最後の夏休み 八戸の洋食屋 / 『洋食の店 チャペル』
夏休みに入った娘だが、8月初旬の「Nコン青森県大会」に向けて、毎日のように部活がある。子供たちも大変だ。
旅行と呼べるようなものには、ほとんど連れて行ったことがない。日々頑張っている部活でコンクール県大会を突破し、宮城や福島で開催される東北大会へ一緒に行くのが、ここ2年の「旅行」になっていた。
それでも部活の遠征だけが旅行というのはちょっとかわいそうだ。7月中に1日だけ休みがあった。小学校最後の夏休み。車で岩手にある「子どもの森」に行くことを計画した。
私は、2ヶ月に一回くらいの割合で、八戸の店に行く。店の商品をチェック、店のスタッフとの発注の打ち合わせ。そして八戸の街の様子なども聞く。やはり現地の情報は現地のスタッフに聞かねばならない。
新幹線の往復でとんぼ返りがいつものことだったが、今回は娘の夏休みにくっつけて久しぶりに車で行くことにした。
昼まで部活をしていた娘を車に乗せ、13時頃に弘前を出発。少し時間に余裕もあったので、高速を使わずに酸ヶ湯経由で山越えを選択した。経費の節約にもなる。
以前、つづら折りの道で車に酔ったことのある娘は、黒石を過ぎたあたりで早々に後部座席で寝ることにしたようだ。
年に1〜2回、ロードバイクで走る長い坂道。黒石の温湯温泉郷から酸ヶ湯までは20kmほどの道のりだが、この延々と続く坂をロードで走るのはいつでも辛い。しかし車だとあっという間だった。
酸ヶ湯に着いた頃、娘は完全に寝入っていたのでそのまま素通りした。笠松峠を越えると周りは雲に覆われ、視界がなくなり始める。私は、ヘッドライトを点灯させ、猿倉から蔦へ向かうつづら折りを下った。壊れかけたカーステは無言のままだ。
焼山を過ぎ、奥入瀬の道の駅が近づくとテレビの電波が戻りはじめた。目の前の小さな画面では「吉本興業」の社長が記者会見をやっていた。
ここ最近は、ニュース以外テレビはほとんど見ない。お笑い芸人が司会をするバラエティはとくに見ない。
昔の漫才ブームの頃はもちろん見てたし、10数年前はダウンタウンの「笑ってはいけない」シリーズなんかも見ていた。しかし最近は、お笑い芸人に頼りきった番組が多すぎるように思える。どの番組も同じように思え、やがて見なくなってしまった。
今回の騒動は、世の中的にはかなり注目されているらしく、毎日のようにワイドショーでも取り上げられていた。しかし、個人的にはあまり興味がなかった。
闇営業?の問題は、芸人と会社との問題で、周りとは関係のない話。反社?とのつながりは、もちろん良くないことではある。良くないことをした芸人が反省し責任を取ればいいと思う。
そして5時間に及ぶ長たらしい社長の会見。間違ったことは言ってないのかもしれないが、要領を得ない話の内容だった。芸人がついた嘘が、いつの間にや「会社VS芸人」に発展し、それをネタにメディアが騒ぐ。その繰り返し…
時間とお金をもっと有意義なことに使って欲しいものだ。車を運転しながらそう思った。
八戸の店「FRINGE EAST」に着くまで、娘はぐっすりと眠っていた。おかげで車酔いすることもなかったようだ。
先週、東京出張で同行したスタッフと、再度発注についてのミーティングをする。展示会の時にもいろいろ話をするが、後日、少しクールな気持ちになって話をすることも大切だ。
みっちりと3時間ほど話をすることができた。その間、娘は裏の休憩室で宿題をやっていた。目の前にiPadを立てかけてやっている。しかも、わからない問題があると「Siri」に聞いているようだった。なんともはや…
昼食は車中でのコンビニのパンだったので、夜はちょいとマシなものを食べよう。というわけで、店のスタッフにカレーの美味しい店を尋ねた。しかし、本格的すぎると辛くて娘が食べれないかもしれない。
「ここ!いいかもしれないですよ!」
と、勧められたのが『洋食の店 チャペル』だった。
青森方面に向かう国道45号沿いに店はあった。勝手に洒落た外観をイメージしていたが、思っていた以上にレトロな外観。
店の横のスペースに車を停め、娘と一緒に中に入る。中の様子もけっこう年季が入っていて、いかにも昔からある「洋食屋」という雰囲気だ。
それはメニューを見てもそうだった。組み合わせ次第で何通りのメニューにもなる、昔の洋食屋さんによくある「あの感じ」だ。
バリエーションが多すぎて選ぶのに困ったが、店のイチオシが「トロトロのオムライス」らしく、娘はそれをチョイス。私は、海老フライが食べたかったので、「海老フライとハンバーグの定食」にした。
店内はそんなに広くはなく、カウンター数席とテーブルが大小5つほど。年配のお客さんが数人いた。おそらく昔からのファンがいるのだろう。
そんなに時間をおかずにオムライスが来た。
娘が「ウメ〜!」と小さな声で叫びながら食べていた。昼飯も食べずに、車の中でずっと寝ていたから腹も減っていたのだろう。
間をおかずに、私の「海老フライとハンバーグの定食」も来た。
海老の頭まで、がっつりとフライにされたデカい海老フライである。私は頭からガブリとかぶりついた。
海老フライとハンバーグ。そして付け合わせのナポリタンは、昔からある少し炒めた香ばしい味のするやつ。サラダ。スープではなくなぜか味噌汁。
かなりのボリュームではあったが、私も娘も、あっという間にたいらげてしまった。
最近は、雰囲気も味もオシャレなレストランが多い。ラーメン屋あたりも内装や味にこだわる時代だ。確かに、そうでなければ、すぐに潰れてしまう。
しかし、この『洋食の店 チャペル』のような、ずっと昔からある「街の洋食屋」は、長い間市民に愛され続ける。
内外装もほぼそのままで、メニューを大きく変えることない。もしかしたら、それが良いのかもしれない。それが皆にとってホッとする良さなのだろう。
帰りがけ、店を切り盛りしていたお母さんに話しかけると「もう35年もやってるのよ〜」と答えが返ってきた。私たちが弘前から来たことを伝えると、とても嬉しそうだった。
次に来たときは、何を食べようか。また迷いそうだなあ。
店舗情報 ⇩⇩
洋食の店 チャペル
青森県八戸市石堂 2–24–3 (地図)
電話:0178-28-7591
(月〜金) ランチ 11:00〜15:00
(月〜金・土・日) ディナー 17:00〜21:00
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