大鰐のラーメン / 『山崎食堂』の「おおわに温泉もやしラーメン」
みぞれが混じりそうな空だった。岩木山の麓は雪かもしれない。嶽方面への湯治は諦めることにした。
弘前の周りには人気の温泉郷がたくさんある。東に黒石温泉郷、西に嶽温泉郷、そして南には大鰐・碇ケ関温泉郷。
そういえば骨折の湯治では、大鰐にまだ行ってなかった。私は、風呂道具一式を車に積んで、大鰐方面に向かって車を走らせた。
しかし、昼過ぎだというのに、まだ朝飯も昼飯も食べていなかった。空腹のまま温泉に浸かるのは良くない。それに温泉上がりにラーメンなんか食った日には、再び汗だくなること必至だ。
というわけで温泉の前に、大鰐の街中で昼飯を食べることにした。
大鰐といえば、激坂ツーリングの際に、「さかえ食堂」でカツカレーを食らうのが定番となっていたが、全くカロリーを消費していないので、健康的に「温泉もやし」を食べることに。
やはり「温泉もやし」といえば、『山崎食堂』の「おおわに温泉もやしラーメン」である。
やはり、と書いたけど、実は『山崎食堂』を訪れるのは初めてだった。数年前に娘とツーリングに来たときは、同じ街中にある『日影食堂』に行ったのだった。
『山崎食堂』は、おそらく大鰐にある食堂の中でも最も知られた食堂である。というのも、JR大鰐駅と弘南鉄道大鰐駅のすぐ隣にあるからだ。町民で知らない人はいないだろう。
「車、どこに停めればいいですか?」と、ドアを開けて尋ねると「あ〜店の前でいいよ」と、先日の板留温泉で聞いたのと同じようなセリフが返ってきた。
店の入り口には「大鰐温泉もやし」を使っていることを示す看板が。「幻の伝承野菜」と書かれてある。
「大鰐温泉もやし」は、温泉熱と温泉水のみを用いる温泉の町ならではの独特の栽培方法により、なんと350年以上も前から栽培されてきた津軽伝統野菜の一つ(だ、そうです)。
一般的なもやしに比べると、長く細いのに、独特の香りとシャキシャキとした歯触りが特徴だ。
『山崎食堂』の店内は、いかにも「街の老舗」という感じで、写真やら色紙やら賞状まで飾られてある。天井はちょっとレトロでお洒落な趣。
窓際の席に座ると、大鰐駅の駐輪場が目の前に見える。駅の駐輪場の風景って、なんか懐かしく、せつなくなるのは何故だろうか。
一般に「もやしラーメン」といえば、味噌ラーメンが多い。もやしそのものに水分を多く含んでいるので、濃い味噌味の方が相性がいいのだろう。
しかし、ここの「おおわに温泉もやしラーメン」は、しょうゆ味である。細いシャキシャキとした「温泉もやし」には、同じく細い麺のあっさり津軽中華が合うのかもしれない。
「並」を注文したが、750円だった。普通のしょうゆラーメンにもやしが入っただけで750円とは少々高いのでは?と思った。弘前でもかなり人気の高いラーメンでも600円くらいで食べれるところはたくさんある。
「もやしラーメン、お待ちどうさま〜」
目の前に現れた「おおわに温泉もやしラーメン」は、見た目的に特別「おお!」と思うものではなく、ほぼ予想通りのビジュアルだった。
「並」というのも、麺の量なのか、もやしの量なのか、それとも両方なのか。それもよくわからない。とりあえず、すごい量のもやしで覆われているわけではない。
さっそくスープを。これもほぼ予想通りの味。麺をすする。ちょうどよく縮れた細麺がスープと良く合う。
「温泉もやし」を一口。細麺と同じくらいの細さで、一見どっちが麺でどっちがもやしなのかわからない。
「シャキシャキ」という心地よい食感。「温泉もやし」のほのかな甘みと香りがする。ん〜、これはやっぱり美味いなあ。
食べ進めながら「温泉もやし」をほぐしていくと、けっこう下の方まで「温泉もやし」がたっぷりと。(お〜、なんだ普通のビジュアルと思いきや、嬉しいじゃないか!)
時間が経つと、「温泉もやし」の甘みがスープに溶け出して、なんとも言えぬ美味しいスープに変化していくのがわかる。
次第に私の顔はニマニマしていたようだ。
「温泉もやし」のシャキシャキと、ほんのり甘みのある美味しいスープを味わっているうちに、(750円が高い)という思いは、すでにどっかに消えていた。
窓の外に見える郷愁漂う駐輪場の風景を見ながら、私はしばらくの間、満足の余韻に浸っていた。
さて、この後は温泉に浸るとしよう。
山崎食堂
南津軽郡大鰐町大鰐前田34-21 (大鰐駅すぐ隣)
10:30~19:00 (ただし、第2・第4土曜は、11:00~14:00)
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