toggle
2019-01-29

東京のラーメン / 『 らーめん はやし 』


渋谷に着くと、すでに12時をまわっていた。マークシティ横の急な坂道を上ると、あちらこちらの建物からスーツ姿のサラリーマンが現れる。それにしても、けっこうな坂だ。こんな激坂をみると「チャリで上れるかな?」と、つい考えてしまう癖がついていたが、今の自分には無理なのはわかっているので、最近はあまり考えなくなった気がする。

左に折れると、店の前に数人並んでいるのが見えた。この時間帯で数人であれば、余裕の許容範囲だ。ここ最近の出張で2度も振られたラーメン屋『らーめん はやし』  今回は、ようやく食べることができそうだ。私の前には4人が並んでいた。都内の人気のラーメン屋であれば、このくらい並ぶのがちょうど良い。すぐ席に着けるのはありがたみに欠ける。

目の前にある店の暖簾は、雨風にさらされたせいかボロボロに朽ちていた。あえてそれをそのまま掲げているのだろう。店の拘りを演出しているかのようにも見える。

前に並んでいる人が、一人店内に入る。一歩前に進むと、目の前にメニューがあった。「らーめん」「味玉らーめん」「焼き豚らーめん」の3種のみ。つまり、ラーメンは1種類で、味玉と焼き豚のトッピングがあるだけ、というなんとも潔いメニューである。初めての店がこういうメニューだと、迷わなくて良い。

……………………………………………………..

……………………………………………………..

ほどなくして店内に入ることができた。入り口にある食券機で「味玉らーめん」のボタンを押した。席はカウンターのみで10席ほど。私は一番奥に案内された。

スマホで検索してはいたが、どんな味のラーメンかまではチェックしていない。1種類ということだから、おそらくは醤油ベースのラーメンだろう。席の目の前には、ラーメンを説明するようなものは何も置いていない。妙に静かだな?と思ったら、BGMが一切なかった。店主のラーメンを作る音と、客のラーメンをすする音、そして「お待ち〜」「ありがとうございました〜」というスタッフの挨拶だけが、たまに店内に響く。

「味玉、お待ち〜」と私の前にラーメンが置かれた。魚介と豚骨のWスープだろうか、少し濁りがある。ひと口すすってみると、やはりそのようだった。ただ、くどさは全くなく、どちらかといえばまろやかな味わいだ。

麺は小麦のもっちりとした食感があり、濃いめのスープとの相性もいい感じ。メンマも味がしみていて美味しい。一枚入っている焼き豚は、なかなか肉々としていて食べ応えがある。味玉は、思ったほどしょっぱさはなく、黄身がトロッとしていてこれまた美味し。

……………………………………………………..

……………………………………………………..

BGMもない店内で、誰もが黙々と食べていた。私も黙々と食べる。ふと、食べながら思った。「前に、どこかで食べたことのある味だなあ」 弘前か青森かは思い出せないが、地元のどこかの店で食べたことのある味だった。

十数年前に、和歌山ラーメンのブームがあった。弘前や青森にも、煮干豚骨の和歌山ラーメンを出す店があったが、その頃に食べたのかもしれない。この歳になれば、十年以上前のラーメンを思い出すのは至難である。思い出したところで、どうって話でもない。再び黙々と食べ、最後にスープを飲み干した。

二度も振られた「渋谷No.1のラーメン」と称されたラーメンはさすがに美味かった。ただ、なんとなく既食感を覚えたせいか、再訪は微妙かなと思った。ラーメンも1種類だし。

……………………………………………………..

……………………………………………………..

私は、水を一口飲み、カウンターの下に置いていたダッフルコートを手に持った。「ごちそうさま」と挨拶をして店の外に出ようとしたその時、ちょうど店に入ってきてカウンターについた二人組の客が店主に告げた。

「塩ひとつ!」「私も塩で!」 なぬ?塩?

店を出て、汗を拭きながらスマホでググってみると「『らーめん はやし』の裏メニュー『塩』が最高!」なる記事があるではないか。う〜勉強不足だったか〜。


スポンサーリンク
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です