東北一周旅紀行 その2 〜花巻のラーメン「麺屋わかな」でたまげル〜
福島市で行われるアンサンブルコンテストの全国大会。
これが今旅の最大の目的であることに違いはないが、交通手段を新幹線ではなく車にしたのには理由があった。
「美術館巡り」をするという目的があったからだ。花巻市にある「萬鉄五郎記念美術館」もそのひとつだった。
盛岡を過ぎ、4号線を南下すると空の向こうに飛行機が見えた。空港があるのだ。
花巻空港は地方にしては珍しく街に隣接していて、しかも国道沿いにある。見たことのない風景だった。
着陸した飛行機とすれ違うようにして、車は花巻の市内に入った。
「萬鉄五郎記念美術館」は花巻市の郊外、というよりもほとんど隣町にあるので、先に花巻市内で昼飯を済ませることにした。
昼飯は、当然ながら事前に調査済みであり、当然ながらご当地のラーメンに決定済み。
その店は、花巻駅からほど近いところにあった。ただ入口は道路に面してなく、脇道を入った裏の駐車場に小さな入り口があった。
「魚とんそば」というラーメンが美味いという口コミがあった。ネーミングにも少し惹かれる。
食べ物に関する情報サイトが信頼できるかどうか?というのは多くの人が思うところだろう。
確かに自分の住むエリアの店を検索したときに「え?この店がランキング1位なの?」ってことはよくある話だ。
多くのサイトが情報操作されたり、口コミもやらせだったりという話を聞くこともある。
でもまあ、そんなのも含めてのネット社会であり、そのくらいの振れ幅も楽しむくらいの方が良い。
ただ知らぬ街を訪れたときは、情報サイトに頼らざるを得ない。あとは自分の勘次第。
店の中に入ると客は4人ほど。券売機で「魚とんそば」のボタンを押す。
カウンター席に座る。店主は妙に雰囲気があって文学者のようにも見える。
あらためてスマホで検索してみると「魚とんそば」は、結構とろみがあるらしい。青森でもよくある「ドロ煮干し」みたいなラーメンだろうか。
「魚とんそばです」
目の前に出されたラーメンを見て、私は目を疑った。
「な…なんだ?このスープは?」
レンゲでスープを掬おうとするが、レンゲの中にスープが入ってこない。
中華料理店にあんかけラーメンというのがよくあるけど、似てるようでまるで違う。ドロ煮干しとも全く違う。
あんかけがラーメンの上に乗っているのではなく、強烈に粘度の高いスープが丼の底まであるのだ。
麺を持ち上げようとすると、麺がスープと一体となって全然持ち上がってこない。
もしかして、特別な食べ方があるのだろうか。独自のルールがあるのだろうか。
少し焦って周りを見回したが、おそらくは同じメニューを頼んだであろう他の客は普通に食べている。そうか、普通に食べていいんだ。
私は落ち着いて、レンゲにスープがゆっくりと入ってくるのを待ち、そしてそれを飲んだ。
「お…」 見た目と違い、味はそんなに濃くはない。
飲みやすいとは言えないドロっぷりではあるが、青森のドロ煮干しに比べれはやや上品なお味。
麺は太麺で、勿論しっかりとスープが絡んでくる。絡むなと言っても絡んでくる。
そして、決してスープに浸ることのないチャーシューはデフォルトでも結構な量があり、なかなか美味い。
津軽の中華そばのように「ズズズーッ」と啜りながら食べる感じではない。
私は、ゆっくりと麺にスープを絡ませながら食べた。少々食べにくいこのラーメンを時間をかけてじっくりと味わった。
一軒目からなかなかインパクトのある強者に遭遇したが、味以上に食したことのない食感とビジュアルに満足。
東北ラーメンの旅は、まずは順調な出だしということにしよう。
ドロっとしたスープを完飲したあとは、いざ「萬鉄五郎記念美術館」へ!
コメントを残す