鰺ヶ沢のラーメン / 「番場食堂」の中華そば
鰺ヶ沢に住んでいた幼い頃、昼になるとよく出前を頼んだものだ。
大人たちの多く中華そばを頼むが、私はいつもカレーライス。近所の正八幡宮という神社のそばにあった「晩翠軒」のカレーが絶品で大好きだったのだ。このブログを書き始めた頃、そのことを少しだけ書いている。(→ 「弘前のラーメン ①」)
しかし、中華そばであれば、「番場食堂」の方が人気があったように思う。「番場食堂」は当時、鰺ヶ沢の駅の近くにあった。小さなお店で、いかにも田舎の食堂という趣があった。
弘前に住むようになると、「晩翠軒」でも「番場食堂」でもカレーやラーメンを食べる機会はなくなった。たまに鰺ヶ沢に帰り、神社のそばを通ると「晩翠軒」は無くなっていた。
先日、鰺ヶ沢をツーリングしたとき、かつて通っていた小学校の方へ行ってみた。昔住んでいた自宅からは、ゆっくり歩いて15分くらいだっただろうか。
鰺ケ沢駅を通り過ぎ、やがて踏切を渡る。すると目の前に大きな整骨院の建物が見える。「アッキ」のウチだ。
「アッキ」は、オモシロい遊びを考える天才で、秘密基地を作ったり、プラモデルを作ったりした悪友の一人だ。
彼のお父さんは、整骨院の医者だった。私はドッジボールやバスケットボールが好きだったが、よく、つき指をして「アッキ」のお父さんの世話になった。
「アッキ」のお父さんは、つき指した指に粉をまぶして丁寧にマッサージしてくれた。そして治療中に、いきなり椅子から腰を浮かして「ブフォ!」と屁をかました。
現在「アッキ」は福島の方に住んでいて、相変わらずオモシロいことをクリエーションしている。彼のヤンチャぶりを見ると、やはり親譲りなのだなあと思う。
「アッキ」の実家の真向かいに、現在の「番場食堂」がある。
見た感じでは、住居と一緒になっているのだろうか。数年前に一度おジャマしたことがあったが、ツーリングで訪ねたのは今回が初めてだった。
田舎の食堂だけあって、メニューの種類は多い。定食や丼物も定評あるらしいが、走ったときはやはりラーメンを食べたくなる。塩分と水分を欲しているのだ。
それにしても、弘前に比べると値段が安い。中華そばが500円である。チャーシュー麺でも650円だ。私は、迷わずチャーシュー麺を注文した。
お昼時を少し過ぎていたせいか、客は私以外に一人だけだった。私は外に出て、少しだけ歩いてみた。小学校に向かうなだらかな坂は、昔の風景とはあまり変わらないように感じた。
店内に戻ると、ちょうどチャーシュー麺がテーブルに置かれた。私はそのチャーシュー麺を見て、少しだけ驚いた。
見た目がとても美しかったからだ。
(よくある田舎の普通の中華そばだろう)
勝手にそう思っていたが、透き通ったスープに横たわる数枚のチャーシューが美しく並んでいる。
最近人気のラーメン屋のチャーシュー麺は、麺が全く見えないほどにチャーシューで覆われてる。それに比べれば、4枚ほどとチャーシュー麺というには少々寂しい。
しかし、このバランスが自分的にはちょうど良い。1、2枚だと少々物足りないが、どんぶりを覆う量はラーメンを食べている気がしない。
それに何よりも、見た目がいい。
昔ながらの懐かしの中華そばの味。しかし醤油の味が目立ちすぎずに、しっかりと煮干しの出汁が効いている。
鰺ヶ沢に生まれ育った人には、まさしくこれが故郷の中華そばの味である。
ツーリングで乾いた身体に、最後の一滴までスープが染み渡っていく。
ひとりぼっちのラーメンツーリングで、少しだけ免疫力も上がっただろうか。
店舗情報
番場食堂
青森県西津軽郡鰺ヶ沢町舞戸町字下富田107-20 (地図)
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