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2022-12-24

『 使わない言葉 』


 

7年前の冬、Facebookにあることを書いていた。

その頃はまだブログを始めていなかったので、たまにではあるが、なんとなく書き留めておきたいことをFacebookに記すことがあった。

どんなことを書いていたかといえば、『使いたくない言葉』についてだ。

 

そして、それを書き記して以来、私は『その言葉』を使っていない。

そして、これからもおそらく使わないだろう。約束したわけではないのだけど。

 

Facebookは過去の記事に辿りつくのが大変なので、この機会にブログに書き写しておこうと思った。

誰かに読んでもらうというよりは、たまに読み返してみて、その後も守られているかどうか確かめてみようと思った。

Facebookの友達の中には、「あ〜、これなんか読んだことある」という人もいるかもしれないが、私的備忘録的なものなのでお許しください。

 

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最近、苦手としている言葉、なるべく使わないようにしている言葉があります。「人それぞれ」という言葉です。

個人の考え方や生き方を尊重した、どちらかといえば良い意味で使われる言葉です。右倣えだったこれまでの日本人特有の性質にかわり、特に3.11震災以降「人それぞれ」の生き方や考え方が重視されるようになってきました。私も「なるべく人と違う格好をしたい!」と洋服の世界に飛び込んだ、まさに「人それぞれ」な人間です。ですから、これまで何度もこの言葉は使ってきましたし、今でも使うことが多いかもしれません。

友達仲間と飲みながら少し難しい話をするときなど、よくこの「人それぞれ」が出てきます。

写真仲間で飲んでも「こういう構図の方がカッコイイよね。でも彩度あげすぎじゃない?」「ん~でも人それぞれだからね」というのはざらです。チャリ仲間で飲んでも「やっぱクロモリっしょ!」「峠攻めるならカーボンだべ」「まあ、人それぞれだはんでな」なんてのは日常茶飯事で、「人それぞれ」は比較的良い意味で使われている印象があります。かくゆう私も、ロードバイクに乗りながらもしょっちゅう立ち止まってはカメラを取り出す…まさに「人それぞれ」なヘタレチャリダーです。

ではなぜ苦手にしているのかというと…いい意味で捉えられることが多いが故、どんな場面でもこの言葉ひとつで話を終わらせてしまうことが多い、と感じるからです。

先のオリンピックエンブレムの話をデザイン仲間が討論します。「やっぱりプロがデザインすべきだよね」「でも今現在、デザインのオリジナリティって存在するのかな?」「そこはプロ。パクっちゃダメでしょ」「でもやっぱり一般国民に理解されるデザインがいいと思うな」「まあ…考え方は人それぞれだからね~」「あ、あぁ….そうだね…」と話が終わります。

「人それぞれ」を語った人はなんとなく良いことを話した気分かもしれません。場も、達観されたことを言われたようで収まってはいるが、なんか釈然としない。やはり、こういう場ではもう少し突っ込んだ討論があってもいいのでは...と思うときがあります。

もちろん本当に「人それぞれ」を主張したいときもあると思いますが….なんとなくこの話を終わらせたい、これ以上この話に深入りしたくない、というときに使われることも多いように思います。

確かに他人のクドい話を打ち切るには便利な言葉かもしれません。「相手に不愉快な思いをさせ、自分が嫌われる」ことを恐れる日本人、「他人と関わることを面倒」と感じる日本人が使いたくなる言葉とも言えます。ただ、個人の考え方、生き方を尊重するはずの「人それぞれ」を、その場を取り繕うために誰もが使うようになると、「人それぞれ」=「みんなと同じ」に聞こえてしまうのです。

 

 

 

戦争や混沌とした政治・経済など、今の世の中の現状を討論するときに、「人それぞれ」という言葉ひとつで済ませてしまう人はいないと思います。ただ、気の合う仲間や職場の人たちと、趣味や仕事の話をしたときも「人それぞれ」で終わらせないで、もう少し自分の意見を話してみたらどうだろうか。難しい話でも「少し勉強不足なので、勉強してきます」「今の話、よくわからないので今度また教えてください」とか。

あえて、使ってもいいかな、言われてもいいかな…と思うのは、過去の嫌な話をしたくないとき。「あなたも、いろいろ大変なことあったんでしょ?」「うん…まあ人それぞれいろいろあるからね…」あまり聞いて欲しくない話なんだ、ということを察して欲しいときには使ってもいいかな、と思います。でも、こういうときでも「実はあまり話したくないことなんですよ」と自分の気持ちを言える人間になりたいものだ、と最近感じます。

どうでもいいようなこと、長々と書いてしまいました。おそらく自分だけが感じていることかもしれません。まあ、「人それぞれ」だからね….と言われそうです。

 

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こんな面倒くさそうな話を投稿したのだが、意外にも読んだ方からの反応が多く、そしてそのほとんどが「その言葉、私もよく使っていました」だった。

その言葉が嫌いではないし、使うこと・使われることをイヤに思うわけではない。それは今でもそう思っているのだが、ただ「自分は使わないようにしよう」と思っただけのことだった。

そしてSNSという場ではあるが、公言してしまったせいか、あれから7年間、私は『その言葉』を使っていない。

話の流れで思わず使いそうになることは何度もあったが、その度に「ううっ」と思いとどまり、使うことはなかった。

『使いたくない言葉』は、『使わない言葉』になった。

 

上の文章でも書いているが、「どうでもいいようなこと」を、よりによってクリスマスイブに書いてしまった。

まあ… 使いませんよ。

 

 

 

 


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