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2024-03-28

東北一周旅紀行 その3 〜「萬鉄五郎記念美術館」〜


 

花巻市内でたまげるラーメンを食した後、東の方向に車を走らせた。

行き先は「萬鉄五郎記念美術館」だ。花巻市の東和町土沢地区に位置する。

美術館だから市内にあるかと思ったら、どうやら郊外らしい。GoogleMapを見ても確かに市街からは離れたところに印があった。

 

東に向かって走ると、至るところにこの地らしい看板が目に入る。

「萬鉄五郎」「東和町」「宮沢賢治」「遠野」など、文学やアートが好きな人にとってはワクワクするワードが並ぶ。もちろん自身もワクワクしながら車を走らせていた。

しかし、花巻の郊外にあるというのは、やや思い違いのようだった。

車は坂道を走り、どんどん山の中に入っていく。花巻の街並みはとっくに視界から消えていた。

 

10kmほど走ると、東和町の小さな街並みが見えてきた。

萬鉄五郎は、明治18年(1885)、岩手県和賀郡東和町(現在の花巻市)の土沢に生まれた洋画家である。

私自身、大学に入るまでは萬鉄五郎という名は聞いたことがなかった。しかし、美術科構成研究室の村上善男先生の授業で、度々耳にするようになった。

それでも、花巻を訪れるという機会は一度もなく、萬作品の実物を目にすることはなかった。

 

「萬鉄五郎記念美術館」を訪れる…それが、今回の福島遠征を車で行くことにした理由のひとつだった。

東和町土沢は山々に囲まれてはいるが、街並みは綺麗で田舎くささは感じない。

商店街を過ぎて細い坂道を登ると、その先に美術館はあった。

 

萬鉄五郎記念美術館

 

外観は一見すると美術館には見えない。規模もそんなに大きくはない。

館内では「重石晃子展」が開催されていた。重石晃子(おもいし こうこ 1934〜)は、盛岡市出身の洋画家。1970年代後半にフランスに留学。異国の美しい街並みや広大な自然に惹かれた色彩豊かな絵画を描く。

展示されていたのは、フランスの街並みや山々の風景、故郷岩手の雪景色など、大きなキャンバスに描かれた油絵が主である。

モティーフは美しい街並みや風景なのだが、描かれる色彩はやや暗めでタッチも荒々しさを感じる。

 

《朝を呼ぶジュノー》 1996年

 

緩いスロープを上っていくと途中にいくつもの小さな画が展示されている。

「地元の新聞に掲載された挿絵原画」という説明が添えられている。大きなキャンバス作品も迫力があるが、この小さな挿絵がまた良かった。

 

挿絵原画

 

油絵とは全く異なる軽いタッチで描かれていて、とてもお洒落。

少しポップでフレンチな雰囲気。

 

スロープを上りきった奥の展示室に入ると、「萬鉄五郎」の常設作品が展示されていた。

萬が中学生の頃に描いたスケッチから始まり、水彩、油彩、版画などの萬作品が並ぶ。

作品の多くを占める油彩は、風景、静物、裸婦など、モティーフは様々。

風景画はセザンヌの絵に似た感じもするがタッチは力強い。静物画や人物画はゴッホやゴーギャンの影響を思わせる。

 

《口髭のある自画像》 1914年

 

茶や黒、紺、深緑など、濃いめの色が多く使われ、ところどころに赤やオレンジが描かれる。

一見すると陰鬱にも見えるが、観ているうちに何故か心の奥からエネルギーが湧いてくる。

絵画を評する知識は持ち合わせていないので、表現が陳腐になってしまうのは仕方がないとしても、妙に元気な気持ちになってくるのは確かであった。

恩師村上先生も、若かりし頃に似たような感情を抱いたのだろうか。

 

美術館の外に出ると、雪が舞っていた。

空は重く暗かったが、不思議と清々しい気持ちになっていた。

 

 


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