ツール・ド・ツガル / 「つがる地球村温泉」
しばらくの間、モノトーンの空と海を眺めていたが、身体が冷え始めていることに気づき、私は再びロードバイクを走らせた。
鰺ヶ沢の海から吹き付ける風に煽られながら、ペダルを回す。鰺ヶ沢の海が見えなくなった頃、国道の向こうに人だかりが見えた。わさおのところだ。
例のウィルスの影響で、どこも人出がないかと思いきや、ここは相変わらずの人気のようだ。私は人だかりの脇を走り抜けた。
「道の駅もりた アーストップ」までは10kmほど。道はほぼ平坦。若干の追い風もあったのだろうか、脚は軽快に回ってくれた。
道の駅を過ぎ、右折して山側に向かうと、急勾配の坂がある。しかし距離は短い。最後の2kmを必死に回すと、朝見た光景が再び目の前に現れた。
「つがる地球村」は、野外円形劇場を備えることでも知られる複合レジャー施設。かつては、けっこう有名なアーティストもここでライブをやったらしい。
コテージや「藤山邸」という宿泊施設も備えているが、多くの人に人気なのが「つがる地球村温泉」である。
私も年に2~3回ほど、娘を連れて一緒に来たものだった。娘はここの露天風呂が好きだった。
さすがに高学年になってからは、一緒に男湯に入るのが恥ずかしくなったらしい。なので、私自身も久しぶりの訪問となった。

入口を入るとすぐに受付があり、そこで料金を払う。
500円は少し高めだが、ここはシャンプーやボディソープを備えている。タオルひとつあればOKで、故にふらっと立ち寄れるのも良い。
意外にも混んでいた。いや、いつも通りの光景なのかもしれないが、このご時世、温泉や銭湯にあまりお客さんは来ていないのかなと思ったが、そうではなかった。
ここの温泉は薄茶色に濁っている。そしてトロッと少しぬめりがある。
メインの大きな湯船は少し熱めなので、露天の方でゆっくりと浸かることにした。
露天は全てを木で覆われていて、4人ほどが浸かれる大きさだ。湯は少しぬるめ。3月の外気はまだまだひんやりしていて、それがまた気持ち良い。

それにしても今の日本、いや世界が、なんとも形容できない世の中になっている。
「感染拡大を防ぐために、外出を自粛しよう」 「しかしこのままでは経済が破綻するので、どうにかしよう」
「じゃあ『お肉券』を発行しよう」 「アホか!『現金』の支給しかないだろ!」
世の誰もが経験したことのない「自然災害」を目の前にして、誰もが不安になり、うろたえる。自分の心の中にも、モヤモヤと何か得体の知れないものが常にいる。
だが、これはまぎれもない現実であって、その現実をしっかりと受け入れながらも、冷静に自分たちができることをするしかない。
ほんの少しの間だったが、私は現実を忘れようと、薄茶色に濁る温泉に顔の半分をうずめた。
温泉情報 ↓↓↓
つがる地球村温泉
住所:つがる市森田町床舞藤山244 (MAP)
立寄時間:6:00~22:00 定休日:無休
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