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2023-02-23

「崩れ落ちた 特大ハンバーグ」


 

「生姜焼きとハンバーグ、どっちがいい?」と訊くと「ハンバーグ」という答えが娘から返ってきた。

「じゃあ、一緒にスーパーへ買い物に行こう」と言うと「塾あるから」と言う答えが返ってきた。

 

来月初めには公立高校の入試がある。家ではピコピコばかりの娘だが、幸い塾には行っていた。

どうなるかは神のみぞ知るだが、どうなったとしても彼女には未来がある。それだけは間違いない。

 

焼けばいいだけ、温めればいいだけの美味しそうなハンバーグが、売り場にたくさん並んでいる。

でもそんなに大きいわけではないし、そんなに値段が安いわけでもない。

(よし、それなら自分で作ってみようか。どうせなら、デカいやつを)

そう思い、スマホでいろんなレシピを検索しながら、材料を選びカゴに入れていった。

 

主夫業をするようになってから、いろんな料理もするようになった。

手作りハンバーグは捏 (こ) ねるのが何となく面倒でやったことがなかったが、やったことのないことに取り組むというのはワクワクするものだ。

基本的に絵でも家具でも、なんでも自分で描いたり作ったりすることが好きだったので、そういう意味では料理をするのも苦ではない。

ただし、レシピ通りに作らず、ついつい自分流にアレンジして失敗してしまうのが欠点だった。

 

ハンバーグを作るときは、牛と豚の合挽肉を使うのが良いけれど、今日はデカいのを作ろうと思ったので、値段の手ごろな豚挽肉をたっぷりと買った。

そして、ボリュームを出すために豆腐も入れる。栄養バランス的にも良い。

「パン粉がなければなくても良い」とか「卵は使わずに牛乳を使っても良い」とか、レシピにもいろいろあったが、手元に全部あったので全部使うことにした。

 

まずは、デカい玉ねぎを丸ごと1個みじん切りにする。みじん切りとはいっても、そんなに細かくなく、ほぼザク切り。

これをアメ色になるまでフライパンで炒める。

玉ねぎを炒めている間に、挽肉とパン粉を大きめのボールで捏ねてタネを作る。

細かく刻んだ豆腐を少しレンジで温めてからタネに加えて一緒に捏ねる。

卵2個と牛乳を加えてさらに捏ねる。

おろしニンニクを加え、塩胡椒も軽くふりながらさらに捏ねる。

アメ色に炒まった玉ねぎをドバッと加えて、さらに捏ねる。

どうやら牛乳が多すぎたようだので、パン粉を追加してさらに捏ねる。

豆腐を潰すようにして、ひたすら捏ねる。捏ね続ける。

 

直径10cmくらいのカタチに作る。ちょっと柔らかすぎたようだ。うまく成形できない。

それでもなんとか3個作って、油を引いたフライパンに並べた。

中火で両面を数分ずつ焼く。軽く焦げ目がついたら、弱火にしてしばらく焼き上げる。

 

 

その間にソースと人参のソテーを作る。

ソースはとんかつ用のソースとケチャップ、少しの醤油と白だし、ニンニクと塩胡椒を加える。と、それなりの味になる。

人参は焦げ目がつくくらい炒めたら、そのあとは水を少し加えて、塩胡椒と砂糖をまぶしてグツグツ。かなり自分流。

 

ハンバーグが焼きあがった。

温めておいた黒い皿にハンバーグと人参のソテーをのせる。あ、そうだ。焼き上がる直前に溶けるチーズものせておいた。

タネが柔らかかったので少々いびつなカタチはしているが、何となく美味そうだ。(テンパっていたので写真なし)

 

娘と嫁さん次男坊に食してもらうと「うん、美味しい!」という答え。まずは良かった。ビールをグビッと。

自分も食べてみる。うん、まあまあか。思ったよりも豆腐の食感があった。もっと潰してもいいのかもしれない。

ただオイリーではないが故、食べやすいのか、二人ともあっという間にたいらげそうだった。

ボールの中にはまだたっぷりとハンバーグのタネが残っていたので、追加で焼くことにした。

でも、1個ずつ作るのも時間がかかるし面倒なので、一気に焼き上げることにした。

30cmの超特大ハンバーグである。

 

 

フライパン目一杯に広がる特大ハンバーグを見て娘も笑っている。

ジュージューと焼きながら、ふと思った。

(これ、どうやって裏返そうか?)

フライ返しでは裏返すのは不可能な大きさだった。熟考した。

(そうだ!)

妙案を思いついた。フライパンのフタを使えばいいんだ。フライパンにフタをしたままひっくり返す。そうするとフタにハンバーグがのっかることになる。

でもそれをそのままフライパンに戻したら同じことだよな…

(そうだ!)

フタにのっけたハンバーグをデカい皿にのっけて、それをさらにフライパンへ戻せばOKだ。両面焼ける。

自己流の料理は、その場その場でアイデアが思いつくものだ。さすが俺だ。

 

フライパンにフタを被せて、「トリャ〜」とひっくり返す。

「ギャー!やべー!」

ハンバーグが半分くらいフタに落ちてきて、半分がフライパンにくっついたままだ。

焦って元の状態に戻す。が、30cmのハンバーグはすでにカタチを成していない。

「ギャハハ!」娘が笑っていた。

 

すでに円形を失ったハンバーグは、挽肉炒めという別の料理に変わっていた。

自己流の料理は、その場その場で変化するものなのだ。さすが俺だ(悲)。

 

それでも溶けるチーズをのせ、ソースをかけてあげると、見た目は違うがほぼ同じ味のするハンバーグのようなものが出来あがった。

娘も嫁さん次男坊も「美味しい美味しい」と言って食べていた。

自分も食べてみた。うん、まあまあか。

 

 

でも思った。

料理はやはり見た目が大切だ。

 

 

 


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