福島遠征記② / 福島のラーメン「らぁめん たけや」
【声楽アンサンブルコンテスト全国大会】にて銀賞をいただいた翌日。
私はひとりで福島市の駅前を歩いていた。
金賞を獲得して本日の本選へ…という思いは絶たれた。
朝早くから会場に並びチケットをゲットし、本選の演奏を聴くというスケジュールも考えたが、目覚めるとすでにチェックアウトの時間に近づいていた。
高校に合格した娘のための準備もたくさん残っている。予定より早めに弘前へ帰ることにしよう…そう決めて、私は福島駅へ行き、予約していた新幹線のチケットの変更手続きを済ませた。
ついでに駅ビルでお土産を買おうかとも思ったが、新幹線までは2時間ほどあったし、荷物を抱えて歩きたくないので、そのまま街中へ出た。
昨日の雪景色が嘘のように、街中には残雪ひとつなく、空は青々としていた。
駅から真っ直ぐ伸びるメインストリートは日曜で歩行者天国になっているらしく、ファミリー連れやカップルが歩いている。
メインストリートとはいえシャッターが下りたままの店もあり、やや寂しい印象だ。
(時間があれば駅前あたりでラーメンでも食べよう)と、福島に来る前に少し調べておいた。
このメインストリートを少し入ったところに、『丸信ラーメン』というのがあり、二層のスープが激ウマと何かのサイトで読んだので、そこと決めていた。
目印のコンビニをを曲がると、視線の先に大きく目立つ黄色の看板が見えた。意外にも簡単に辿り着けた。
すでに開店している時間だったが、店の周りはやや静かに思えた。
入り口の前まで行くと、小さな看板が掛かっていた。
「本日、臨時休業」
まあ、こういうことはこれまでに何度もあったので、落ち込むことはない。
別の店を探せば済む話だ。ただ、臨時休業は想定していなかったので、2軒目の候補は決めていなかった。
昨日とは違い、歩いていると少し汗ばむくらいの陽気の中、私は日陰に入りスマホに頼ることにした。
条件は二つ。
時間がないので、駅前周辺で歩ける範囲。
もうひとつは、昨夜日本酒を飲みすぎたので、味は醤油系のあっさり目。
一軒の店が条件に合格した。
少し先の国道33号線をぐるりと回り、再び駅の方に戻ってくる大きな通り沿いを歩く。
大きな通りではあるが商店はほとんどなく、人通りもない。その通り沿いに、営業中を知らせる幟がはためいていた。
思っていた以上に、経年を思わせる外観。
それにしても、『まるしん』とか『たけや』というラーメン屋は、どこの街にもある気がする。
中に入るとすでに多くの客が席を埋めていた。老舗らしい古い造りの店内で手間にカウンターとテーブル席、奥に小上がり。
中ほどの小さなテーブルが空いていたので、そこに座る。
少し汗ばんでいたので、コートを脱いで汗をぬぐった。
「醤油ラーメン」に味玉のトッピングを注文。
注文をとって回るお兄さんは、笑顔でハキハキ。とても対応の良いお兄さんだ。
まだ昼前だというのに、次々とお客さんが入ってくる。人気のお店なのだろう。
ほどよくしてラーメンがきた。
シンプルながらも美しく、食欲をそそる見た目。
スープを一口飲んでみる。美味い。これは美味い!
予想していた味には近かったけれど、予想以上に鶏ガラを感じる。あっさりではあるが結構コクがある。津軽の煮干し中華とは異なる味わいだ。
のちにネットで見てみたら、醤油ラーメンは伊達鶏をじっくりと炊き込んだの鶏ガラなのだとか。
添えられたメンマや葱も美しく、そして何と言っても目を見張るのが、丼の半分以上を覆う一枚のデカいチャーシューだ。
デカいチャーシューというのは、一般的には少し大味だったり、かなり薄かったりするのだけど、ここのは違う。
厚みもそれなりにあり、しっかりと味が付いている。しかも、ほろほろと崩れるような柔らかさ。チャーシュー麺にしなくとも、十分に堪能できる大きさと味の良さ。
昨夜の酒で少し疲弊気味だった身体に、ちょうどよく染み渡り、ちょうどよくエネルギーを与えてくれる…まさに、うってつけの美味いラーメンであった。
来年の3月。
再び、青森県の代表として、この街を訪れることはできるのだろうか。
ラーメンを楽しみにしながら、日頃、歌の練習に勤しむ人間が一人くらいいてもいいだろう。
あ〜 書いていたらすでに食いたいぜ。
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