2021年の静かなる桜 その2
前回、こんなことを書いていた。
どんな被写体であれ、光と影は何かを気づかせてくれる。
薄々分かってはいたが、モコモコと競い合うように咲く桜よりも、ひっそりと静かに主張する桜に心が動くらしい。
五月に入り、桜ほとんど花を落としてしまった。
それでも山の方ではまだ咲いているかもしれない。ツーリングやドライブに出かけているときに、ひっそりと静かに咲いている桜に出会うことがあるが、不意に現れる薄桃色には気持ちが動く。
五月最初の休日。車で嶽温泉を目指した。温泉も楽しみたいところだったが、今回は時間がなく断念した。
東目屋から三本柳を経由して百沢に向かう。実は、東目屋に好きな桜の木があった。しかし残念ながらほとんど花は散っていた。
百沢に出て、嶽に向かうネックレスロードでは、まだ咲いている木もあったが、多くの桜は茶色や黄緑色に変わっている。
スカイラインゲートのところに来ると、数台の車が停まっていた。自分が「アスリートの路」と勝手に名付けている桜のトンネルはまだ少し花が残っていて、記念写真を撮る家族やカップルの姿があった。
私はそのままゲートのところを通り過ぎた。しばらく進んで湯段へと向かう路を左折。ここの桜並木にも数台の車が停まっていた。
結局一度もカメラを取り出すことなく、そのまま嶽を後にして、来た路を戻った。
山間まで車を走らせたからといって、ひっそりと静かに咲いている桜に簡単に出会えるわけでもない。むしろ、この界隈は意図的に整然と植えられた桜が多い。
もちろん、それらはそれらで美しいが、今の自分が撮りたいものではなかった。
再び百沢に戻る。右折し、まだ見ぬ路を走ってみる。いくつかの桜の木を見ることができるが、ここでもやはり花は半分ほど散っていた。
それでも陽当たりのあまり良くないところでは、まだ花が残っている。ここで初めてカメラを取り出した。

百沢の桜

百沢の桜
ひっそりと静かに咲いてはいたが、時期を過ぎていたためか、心を揺さぶられるというものではなかった。
絶景スポットに夜明け前からスタンバイして臨む…というスタイルからは、程遠い自分を考えれば、こんなものだろう。
それでも、四月に弘前の郊外を走っていたときに、こんな風景に出会っていた。
「岩木山に桜」という、津軽ではお決まりの組み合わせ。

桜と津軽富士
しかし、何故かその構図は、絵葉書写真のそれには思えなかった。
それは、この桜が、ひっそりと静かに咲いていたからだろうか。
それにしても、相変わらず地味な写真である。
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