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2019-11-29

京都散策記 Ⅱ /  伏見稲荷 から 渉成園(東本願寺別邸)


 

京都の最終日。

メンバーの数人は、コンクール二日目の演奏を聴きに行くらしい。私も聴きたいという思いはあったが、当日券を手に入れるには朝5時くらいから並ばないといけない…という話を聞いて諦めた。前夜の打ち上げで呑んだ日本酒もまだ身体に残っていたし。

初日に河原町界隈の散策を終えていた。(最終日くらいはどこかの神社仏閣を見学しようか)と考えていたが、どこを見たらいいのだろう。13時には京都駅に行かなければならない。

私はホテルに荷物を預け、あてのないまま五条大橋の方へ歩いた。橋からぼんやりと鴨川を眺めていたが、ふと思い立って電話をかけた。

「もしもし、本間です。今、五条大橋のあたりにいるんですが」

「あ、本間さん!もしよかったら五条の駅から京阪の電車に乗って、伏見稲荷まで来てくださいよ。そこで待ってますから!」

弘前で自転車や建築・アートなど、多方面にわたってお世話になっている建築家の前田アニキ。その前田アニキを通じて知り合いになったのが、電話の相手、京都在住の鍋師さんだった。

鍋師さんとは、Facebook上での繋がりだったが、お互いカメラや写真が好きということもあり、度々コメントのやり取りをしていた。

私がコンクールで京都に行くことを知った鍋師さんが、是非京都で会いましょうとメッセージをくださった。最終日にランチをすることにしていたが、思い立って電話してみた。

 

『伏見稲荷』は京都駅の南東側に位置し、繁華街をメインにした地図には載っていなかったので、散策候補には入っていなかった。

しかし京阪に乗ると、20分ほどで着く。京都は大きい街のようで、実はそうでもない。電車と自分の足があれば大概のところに行けるようだ。

『伏見稲荷』の土地勘はゼロだったが、駅に降りるとほとんどの人が同じ方角に歩いていく。その列についていくと周りにお土産屋が並び始めた。

「大鳥居の前の手水舎にいます」とメッセージがあった。私は、自分の目印になるかと思い、FUJIの「X-100F」を首から下げた。

紅葉が美しいこの時期の日曜日。境内はものすごい観光客で溢れている。しかし、すぐに鍋師さんを見つけることができた。ネイビーブレザーを着た鍋師さんはFacebookのプロフィール写真そのままだった。私たちは、がっちりと握手をした。

 

千本鳥居

『伏見稲荷』といえば、やはり『千本鳥居』を思い浮かべる人は多い。延々と続く朱の鳥居は、写真好きにはフォトジェニックな光景としてよく知られる。

(ベタではあるけど、やはりあの光景は撮っておこう)と思ったはいいが、自分の頭の中にあった光景はそこにはなかった。ファインダーの向こうに見えたのは、鳥居の中を歩く人々の頭の行列であった。

(いやいや、まじか。すげ〜人だな) しかし、自分もその中の一人である。鍋師さんの話によると、ここで無人の写真を撮るならば、夏場の明け方に限るとのこと。

素直に諦めて、狐を撮った。

「稲荷大神様」のお使い

境内にごった返す観光客をかきわけて、鍋師さんと私は駐車場に向かった。鍋師さんは車で来ていたのだ。

伏見稲荷界隈の細い路地をすり抜ける。そして、なんとも贅沢な観光案内付きのドライブとなった。行き先はドライバー任せ。観光ガイドブックには絶対に載らないような京都のディープな話を聴きながら、碁盤の目を走る。

やがて、車は大通りから少し入ったところにある境内の中に入っていった。

「ここ、『渉成園』ていうんですけど、実は『東本願寺』の別邸なんですよ」と、鍋師さんは言った。

『渉成園』は『東本願寺』のすぐ近くにあった。別邸というくらいだから、ガイドブックには載っているようだが、ほとんどの観光客は東・西本願寺を見学して終わるらしい。

駐車場に停めた車は、私たちだけであった。入場料を払い、中に入ると美しい庭が広がっていた。ググってみると「池泉回遊式庭園をもつ東本願寺(真宗本廟)の飛地境内地(別邸)」とある。

なるほど、大きな池の周りを回遊する小径がある。私は鍋師さんと京都の話や青森の話をしながら『渉成園』の庭園を回遊した。

 

 

 

『渉成園』より京都タワーを望む

誰もが知る京都の名所を散策したというわけではないが、私は妙に得をした気持ちになり、鍋師さんと『渉成園』をあとにした。

京都駅に行かねばならない時間が近づいていた。

「最後に1ヶ所だけご案内します」と鍋師さんが言った。

『東本願寺』を過ぎ『西本願寺』へ向かう。そして、その一角にある建物へと車は入っていった。車を降りると、目の前にあったのは寺院ではなく洋館だった。観光客は一人もいなかった。

「ここ、『龍谷大学』なんですけど、よく映画の撮影なんかに使われるんですよ」

 

龍谷大学 大宮学舎

正面に見える「本館」は、1879(明治12)年に竣工された大宮キャンパスのシンボル的建物で、国の重要文化財にも指定されている。

その「本館」を囲むようにして、美しいアーチ型に連なるヨーロッパ調の窓が印象的な「北黌」と「南黌」が優雅に対をなしている。

さすが京都。神社仏閣だけではなく、明治期からの古い洋館建築も数多く点在しているらしい。

古いお寺と洋館。そういえばなんとなく、弘前と似ている。いや、弘前が京都に似ているのか。津軽の小京都と呼ばれるのもわかるような気がした。

 

思いがけず、車で京都の街を散策することができた。しかも自分の知識だけであれば絶対に訪れないところばかり。

(鍋師さん、本当にありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています!)

私たちは、再びがっちりと握手をして別れた。

 

 


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