東北一周旅紀行 その5 〜仙台「牛たん料理 閣」にて分厚い牛たんを食らウ〜
花巻を出発し国道4号をひたすら南下する。
花巻、北上、水沢、平泉、一関。国道沿いにいくつかの街が続く。
県境を越える頃になると、車は山々の中を走るようになり空も暗くなり始めた。
「う…ね、ねむい…」 恐れていた眠気が襲ってきた。
前日ほとんど眠れず、200km以上を走り、おまけに温泉に浸かってきたのだ。眠気を誘う条件が揃っている。しかし仙台までの距離は、まだ80kmほど残っていた。
(こんなところで居眠り運転して事故ったりしたらシャレにならんなあ…)
道沿いのファミリーマートの駐車場に車を入れて、少しだけ目を閉じた。
どのくらい目を瞑っていたのだろうか。
目を醒すと、空はすっかり暗くなっていた。ほんの数分くらいと思っていたが、30分ほど寝入っていたらしい。少し眠気も覚めた気がする。
再び車を走らせる。
栗原、古川を過ぎると、仙台まではあと少しだ。街並みが続くようになった。
やがて泉区に入る。仙台中心部まではあと15kmほど。
泉区はかつては泉市だった。43年ほど前、私は泉市の南光台に住んだことがあった。予備校生4人が暮らす下宿屋だった。
現在の泉は、道幅も広く多くの店が並び、高層マンションがいくつも建ち、あの頃の泉とはまったく違う街になっていた。
車線が多い慣れない道を走りながら、車は少しずつ中心部へと入っていった。
ホテル近くの大きな駐車場に車を停め、チェックインをする。
部屋に荷物を置いて、すぐに夜の街へ繰り出した。下調べをしておいた「牛タン」の店は、ホテルから徒歩5分のところにあった。というか、その店に行くために近くのホテルを予約したのだった。
GoogleMapを見ながら歩く。19時前には着く予定だったが、仮眠もしたのですでに20時近くになっていた。
さすがに20時に店を閉めることはないだろう。そう思い、念の為ネットで確認してみた。
「営業時間 11:30〜13:30 18:00〜19:30」
(え” …19時半? マジか…)
ビールをグビっとやりながら牛タンを食う…そんなイメージの牛タン屋が19時半で閉店なんて思いもしなかった。
立ち止まってスマホで牛タン屋を探す。
ランキングも色々とあるけれど、上位にある店であればどこも美味いだろう。
いや、普段美味い牛タンを食うことのない自分の舌に、その違いが判るはずもない。
あるサイトの一番上にあった店が22時半までの営業だった。10分ほど歩くと着きそうだ。
仙台の夜の街を歩きながら、アーケードの中に入る。すぐ目の前にその店はあった。
地下へ向かう階段を下りる。
階段沿いに「お待ちのお客様へ」と書かれた注意書きがいくつも貼られてあった。きっと人気の店なのだろう。
店内に入るとすぐに座敷席へ案内された。中は混んでいる。意外に若い客が多く、女性客もちらほら。
迷わずに「牛たん定食」とビールを注文する。「牛たん定食」は4枚、5枚、6枚と種類があった。少し奮発して5枚のやつにした。麦飯、テールスープがついて2860円。
すぐにビールとお通しが来た。お通しは牛スジ。
私の隣のテーブルには仕事帰りらしい若者がひとり。
彼も「牛たん定食」を頼んでいた。仙台の若者はリッチだ。
美味いビールをグビグビやりながら、長かった一日を振り返る。
そして、スマホで翌日の予定をチェックしているうちに「牛たん定食」が運ばれてきた。
(うぉぉ…美味そう…ジュル)
なによりも牛タンが厚い。分厚い。スゴい。
そしてひと口。うぉ、美味え。歯応えがスゲえ。
テールスープもひと口。うぉ、美味え。牛の出汁がスゲえ。
私は無口になってひたすら食べた。
ま、ひとりで食ってるから無口なのだが、とにかくひたすら食べた。
それにしても、牛タンにはどうして麦飯なのだろう。確かに合うし美味いけど、誰が考えついたのだろう。そんなことを考えながら、ひたすら食べた。
牛タンを3枚ほど食べたところで気づいた。
網で焼きながら食べる牛タンとは違い、皿に盛られた牛タンは思いの外、冷めるのが早い。
焼き立てをかっこむのも良いが、できるならグビグビやりながらゆっくり味わいたい。
しかし、ゆっくり食っていれば冷める。葛藤が生じる。
最後の一枚になった。
少し冷めた牛タンは上手く噛みきれなかった。
そして思った。
自分のようなビール好きの小市民は、薄〜い牛タンを炙って食う方が合ってるのかも。
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