『 浪岡駅前温泉 』で真っ黒な湯に浸かる
『うの食堂』でなんとか無事に昼飯にありつくことができた。
ここ最近ロードバイクでツーリングをしたときは、その土地ならではのグルメを味わい、その土地の(または近隣の)温泉を楽しむようにしている。行動としてはワンパターンであるが、そういう動機があった方がツーリングという「運動」をさぼらずに継続できるからだ。
昨年の夏にダイエット宣言をし、定期的にツーリングをする予定だったが、左手の骨折によりその計画もあっさりと断たれてしまった。
体重は測っていなかったが、自分自身が重くなっているのは自分でよくわかる。以前のようなハードなツーリングは無理かもしれないが、健康を維持するための「運動」といえば、今の自分にはロードバイクのツーリングしか思い浮かばない。
その「運動」を継続させるために、グルメと温泉はセットになっているのだ。もちろん、こじつけなのだ。
JR浪岡駅をかつて見たことがあったかどうか、全く覚えていなかったが、今の浪岡駅はえらくモダンでおしゃれになっていてビックリ。
そのおしゃれな駅から、街の中央に向かって真っ直ぐ通りが走っている。中央通りとか名前が付いているかどうかは知らない。
その通りの真ん中あたりに、それはあった。
その名もズバリ!『浪岡駅前温泉』
これほどわかりやすく、的を射た温泉は珍しいだろう。ただ「駅前温泉」というネーミングは、「いで湯」的な雰囲気とは真逆な、どちらかといえば「駅前サウナ」みたいなのを想像させてしまう。
れっきとした天然温泉だけに、何かもったいないような気もするのだが、見方を変えれば、浪岡の人々に愛されてきた街温泉ともいえる。
建物もそうだが玄関から入った雰囲気は、温泉というよりも銭湯という方が近い。最近はガラス窓のある受付タイプがほとんどだが、ここは昔懐かしの番台があって、そこで料金350円を支払う。
私が小さい頃は毎晩のように山海荘に通ったが、いつも番台には「石村のばっちゃ」が座っていた。たまに、ばっちゃの孫の「ま◯み」が座っていて、彼女は小学校の同じクラスだったものだから、けっこう恥ずかしかった。
脱衣所の雰囲気も街の銭湯といったかんじ。浴場に入ると奥の方に湯船がひとつだけ。カランは両側に計12カ所。先客も一人だけだった。
そんなかんじで、全てが街にある小さな銭湯という趣なのだけれど、「湯」は違っていた。「湯」は真っ黒だったのだ。
獅子が口から吐き出す源泉は、湯船に流れ込むと見事なまでに黒褐色をしている。これはまさしく「他にはない真っ黒な温泉」である。
それだけで、スペシャルな温泉であり、スペシャルな気分を味わうことができる。ここは、そんな街の中にある、いかにも普通そうな全く普通じゃない温泉だった。
ペロッと舐めてみる。味はそんなにしないが、ほんの少しだけ油臭あり。湯は少し熱めで、ツルツル感もあり。
浴槽は意外に深く、座ろうと思うと黒い湯が鼻に入ってきそうだ。私は中腰になりながら、黒い湯に身体を埋めた。そんなに長い距離ではないが、40kmを走ればそれなりに脚は張っていたし、左手の筋は相変わらずまだ痛む。
湯に浸かっていると、女湯の方から豪快な話し声が聞こえてきた。
浪岡は、今でこそ青森市となっているが、かつては、弘前や五所川原の方が生活は密だったのではないだろうか。青森市へ行くには大釈迦や鶴ケ坂の山を越えねばならぬが、弘前や五所川原は平野続きだ。
女湯から聞こえてくる「津軽のバッチャ」の津軽弁が、まさにそれを物語っている気がした。それにしても豪快すぎる。
風呂から上がって、しばらく経っても身体は火照っていた。
温泉にしても食堂にしても、なんか微妙に近くて訪れる機会の少なかった浪岡の街だったけど。
温泉にしても食堂にしても、めちゃめちゃオリジナリティがあって、なんか不思議な魅力のある街な気がする。
また来よう。
『 浪岡駅前温泉 』
青森市浪岡字細田87-14 営業時間・9:30~22:00
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