『棟方志功』と『グラフィックアート』①
先日、青森県立美術館に行ってきた。
目的は、大学時代の構成研究室の先輩である木村正幸氏による、クロストークを拝聴するためである。木村氏というのはどうも慣れないので、木村先輩と書かせてもらおう。(ホントは正幸先輩なんだけど)
久しぶりに訪れた県立美術館は、青空と木々の緑の中に白く佇んでいた。街中にある弘前れんが倉庫美術館とは対照的な立地だが、この緑の中にふっと佇んでいる姿もまた良い。
ちょうど【生誕120年棟方志功展】が開催されており、多くの来館客で賑わっていた。
外壁に飾られた大きなポスターを横目に、私はコミュニティギャラリーの方へ歩いて行った。
美術館の奥の方にあるコミュニティギャラリーでは【青森グラフィックデザイナーの一年展 2023】が催されていた。
これは「JAGDA 青森」による企画展(「JAGDA」は日本で唯一のグラフィックデザイナーの全国組織である)で、青森県内の20名によるグラフィックデザイン、商業デザインなどが展示されるもの。
県内に住む者にとって馴染みのある企業や商品の広告デザイン、パッケージデザインが多数展示されている。そして偶然にも、木村先輩の他にも知るデザイナーの作品が多数あった。
「岩木山ファンライド」で一緒にツーリングをしたことのある、09=ワクさん(和久尚史氏)の作品。以前勤めていた店の写真を撮っていただいたことのある、ニシさん(西川幸冶氏)の作品などなど。

ワクさんのグラフィック。素敵です。

ニシさんの写真。ビロが出ます。
そして大先輩、木村先輩の作品。

弘前に住む人にとっては、目に馴染んだデザイン。
「伝統的だけど、なんかお洒落な感じ」とか「このパッケージの商品は美味しそう」とか…日頃、目にするが、誰もが無意識に感じていることって結構多いと思う。
もちろん中身が良いのが前提ではあるけれど、その良さを発信するのがデザインの役目だ。
一通り作品を拝見した後、木村先輩やゲストの皆さんとのクロストークに耳を傾けた。
恩師である村上先生の企画展があるときには、たまに木村先輩と飲むことがあるが、先輩の言葉はいつも含蓄に富んでいて自分には常に重みがある。
かといって決して説教くさくはなく、こちらの話も「うんうん」と聞いてくれる。
「構成研究室」と言うと誰もが「それ、どんな研究室なの?」という疑問を抱くので、僕らは「デザイン科」「村上先生の研究室」と言うことが多かった。
が今となれば「構成研究室」という名はとてもカッコイイと思う。
他の研究室の生徒が「油絵」や「彫刻」をやっていたときに、先輩方はシルクスクリーンでポスターを作っていた。私は手書きで「本の装丁デザイン」や「イラストマップ」を描いていた。
パソコンがまだ普及していない時代だから、「グラフィックデザイナー」という言葉はまだ一般的ではなく、「イラストレーター」の方が馴染みがあった。
アカデミックな芸術よりは商業デザインが好きで、「西武」や「パルコ」の広告に憧れた。しかし憧れが強すぎたせいか、商業デザインではなく実際にモノを売る側の人間になってしまった。
洋服屋という現場を離れた今、またこうして数々のグラフィックデザインに接すると、また自分でもやってみたいな…そう思うことが多くなった。
以前よりは使える時間も増えたことだし、ビジネスにするほどでなくとも、少しずつ勉強してみようと思う。
会場を後にし、外に出た。
【棟方志功展】のポスターを再び横目にし、そのまま駐車場に向かったが、なんとなく気持ちがモヤモヤして引き返した。
棟方志功の作品は県立美術館の常設展で何度も目にしたし、棟方志功記念館でも拝見したことがあった。
でもなんとなく、グラフィックデザインに接した今日のこの日、「棟方志功」を見ておいた方がいいような気がした。
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