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2020-12-03

骨折湯治紀行 その五 / 大鰐温泉郷 『 正観湯温泉 』


 

大鰐駅のすぐ隣にある『山崎食堂』で「おおわに温泉もやしラーメン」をいただいた後は、少しだけ駅の周りを散策。

JR「大鰐温泉駅」と弘南鉄道「大鰐駅」は、隣り合っている。しかし、JRの方に比べると弘南鉄道の方はかなり寂れた雰囲気が漂っていた。

 

『山崎食堂』のすぐ裏手にある駅

 

でも、何故かこっちの雰囲気の方が好きなんだよな。

駅前の広場にある足湯に浸かろうかと思ったが、この後すぐ温泉に行くことを思い出した。

 

温泉郷と言われるだけあって、大鰐の街中には多くの温泉宿がある。

とくに平川の清流沿いには、雑然とした中にも情緒を感じさせる佇まいの温泉宿が立ち並ぶ。昔はもっと賑わいがあったのだろう。

 

ただ、大鰐温泉郷といっても、大鰐の街中にある温泉だけではないのだ。私は車を南の方に走らせた。

長峰という地区に入ると、やがて標識が現れる。左折すると「黒石・十和田湖」へと向かうらしい。チャリ仲間で言う「軍馬平」へと向かうヒルクライムロードである。

ロードバイクを始めるまでは、こんな路があることなど全く知らなかった。秋田方面に向かう道から、黒石や十和田湖へ通ずる路があるというのも何か不思議な感じがした。

実際、初めてロードでこの路を走り、虹の湖へ辿り着いたときは、それこそ不思議な達成感を味わったものだ。

 

左折して、ググ〜っと坂を上ると、左手に看板が見えてくる。本日の目的地『正観湯温泉』だ。

 

正観湯 「しょうかんとう」と読む

 

ロードバイクでこの路を走るたびに、(こんなところに温泉があるんだ)とは思っていた。が、八甲田や嶽とは違い、観光がてらに温泉でも…という感じの場所でもなく、正直訪れる機会はなかった。

宿泊施設も備えてあるので、建物そのものはけっこう大きい。

何かのサイトで見たが、ここの温泉はバイカーに人気があるらしい。経営している方もオートバイを乗っているらしく、夏場は入り口の脇にオートバイがずらりと並ぶのだそうだ。

待合室らしきスペースには、たくさんのマンガ本があって、持ち出し(持ち込みも)自由なのだとか。まるで合宿所のような雰囲気だ。

 

しかし、私が訪れたこの日は雪が降りそうな寒さで、もちろんバイカーは誰一人いなかった。

受付で入浴料を払う。なんと250円。いまどきこの値段は安い。

男湯の暖簾をくぐり中に入ると、年配の方が二人、ちょうど温泉から上がったばかりのようだった。中を覗いてみると誰もいない。今回もまた貸し切りだ。

 

浴槽はシンプルにひとつ

 

真ん中にドーンとぶっとい木の柱が立っている。

浴槽はひとつだけ。ここの温泉は温めなので冬場は加熱しているらしい。足を入れてみるとビリリと熱さが伝わってきた。

温め好きの自分にとっては、加熱せずともいいのにと思ったが、浴槽がひとつではそうもいかぬ。

 

MTBで骨折、入院した際、保険でいつもお世話になっているSさんから、「骨折の湯治なら正観湯温泉もいいよ」と聞いていた。

脱衣場に貼ってあった効能表示にも、そのようなことが書かれてあった。温泉に浸りながら左腕をマッサージするだけで、「おおお〜痛みが引いていく!」なんてことはあるわけもないのだが、「効能がある」という暗示は大切だ。

お湯は無色透明で無味無臭。ほんのりとスベスベ感がある感じ。ここ最近、寒くなり、癒着した傷口がまた痛み始めている。お湯に浸かりながら、癒着を剥がすように左腕をマッサージする。

 

でかいボトルのボディーソープが備えられてある。まわりには誰もいないので、たっぷりとソープをつけて、ゆっくりと身体を洗う。ゆっくりじゃないと、時間が持たないのだ。

酸ヶ湯みたいに、熱さが何種類かある浴槽があったり、露天で風景を楽しんだりできればいいのだが、シンプルにひとつの浴槽だと、あっという間にやることが済んでしまう。

リハビリのための湯治ということであれば、温めの露天がある温泉がいいのかもしれない。

とか言いながら、立派な大木を眺めながら、結局三度も温泉に浸かってしまった。

 

どっぷりと汗が噴き出したので、脱衣所でしばし汗が引くのを待った。

ふと気づくと、脱衣所には少しばかり違和感のある音楽が流れていた。

有線だろうか。ジャズっぽいサウンドが響いている。しかしよく聴いていると、それはどこかで聴いたことのあるようなメロディだった。

曲が終わり、次の曲になった。再びJazzyな音楽が流れ始めた。これもどこかで聴いたことのあるようなメロディだった。

 

(そうか、12月か…)

流れていたJazzyなサウンドは、すべてクリスマスソングだった。

(そうか、あれからもう4ヶ月か…)

左手の中指が天を向き、左膝からどくどくと血が流れたあの日。あの暑い夏の日からすでに4ヶ月が経とうとしていた。

Jazzyなクリスマスソングが流れる温泉の脱衣場。

裸のオッさんがひとり、月日が流れるのを感じていた。

 

『 正観湯温泉 』

青森県南津軽郡大鰐町長峰字九十九森135-1

日帰り入浴 7:00〜21:00

 

 


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