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2021-12-16

弘前のラーメン / 「ぶんぷく茶がま」


 

「狼森食堂」に振られた私は、弘前の街中へと通じる道を走っていた。

車では走ったことがあるのかもしれぬが、ロードでは初めて走る道。

狼森、千年、城南あたり。なんとなく位置関係は把握できるが、道は少々わかりにくい。それでも西弘方面に向かって走っているのは感覚でわかる。

 

枯れた蔦が良い感じの小屋の前で

  

30kmほど走ってきた身体は、味噌ラーメンモードになったまま変わっていなかった。

(どこか西弘あたりで食べようか…)と思ったが、この辺りにあるラーメン屋はあまり知らない。

第三中学校の向かいにあった「飯村」には随分と通ったが、その「飯村」も今はない。

そのまま、弘前大学方面に向かって走った。

 

そういえば大学生の頃、大学の前を通る富田通りとその界隈には多くの飯屋があった。

学生に大人気「富田飯店」は最もお世話になった店のひとつ。好きだったのは、中華風カツ丼。金欠のときには麻婆定食だった。

大学の先輩、T野さんがバイトしていた「オリーブ&ポパイ」は、やはりポパイライスとオリーブライス。もちろんブルートライスも。雀ピューターには、数え切れないほどの百円玉を費やした。

細い路地に灯りを見つけるとホッとした「満来(バンライ)」も、オリジナルの「満来飯」と「味噌飯」が人気だった。

そして、徹マン覚悟のときは、「味平ラーメン」で腹ごしらえ。

コンビニのなかった時代だから、夜中遅くまでやっている飯屋は、どれもありがたい存在だった。

 

「満来」は後に城東方面に移転して店を続けている。確か娘さんが後を継いでいるとか。

しかし、他の店は今はすべてなくなってしまった。あれから30年以上経っているのだから、後継者がいないのであれば仕方のないことかもしれない。

 

桝形の交差点を過ぎ、大学の方へ向かう。

ある一軒の店が目に入った。

(あ、そういえば、この店はまだやってたんだっけ…)

 

ぶんぷく茶がま

 

店の前にはマスク?をした狸が立っている。マスクをしたのは最近かもしれないが、随分と長いこと立っているのだろう。

同じ富田通りでも、自分のアパートからは少し距離のある店だったから、そんなに通わなかったように思う。多分、数回だっただろう。

店の中がどんな様子だったかは、記憶に残っていなかった。

 

「いらっしゃいませ〜!ありがとうございます〜!」と元気なおばちゃん。

メニューを見ると、ラーメンメニューがずらりと並んでいる。私は何も考えずに味噌ラーメンを注文した。

「はい、味噌ラーメン!ありがとうございます〜! 太麺と細麺、どちらにしますか?」

「ん〜、じゃあ太麺でお願いします」

「はい、太麺ですね!ありがとうございます〜!」

どうやら、こちらのおばちゃんの「ありがとうございます〜!」は口癖になっているらしい。

 

学生時代にタイムトリップ

 

店の様子は、レトロな雰囲気。いや、年月が経っているのでレトロな雰囲気になったのだ。

改めてメニューを眺めてみる。それにしてもラーメンの種類がすごい。それに、今時味噌ラーメンが500円というのは安い。やはり学生を相手にしているからか。

しかし「野菜味噌ラーメン」というメニューがあるのが気になった。普通味噌ラーメンといえば、野菜がたっぷり入っているイメージである。さらにたっぷりと入ってるのだろうか。

 

「味噌ラーメン、お待ちどうさま。ありがとうございます〜!」(ここで言ったかは不明…)
 

味噌ラーメン

 

(こ、こ、これは…)

というほど驚いたわけではないが、なんともシンプルなビジュアルの味噌ラーメンが目の前に。

どう見ても、野菜が入ってないのは明らかだった。いや、ネギはのっかっていた。

 

まずはスープを一口。お、生姜が効いている。ほんのり甘みのある味噌の味が美味い。

チュルチュルと歯ごたえのある太麺も悪くない。チャーシューとメンマもそれなりに。

 

寒い中を走った身体には、十分染み渡る味噌ラーメンだった。

でもこれは、味噌ラーメンというよりも、美味い味噌のスープに麺が入っているというかんじだ。やはり味噌ラーメンは野菜入りで食べたほうがいいな。

でもワンコインだから。学生にはありがたいかも。

いや、今時の学生は、もっとリッチなの食ってるか。

 

金銭感覚が30数年前と変わらぬのは、30数年前に学生だった人間だけかもしれない。

 

 

ぶんぷく茶がま

弘前市富田町193 定休日〜月曜日

 

 


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