津軽の秘湯『古遠部温泉』
いや〜腹がキツい。この歳になると、ラーメンにとんかつはヘビーかもしれない。
鉱山の町、そしてデカいホテルのような洋館のある町「小坂」にて、名物の「かつラーメン」を食し、初めて訪れたこの町を出発した。
「小坂」から「碇ケ関」に向かう「国道282号」 かつて東北自動車道が全面的に開通するまでは、盛岡に向かう主要道であった。
私が大学2年のとき、「全日本合唱コンクール全国大会」が盛岡で開催された。初めての全国大会に出場するために、先輩の車に同乗して盛岡までこの道を走った記憶がある。
主要道とはいえ「坂梨峠」を越えなければならぬこの道は、九十九折の急勾配が続く。果たしてこの膨れた腹で上ることができるだろうか。
「小坂」から「坂梨峠」までの道のりも、少々退屈な風景が続く。左側には高速走っているらしく、車の走行音が絶え間なく聞こえてくる。
大した距離は走ってないが、脚に疲れを覚えていた。50kmの間に小さな峠を二つほど越えていたが、最後に大きな峠が残っている。私は無理せずに休み休み走ることにした。
やがて、並行する高速から道が離れ始めると、道が勾配を作り出した。周りは緑に囲まれ始める。十和田湖の敢湖台に向かう道に似ている気がした。時折、廃墟となったかつての鉱山工場が姿を現す。
この道でも、やはり「〜まで何km」の標識はなく、あとどのくらい走ればいいのかがわからない。休憩のときにグーグルマップで位置を確認する。携帯というものはホントに便利なモノだ。
それにしても、こんな厳しい坂に「坂梨(さかなし)峠」という名前をつけたのは誰だろう。8〜10%の勾配をひたすら上り続けた。
やがて向こうに標識が見えた。
「また来てね秋田県」の看板とともに、「青森県」の標識。峠の頂。
あとは緑の山々の中を下るだけだ。上って来た道よりも九十九折りが多い。私は、最後の最後に怪我などしないよう慎重に走り下った。
視界の向こうに大きな緑色の架橋が見えた。これが例の温泉に入っていく目印だった。
少し先に置いていた車まで行き、急いでロードを収納する。来た道を引き返し、温泉に向かう小さな道に入った。
車一台がようやく通れそうな道をひたすら進むと、山の中にポツンと1軒の建物が見てきた。
県境にある秘湯中の秘湯『古遠部温泉』
娘と来たのが5年ほど前だったろうか。久しぶりの訪問だ。
駐車場には数台の車があった。県境の山奥にあるにもかかわらず、お湯の良さから足を運ぶ人は絶えず、風呂はいつも混雑。温泉マニアの中では、日本全国の中でも秘湯のベスト5に数える人もいるらしい。
中に入り、受付で料金を払う。320円。秘湯ではあるが、料金は普通。受付に張り紙がしてあった。「館内は撮影禁止」 え!前来たときは禁止じゃなかったはずだが…..残念。
廊下の先の階段を降りると、男湯があった。サイクルジャージを脱いで身体を解放する。浴室に入ると、年配の方が二人「トド寝」を満喫していた。
「トド寝」とは、浴室の床に寝転がって掛け流されてくるお湯を浴びてトドのようにごろごろと過ごすこと。その「トド寝」という言葉が生またのが、この『古遠部温泉』だとか(スゴイ)
湯船は決して広くはなく、4、5人も入ればいっぱいのサイズなのだが、常連の入浴客は一度入るとなかなか上がらない。もちろん湯船にずっと入っているわけではなく、出たり入ったりしながら浴室の床に寝転がって過ごす人が多い。
その姿を群れなすトドに例え、「トド寝」という言葉がここから生まれたのだ。
この日は幸運にも混んでいなかったので、私はゆっくりと湯船に浸かった。溢れ出てくるお湯にほんのりと金属臭を感じた。
多くの人を引き付ける秘訣はやはり毎分500Lも湧き注ぐこのお湯だろう。そのお湯が贅沢にもドバドバと溢れ出るのだから「トド寝」をするのもわかるというもの。
常に溢れ続けているので、浴槽や床がもともと木だったのか石だったのか、わからぬほどに変色・変質している。
私は、湯船から上がり、常連客に混じって「トド寝」をしてみた。トドになった気分だ。
いや…トドになったように見える身体は、なんとかしなきゃ…
温泉の情報はこちら
『古遠部温泉』
青森県平川市碇ヶ関西碇ヶ関山1−467 [ 地図はコチラ]
営業時間:8:30~20:00 (但し冬期間は9:00~19:00)
泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
料金:320円
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