ツール・ド・ツガル / スカイラインから百沢『小松野温泉』へ
岩木山や八甲田の頂あたりには白いものが見えるようになった。
そろそろロードで走れるのもあと少し。ヒルクライムしているときは良いが、下りは凍えそうな気温。そんなときは、やっぱり温泉に限る。
車にロードを積み込み、岩木山の方に向かって走り出した。
岩木山方面に向かう時は、自宅からロードバイクというのがほとんどだ。
だが、今回はロードと一緒に風呂道具も積み込んで、ロード乗りとしては少々邪道ではあるが、岩木山神社まで車で上った。
神社のすぐ近くにある駐車場に車を停め、私はすぐにロードで走り出した。
今シーズン、何度も訪れた岩木山神社ではあるが、そこから先の嶽温泉方面へは走っていなかった。
この時期になるまで、嶽までツーリングしていないのは初めてかもしれない。
ここ2〜3年、コロナや左腕の骨折など、いろんなことがあって岩木山ヒルクライムに参加していなかったこともある。
久しぶりに走ってみても、この路はやはり気持ちが良い。
それなりの上り坂ではあるけれど、ヒイヒイ言うほどの坂でもないし、変わりゆく岩木山の形を楽しみながら走ることができる。
総合公園から見る岩木山は、紅葉が終わり赤茶色になった山肌に雲のシルエットが浮かび、上の方には雪が見えた。
岩木山ヒルクライムの表彰式で賑わう総合公園の駐車場もひっそりとしている。山の空気が冷たい。
そのまま嶽温泉に向かって走る。
久しぶりに走る路だが、周りに見える風景は慣れ親しんだ風景だ。
坂を上りきり、嶽温泉の看板が見える。しかし、そのままその看板を素通りしてスカイラインに向かって走る。
そういえば、青いスカイラインのゲートも、しばらく見ていなかった。
スカイラインゲートの向かい側にある「アスリートの路」は、自分が勝手に名付けた。
路の両側に落ち葉が延々と敷き詰められ、シンメトリーを作っている。
桜が満開の季節には多くの車が停まっていて、写真を撮るのも一苦労だが、今は一台もいない。
ほんの少しだけ休憩して、すぐに上って来た路を下った。
駐車場に戻ると、すぐにロードを積み直して次の目的地へ向かう。
道を左に入り、りんご畑の中を奥へ奥へと進むと、一風変わった形の建物が現れる。
りんご畑の中にポツンとある「小松野温泉」
ここの温泉にはまだ浸かったことがなかった。百沢界隈の温泉は熱い湯が多く、温めが好きな自分としては少し敬遠していたのだった。
「旬楽」とは、この建物の中にある食事処の名前である。
車を停め、中に入り、念のため温泉に入れるかどうかを確認する。
雰囲気の良い女将さんが、「いいですよ〜」と応えてくれた。
ロードで下ってきたせいか身体が冷えていたので、すぐに温泉に入ろうと思っていた…が、せっかくだから昼飯もいただこう。
一番普通のラーメンを注文した。
味はごく普通のラーメン。チャーシューは美味かったが、ちょっと小さめ。
それなりには美味いけれど、特筆すべきこともなし、という感じ。
ラーメン代と一緒に入浴料を支払うのは初めてかもしれない。
ごく普通のラーメンが550円なのはちょいと高いと思うが、温泉の300円は安い。食事とのセット価格があればいいと思う。
浴場(というほど広くはない)は、食堂のすぐ突き当たりにあった。
スニーカーを脱ぎ、男湯の暖簾をくぐると、すぐ目の前に脱衣所と温泉。先客はなし。
中に入ると、3人ほどが浸かれる湯船があり、その正面に大きな窓。そして窓の向こうには大きな岩木山の姿があった。
正確には、岩木山の姿ははっきりとは見えない。窓が少し曇っていたし、覗き見されないように簾がかかっていた。
でも、岩木山の三角形のカタチがあるのは、はっきりとわかった。
そんな風景を見ながら温泉に浸かることができるなんて、なんという贅沢。
でも、熱いんだろうな…そう思い、おそるおそる脚を入れると意外とそうでもない。
身体が冷えている分、最初は少し熱く感じたが、浸かっているうちにちょうど良くなってきた。
湯口からは源泉がドボドボと溢れ出ている。湯は緑色がかった黄土色で、少し濁りあり。
ほんのり塩気と金属臭があり、ギシギシっとした浴感でかなり鮮度を感じる温泉。
近所の百沢温泉とはまた少し違う感じがするが、個人的にはこっちの方が好みだ。
ふと気づくと窓が少しだけ開いていた。
おそらく、女湯の窓も開いているのだろう。山のひんやりとした空気が、男湯から女湯の方に流れている。
この冷気で、熱い湯がちょうど良くなっているのかもしれない。
ほとんど露天に浸かっている感覚だなこりゃ。
ロードでプチクライムし、ラーメンを食べた後というだけあって、そのまま眠りに落ちそうな湯であった。
あ〜サッパど。
『小松野温泉 旬楽』
青森県弘前市百沢小松野87−505
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