

玄関を入ると、昔の旅館の雰囲気そのままの廊下があり、「中華そば処」の案内が見える。

案内のまま進むと、その突き当たりに大広間があり、そこが食堂になっているようだった。

襖で閉じられた食堂の前には整理券の発券機が置かれている。私は整理券を一枚とり、襖をおそるおそる開けてみた。

中に100人ほどの客がいた。内心驚き、でも何気ない風を装って私は廊下を引き返した。廊下の途中に待合室があった。その中に入るとそこにはすでに30人ほどの客がいた。

旅館のときの中広間だったのだろうか。皆、畳にごろんと寝転がりながら順番を待っている様子だった。

私も畳に座りゆっくりとくつろぐことにした。長時間運転してきたし、この先を急ぐ旅でもない。こういった待ち時間も味わうことにしよう。

 

 

広間のあちこちにメニューや店のポスターなどが貼られてあった。

待っている間に山形のラーメン事情を調べていたら、なんと年間のラーメン消費量は全国でもトップクラスらしく、山形市に至っては2年連続一位なのだとか。

てっきり青森県人が最もラーメン好きだと自負していたが、結局日本人は皆ラーメンが好きらしい。

 

30分ほど待つと番号が呼ばれ、大広間へ案内された。

大広間には20ほどの大きなテーブルがあったが、テーブル席とは仕切られた待ちスペースがあり、すでにそこに30人ほどが再び座って待っている。

つまり、中広間と合わせると計60人ほどが常に待っている状態なのだ。おそらく激混みの時は、さらに外で待つのだろう。凄い。

 

大広間で30分ほど待つと、やがて自分の番号が呼ばれた。

窓側の大きなテーブル席に自分だけ一人。混んでいてもテーブル席には一組の客が座るらしい。

私は定番の「中華そば(あっさり)」と「漁師めし」を注文した。

混んでいるが席数も多く、回転も良いのだろう。ラーメンはすぐにやってきた。

 

中華そば(あっさり)と漁師めし


大きめのどんぶりに見た目も美しいラーメン。チャーシュー麺にしなくてもよいほどの大きいチャーシューが2枚。ちょうど良いバランスのメンマとネギと海苔。

スープを一口。んん〜、美味い。とび魚の出汁が効いた淡麗なスープは疲れた身体によく沁みる。

プリっとした縮れ麺は口当たりが良く、あっさりとしているが食べ飽きしない味わい。

幾種かの海苔が散りばめられた漁師めしには、テーブルにある醤油だれかラーメンのスープをかけて食べる。あっさりとしたラーメンと相性が良い。

 

しかし、食べてみても「他のラーメン屋とは全く違う特別な味だ!」というわけではない。

1時間も待ち、そしてこの大広間で食べるという、何やら不思議な特別感があるのだろうか。

とても満足な気持ちで食べ終えた。

 

食べ終えた後のとんぶりにも満足感が漂う

 

外に出て、しばらく日本海の風にあたりながら海を見ていた。

海辺に立つ古い旅館というのも、足を運ぶお客さんの気持ちを満足させるのに一役買っているのだろうか。

わざわざ弘前から車で来る客は滅多にいないと思うが、自分にとっては明らかに記憶に残るラーメン屋であった。

 

「琴平荘 中華そば処」(クリックするとお店の様子をご覧いただけます)

山形県鶴岡市三瀬巳381-46

 

 


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