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2019-12-10

「椅子は小さな建築」③ / 洗面所にある椅子 『emeco』


「椅子は小さな建築」とよく言われるが、誰が言ったのかは、わからない。わからないままは、よくないので調べてみたのだが、結局わからなかった。

建築家として有名な伊東豊雄氏も、「椅子と建築」のことを語っていたのを何かで読んだことがある。ただ、最初に誰かが言ったのは、遥か以前のことだろうし、おそらくは稀代の建築家は誰もが口にしていたのかもしれない。

そんな建築的要素を持つ「椅子」だからこそ、他の家具にはない魅力がある。

 

人間が座るものとしての強度や機能性、そしてデザイン。それらが「椅子」を選ぶ要素になる。しかし、いざ購入するとなると、値段や置く場所など現実的なことも考慮しなくてはならない。

そういったいろいろを含めて、「椅子」選びというのはワクワクするのだ。

メインとなるテーブルや、テレビを置くラック、本やCDなどを収納する棚などは、一度購入すると長年使うこととなる。(処分に手間や経費がかかるという理由もある)

ただ「椅子」だけは、それぞれの部屋に、それぞれの用途を考え、配置することができる家具と言える。(椅子好きの勝手な言い訳です)

だから「椅子」選びは、ワクワクするのだ。

 

奮発してデザイナー家具を購入するのも良し。古道具屋巡りをして、お気に入りを探すのも良し。自分でデザインして職人に製作してもらうのもいいだろう。

部屋全体としてのバランスは考慮するけど、「椅子」ひとつひとつは統一感がなくてもいい、と考えている。同じようなシリーズで揃えるのもひとつの考えだが、それだと自分の色が出ないと思うし、誰かに揃えてもらったようなインテリアになるのは面白くない。

こんなことを書いている…ということは、ウチには幾つかの「椅子」があちこちにあるのです。

しかし、「座るための椅子」として存在しているものは全体の半分もない。多くは、なにかのモノが置かれている。バッグだったり、洋服だったり。

そういう意味では、モノグサな人間にとって、「椅子」とはいろんなものを置ける便利なツールである。

その中にあって、「モノ置き」になっていない「椅子」をひとつご紹介。

それは「洗面所にある椅子」である。

通常、洗面所といえば、リビングからドアを開けて廊下に出て、さらにドアを開けると洗面所&風呂場がある。というのが一般的な間取りだと思う。

ウチでは、リビングから洗面所に行くときは一度もドアを開けることがない。というか、ドアがない。リビングと洗面所はひと続きになっている。そして、洗面所の向こうにドアがあり、そこを開けると脱衣所がある。

 

リビングから見た洗面所

なぜリビングと洗面所をひと続きにしたのかといえば、洗面所って案外使うことが多いからだ。歯磨きはもちろん、薬を飲むときや、ちょっと鏡を見たいときなど。

いざ使おうとすると誰かが風呂に入っていたりして、その間は使えないということがある。だから、脱衣所とは別にしてリビングとつながるような間取りにした。

リビングとつながっているから、「椅子」を置いてもいいなと思った。ただ、水回りであるから、革はよくない。木でもいいが、もう少し堅牢な方がいい。

で、探し求めていたのが「emeco(エメコ)社」のアルミチェアだった。

「emeco(エメコ)社」には、『ネイビーチェア』という有名な椅子がある。アメリカ合衆国海軍の潜水艦と船で使用するために作られたアルミニウムの椅子で、生産開始は、なんと1944年にさかのぼる。

そんなミリタリーな薀蓄が背景にあるからか、アメリカ物を扱うショップで使われることが多く、昔から気になる椅子のひとつだった。ただ、新品で購入するとなるとかなり高価。

とくにここ数年は、「フィリップスタルク」や「フランクゲーリー」など、多くのデザイナーを起用し、現代的な椅子を次々と発表していた。もちろん、それらのデザイナーが手掛けた「emeco」はカッコよかったが、手が届くプライスではなかった。

何ヶ月もかけて探し、あるときオークションで古いオリジナルの「emeco」を見つけた。

型はオリジナルの『ネイビーチェア』だが、座面にレザーが張られたモデル。オリジナルのアルミのままだと、冬場は冷たすぎて座るのも躊躇ってしまうが、これは、ちょうど良いモデルだった。

リビングから続いている洗面所は、少しスペースを作り、ちょっとした作品なども置けるスペースにした。初めて写真展に出品した作品も置いている。

古いデンマーク製のキャビネットの上には、恩師「村上善男」のシルクスクリーンを飾っている。

 

 

もともとインダストリアルな家具やインテリアが好きだった。作品も無機質な空間にあるのが好きだ。

自宅にある椅子の中では、最も無骨で温もりのない椅子である。しかし、なぜか「モノ置き」としてではなく「座る椅子」として使われている「emeco」の椅子。

 

「emeco(エメコ)」ネイビーチェア

 

これからもお世話になります。

 

* 前回の記事 → 「椅子は小さな建築」② / ハンドメイド家具とモダニズム」

 

 


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