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2020-11-21

骨折湯治紀行 その四 / 黒石温泉郷 板留温泉『 旅の宿 斉川 』


 

つい先日、白いものが舞っていたと思ったら、この日(11月19日)は季節外れの暑さ。車の温度計は23度を表示していた。

ひとりでやるリハビリも、順調なのかどうかよくわからない。紅葉の終わりかけた黒石の中野もみじ山方面に向かって、私は車を走らせた。

 

黒石の温湯温泉のさらに十和田湖よりに位置するのが「板留温泉」である。

十和田湖へロングライドへ行くときに、国道沿いにその看板を何度も見たことがあった。が、実際に訪れたことはなかった。

紅葉で有名な中野もみじ山が見える交差点を右折し、やがて見えてくる浅瀬石川沿いに走ると、「板留温泉」の温泉旅館が数軒並んでいる。

 

『旅の宿』といえば、吉田拓郎である。

『神田川』と並ぶ四畳半フォークの代表曲だが、中学生の頃は、激しく歌う拓郎よりも、しっとりと歌うこうせつの方が好きだった。

つい、そんな40数年前のフォークを思い出させる『旅の宿 斉川』は、立ち並ぶ温泉旅館の真ん中あたりにあった。

 

趣のある『旅の宿 斉川』

 

しかし駐車場が見当たらない。私は、道に車を停め、建物の中に入った。

誰もいなかったので、「すいませ〜ん」と声を出すと「は〜い」とご主人らしき人が出てきた。駐車場の場所を尋ねるとご主人は言った。

「道路さ停めててもいいよ」

おそらく宿泊客用の駐車場はあるのだろうが、立ち寄り入浴の客は、目の前に路駐でもいいらしい。少し気が引けたので、道から引っ込んだ小さな空き地に車を停めた。

 

和風ながらも少しモダンなロビー

 

受付で500円を払う。少し高めの料金だが、日帰り入浴を主としているわけではないので、こんなものだろうか。

和風の趣だけれど、椅子やコンクリート風の壁はなかなかお洒落だ。

浴場は階段を上っていき3階にある。途中の2階に女湯があった。山の中にある秘湯では、こうした小さな階段で男湯と女湯が分かれているが、わりと好きな造りだ。

 

男湯の暖簾をくぐり中に入ると、誰もいなかった。

浴場はなにか不思議な雰囲気がする。左側と正面は全面ガラス戸で、明るい陽が差し込む。そのガラス越しには、眼下に浅瀬石川が見える。

なぜか観葉植物が置かれていて、鄙びた温泉街であるのに微妙なリゾート感。

 

大きめの浴槽がひとつ

 

さっそくお湯に浸かってみる。ピリリとした熱さを感じた。

無色透明ではあるけれど、わずかにトロみがあって気持ちのいい湯だ。浴槽のまわりは木枠で囲まれており、それもまた心地良し。

ふと正面の窓を見ると、ガラスの向こうに何やら大きな樽のようなものが見える。どうやら浴槽越しに露天風呂があるようだ。

ドアを開けると、そこには陶器?のデカい…青と赤の壺が二つ並んでいる。

 

 

どちらの壺も、成分がビッシリと付着した湯口から、チョロチョロと温泉が流れている。手を入れてみるとけっこう熱い。しかし、中に入ると底の方が少し冷めていて、攪拌するとちょうど良い温度になった。

ざぶ〜んと溢れ出る湯に浸かるのは、なんとも贅沢だ。上を見上げると、雲の間から少しだけ日が差していた。

左手には浅瀬石川。右手にはまだ紅葉の残っている山々。私は、骨折した左腕をマッサージしながらしばらくの間、この樽の中に身体を埋めていた。

骨折した左腕。骨そのものの痛みはほとんどないが、手首周りの筋や腱の痛みがまだある。可動域は広がってきたものの、動かしただけ翌日に痛みが出る。

 

私は三度、外の壺湯に浸かった。

久しぶりに身体が火照っているのを感じた。脱衣所でしばらくの間、休憩していたが、ずっと汗が止まらなかった。

 

なかなか観光もできにくい昨今の世ではあるが、こうしてすぐ近くに素晴らしい温泉と美しい風景を味わうことができる…

そんな津軽に暮らしている自分は幸せであると思った。

それにしても、汗が止まらない。早く外に出て涼しい風に当たろう。

 

外に出て、車のドアを開けると、運転席の温度計は24度を指していた。ウグ

 

板留温泉『 旅の宿 斉川 』

青森県黒石市板留字宮下8-1  TEL 0172-54-8308

 

 


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