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2021-05-04

『 紙の本 』


 

もう10ヶ月くらい前にもなるが、とあるフォトコンテストの入賞通知が届いた。

コロナ禍のせいにはしたくないが、ほとんど写真も撮れていなかったのは事実だったし、例年開催されていたフォトコンテストの多くが中止になっていた。

そんな中にあって、入賞の通知は嬉しいものだった。その郵送されたお知らせの中に「あなたの作品が、3月発売の◯◯誌に掲載されますので、予めご了承ください」とあった。

(お〜、写真誌に載るのか!でも、3月とは随分先だな…)と思いながら、数ヶ月を過ごした。

 

先月、(そういえば、あの写真誌もう発売になっているはずだ)と、誌面掲載のことを思い出し、私はTSUTAYAに走った。

普段から写真誌を買うことは少ないが、今回の写真誌は一度も買ったことがない本だった。デジタルカメラマガジンやCAPAが並ぶ写真誌コーナーを見渡す…が、どこにも見当たらない。田舎の本屋では売られていないのだろうか。

店員に訊いてみようと思ったが、まずはスマホでその写真誌を検索してみることにした。その本は容易に検索できた。しかし、その写真誌のHPには、こう書かれていた。

「〇〇誌は、この度12月を持ちまして発刊が終了となりました。長い間、ご愛読いただきありがとうございました」

 

な、なんと。発刊終了とは… 

そういえば、写真誌の大御所「日本カメラ」や「アサヒカメラ」もここ最近休刊になったばかりだ。

いや写真誌だけではない。ファッション誌も然り。漫画の月刊誌も然りである。そして、「小学◯年生」や「科学」や「学習」といった学習誌の多くも、かなり以前から終了しているらしい。子供の頃、「科学」の付録は楽しみだったなあ…(しみじみ)

どうやら、インターネットの発達したデジタルの時代は、紙の媒体にとっては受難となってしまったようだ。いや、受難と言うよりも、当然の時代の流れなのだろうか。

 

 

 

個人的には『紙の本』が好きだ。

特に写真やアート、インテリアなど、美術的に価値のあるものや、カタログ的に後々見返すこともあるものは、『紙の本』として手元に置いておきたい性分。そんなに読まないけれど、小説の類もデジタルではなく『紙の本』で読みたい。

故に、部屋の本棚には、かつて愛読していた『Casa BRUTUS』や『小島一郎』の分厚い写真集などが重そうに並んでいる。

私たちの世代にとって、それは「読みたい・観たい本」であると同時に、「部屋のインテリア」としての役割を果たしていた。だから雑誌のように処分することはなく、いつまでも部屋の一部として存在している。

 

ジャコメッリとマグナム

 

ところがだ。

そんなカッコつけたようなことを書いておきながら、「じゃあ、当の自分は、最近大枚をはたいて紙の本を買ったのかい?」と問われると、首を縦に振ることはできない。小さな写真集を2冊ほど買っただけだ。

とくに仕事でもあるはずのファッション誌は、ほとんど買っていない。ネット上のデジタルマガジンで情報は十分こと足りていた。

1冊の本から情報を得るよりは、多くのデジタルマガジンを読むほうが情報量も多い。トレンド性の強いものほどネット上の情報の方がコストパフォーマンスに長けている。

人々の手元にあるスマホの中に、すべての情報が入っていると言っても過言ではない。リュックサックがぶっちゃけそうになるくらい重い百科事典も、若かりし頃ドキドキしながら買ったエ◯本も、すべてこの小さな機械の中に凝縮されている。

自分の読みたいもの、観たいものだけを検索して、効率よくクオリティの高いものだけを目にすることができる。

自分自身も、『紙の本』が好きだと言いながら、多くの情報をスマホやPCのお世話になっているのは間違いない事実である。

 

好きな建築写真集

 

でもやっぱり、『紙の本』が好きなのである。

紙の質感も好きだし、棚に並んでいる風景も好きだ。でも、何よりも自分が好きなのは、『紙の本』には無駄な情報があるということ。とくに雑誌はそうだ。

ネットでは自分の読みたい、観たいものだけを検索する。が、『紙の本』には、自分の読みたい、観たい以外のことも多く載っている。「無駄な情報」が載っている。

しかし、お金を払って買った以上は、そんな「無駄な情報」も読んでしまうのである。そして、そんな「無駄(に思える)な情報」の中に、新しい発見がある。マル秘情報があったりする。

それが、勝手に思い描いていた自身のジャンルを広げてくれたり、たまにはブチ壊してくれる。新しい価値を見出してくれる。雑誌の小さな無駄には、大きな、そして深い無限の価値が秘められていた。

若かりし頃、そんな雑誌の読み方をしていたことが、今の自分を作り出した。今の自分が偉いとは、これっぽっちも思わないが、でも作り出したことは事実だ。

 

けれど、それは時代がそうであっただけで、今の時代の若者は、スマホやiPadから彼らなりの価値ある情報を取捨選択しているのだろう。

ペーパーレスと言われる現代。遠い未来は『紙の本』がなくなっても不思議ではない。

 

でもやっぱり、『紙の本』が好きだし、「無駄の中に新しい価値がある」という思いは、今でも変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 


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