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2019-06-28

弘前のラーメン / 『久渡寺のラーメン屋さん』


夜中の2時頃、ガリガリと音がする。

クローゼット棚の上に、ダンボールを置いていた。使わなくなったバッグや昔のアルバムなどが入っている。

夜中になると、そのダンボールの中からガリガリと音がする。怪談話のようだが、なんてことはない。ティティが箱の中に入り、ガリガリとかじっているのだ。

あの小さかった子猫が、今では身体を重そうにして床に寝そべっている。まるで自分を見ているようだ。

それでもやはり猫だ。クローゼットにあるいくつかの棚を渡り歩き、一番上のダンボールにたどり着く。そして器用に中に入り、ガリガリとやる。

毎夜、そんな調子だとこちらが不眠症になるので、休みの日にクローゼットを整理することにした。上からダンボールを降ろすと、中には噛み砕かれたダンボールの破片が無数にあった。

中に入っているものを取り出し、別のケースに移し換える。今度のは蓋が付いているので大丈夫だろう。

そんなダンボールが3つほどあったが、その入れ替え作業だけでは終わらなくなり、しまいにはクローゼット全体を掃除、整理するハメになった。

昔のアルバムなどが出てくると、作業の中断っぷりも半端ではなくなるので、今回はアルバムを開かぬよう黙々と手を動かした。

 

 

どっぷりと汗をかきながら作業をしていたが、気づくととっくに昼を過ぎている。

「もうこの作業はやめて、すこし走ってこよう」そう思い立って、近場までロードで走ることにした。ついでに昼飯でも食べようと思い、なにげにネットを検索していたら、誰かがこんな投稿をしていた。

「知り合いが久渡寺にラーメン屋をオープンしました」

(おお、これはちょうどいいかも。久しぶりに久渡寺まで走って、ラーメンでも食べようか)

営業時間を見たら、14時までとある。時計を見たら13時半近い。間に合うだろうか?久渡寺までの時間は計測したことがない。チャリの先輩方なら楽勝だろうが。

私は急いで物置からロードを出し、すぐに漕ぎ出した。なるべく信号のない道を選び、立ち止まる回数を減らした。

樹木から小沢へ続く道。ここ数年でホームセンターやドラッグストアがたくさんできている。地元の方には便利かもしれないが、こうしてどこの風景も同じようになっていくのだろうか。

すこし寂しい思いも感じながら走っていくと、やがて小沢梨の木地区の土蔵群が見えてきた。梨の木には、古くからの、それも立派で趣のある素晴らしい土蔵がたくさん並んでいる。

 

小沢梨の木地区の土蔵群

最初にロードバイクでここを走った時は、どこか別の世界にきたような思いがしたものだ。

土蔵が並ぶ頃になると、道も傾斜を作り始める。私はペースが遅くならぬよう必死に脚を回した。先方にチャリダーが見えた。いつもであれば追い抜かれてばっかりの自分であるが、この日は珍しく追い抜いた。食べ物を欲するパワーとは恐ろしいものだ。

時計を見ると13時50分を過ぎていた。ヤバい!間に合うか?

集落が終わる頃になると、道の傾斜はきつくなる。あきらかに坂と言ってもいい状態になる。

まっすぐな一本道の坂に入ると、遥か向こうのてっぺんに久渡寺が見えた。時計も見ずに必死に脚を回す。回す。

ラーメン屋らしいのぼりが立っているのが見えた。必死に脚を回す。

久渡寺のすぐ手前に広い駐車場があり、その一角にラーメン屋はあった。私は、入り口のすぐそばにロードを立てかけて、店の中に入った。

「すいません!まだ、大丈夫ですか?」と、中にいた女性に言った。

少し驚いたような顔をした女性は、ちらと時計の方に目をやって「大丈夫ですよ〜」と笑顔で返してくれた。

店の中にあった時計を見ると、ジャスト14時だった。

 

久渡寺のラーメン屋さん

私はチャーシューメンを頼んだ。600円と良心的な値段。味噌もあるらしいので、次回食べてみよう。

店内は小綺麗なかんじだったが、外にテーブルがあり、そこでも食べることができるようだ。私は急に汗が吹き出てきたので、外のテーブルに座り涼むことにした。

そして嬉しいことに、地元の果汁100%のりんごジュースが置かれていて、なんと無料で飲めるらしい!(1杯だけです)

 

以前も、ここはお店だったと思うが、最近になり新しいオーナーがラーメン屋を始めたらしい。店の客は私ひとりだったし、周りにも人は見当たらない。しかし、なぜか駐車場には多くの車が停まっていた。お寺で何かやっているのだろうか。

外のテーブルで涼んでいると「お待ちどうさま〜」とチャーシューメンが運ばれてきた。

 

チャーシューメン

シンプルな見た目。おそらく、こういうタイプのお店は、そんなに凝った味にはしていないだろう。スープを一口飲むと、やはり昔ながらの津軽中華のシンプルな味。いや、しかし美味い。

澄んだスープが身体に染み渡る。麺も適度に細いちぢれ麺。走った後はこういう麺がいいと思う。あまりにコシがあったり、もちもちしているのは消化に良くない気がする。

津軽中華定番の「ふ」ものっている。チャーシューは、これまた適度な厚みで食べ応えのある美味いチャーシューだ。

全てにおいて普通でありながら、素晴らしくバランスのとれた味わいのある美味しいラーメンであった。

 

久渡寺

帰り際、久渡寺の長い階段の下で手を合わせた。

が、いきなりデカいクマバチが目の前に現れたものだから、「ギャ!」とデカい声を境内に轟かせて、再び全速力でペダルを回した。

 

『久渡寺のラーメン屋さん』 店舗情報⇩⇩

 

 

『久渡寺のラーメン屋さん』

青森県弘前市坂元字山元7-2(地図)

営業時間 11:00〜14:00

定休日 火曜日

駐車場あり


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