東北一周旅紀行 その13 〜悠々の杜温泉「アイアイひらた」〜
「土門拳記念館」を出ると酒田の街は夕暮れに染まり始めていた。
最上川からほど近いところにあるホテルにチェックインをする。酒田での晩飯は決めていなかった。
ホテルのベッドで少し休みながら、酒田のグルメを検索してみると、なんと酒田もラーメンが有名なのだそうだ。
しかし昼に鶴岡で食べたし、二日前に、仙台&福島で日に2度ラーメンを食べるという暴挙をしたばかりだ。さすがに今夜は控えよう。
晩飯は適当に済ませることにして、私は再び車に乗り込み、夕暮れの酒田を走り出した。
最上川を越える。河口に位置する酒田市を流れる山形最大の河川は、悠々としていた。
そういえば大学時代、全日本合唱コンクールの東北大会に参加すると、審査発表の前に山形大学の男声が「最上川舟唄」をよく歌っていたっけ。
東に向かって走り続けると、やがて小高い山のシルエットが見えてきた。
この丘の上に温泉があるらしいのだ。ネットで検索済だった。カーナビにその住所を打ち込み、ナビの通りに山道を上っていく。
しかし何か変だ。道が狭すぎるのだ。温泉を知らせる案内板も見当たらない。道は急坂になり、車一台がようやく通れるくらいの道幅になった。
これはどう考えてもおかしい。しかし、カーナビはこの道を示している。私は諦めて、ゆっくりとバックしながら道を下った。
車を停めて、スマホでグーグルマップをみると別の道があった。
すでに空は暗いし、周りも家並みが少なく暗い。やや不安な気持ちになりながら走ると、交差点に温泉の案内板が見えた。
右折し、山道を上っていく。先ほどの道とは比べものにならないくらい普通に広い道だ。なんなのだあのナビは。
九十九折の道をしばらく走る。一番高いあたりに着くと、そこは少しひらけていて温泉施設らしき建物があった。
鄙びた温泉というよりは、山の上にあるリゾート温泉といった趣で、大鰐のあじゃら山に似てる気がする。中に入ると思いのほか混んでいた。けっこう地元では人気があるのかもしれない。
それにしても丘の上とはいえ、山奥というわけでもないこの場所で、天然温泉ということはかなり深いところまで掘ったのだろうか。少し疑問に思い公式HPを見てみた。
浴場も混んでいた。湯船はやや変わった形をしていて、大きなガラス越しに外の風景が見える…が、すでに暗くなっていてよく見えない。いくつもの椅子が置かれていて、座りながら寛いでいる人が何人もいた。
外に露天風呂がある。多角形の形をしている。
温度はちょうど良かった。少しだけ舐めてみるとほんのりとしょっぱい。泉質は「ナトリウム塩化物温泉」と書かれてあった。
外気はやや冷たかったが、露天に浸かりながらひんやりした空気を吸い込むのは好きだ。
そしてなんといっても、露天から眺める酒田の夜景が美しい。昼間であれば、豊かな庄内平野を望むことができよう。泉質もさることながら、この眺望を味わうために来る人も多いのだろう。
私は、約1千万年を経た湯に身をうずめ、しばし悠久の時間の中にいた…(嘘くせ!)
悠々の杜温泉「あいあいヒラタ」(公式HP → 「あいあいヒラタ」)
山形県酒田市山楯字南山32-4
さあ、明日は秋田を経由して、ようやく弘前に帰れる。
書き始めて1ヶ月半が経った。長い旅だ。
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