骨折湯治紀行 その八 / 湯段温泉郷『 時雨庵 』
久しぶりの湯治は、岩木山の麓へ。
岩木山麓といえば、百沢や嶽の温泉が有名だけれど、嶽のすぐ近くにある湯段の温泉も良い。湯段には、別荘らしき建物が何軒か立ち並んでいて、なんともまったりした空気が流れている。
「湯段温泉郷」といえば、真っ先に『ゆだんの宿』を思い浮かべる。2年前にも書いていた。( ➡︎ ツール・ド・ツガル / 岩木山麓 湯段温泉『ゆだんの宿』)
今回は、その「ゆだんの宿」のすぐ近所にある『時雨庵(しぐれあん)』を訪湯。
玄関を開けて中に入ると、人の気配がない。「すいませ〜ん」と声をかけるが反応はなし。
どうしたものか…と思ったら、呼び鈴が目に入った。
「チリ〜ン」と鳴らすも、またもや応答はなし。
強めに「チリ〜ン」と鳴らすと「は〜い」という返事とともに、女将さんが出てきた。
「今日は日帰り入浴できますか?」「はい、いいですよ〜」とやり取りをしていると、「ニャ〜」と変わった色の三毛猫もやってきた。ここの温泉は代々猫が店番をしているらしい。
玄関の左側の方に温泉はあった。「大きい風呂」と「小さい風呂」があったが、今は小さい方はやっていないようだ。
「大きい風呂」の方に入ると、脱衣所には中央にデカいマッサージチェアがでん!と鎮座している。着替えるスペースはほんのわずか。
(これで大きい方ならば、小さい方はどうなのだろう?)と思い、ちょっと覗いてみると、一般の家庭にある風呂とほとんど変わらぬ大きさだった。
さてと。
ワクワクしながら浴場に入ると、予想通り誰もいない。
壁は木板で覆われていて、こじんまりと心地の良い雰囲気。浴槽そのものも肌に優しい木で覆われている。手を入れてみると、湯はそんなに熱くはない。
「ぷは〜」とでかい声を出して、ゆったりと湯に浸かる。
好みの温めの温泉だ。近場にある嶽温泉の強烈な泉質とは異なり、まったりと優しい泉質である。
窓からは湯段の風景が見えるが、絶景というわけではない。岩木山が見えれば最高だろう。
窓の隙間から優しく入り込む日差しを浴びながら、ゆっくりと左腕をマッサージした。
最近、津軽もだいぶ暖かくなり、左腕の腱や筋肉もほぐれてきたような気がする。中指は、まだ最後まで曲がりきれない。
カランも二つのみ。まさに、泊り客のための温泉という趣である。
シャンプーやボディソープも備えられている。身体を洗い終えた後、いつものように三度、温泉に浸かる。
ふと思ったが、こちらの「大きい湯」の方に入るとき、「男湯」「女湯」の区別がなかったような気がした。まさか混浴なのだろうか。
(女の人が入ってきたらどうしよう…)と一瞬だけドキッとしたが、そんなことはあるわけもなく、今回もゆったりと独占湯を満喫した。
「いい湯っこでした。ありがとうございます」と、帰りぎわ女将さんに声をかけると「また、いつでもどうぞ〜」と、変わった色の三毛猫と一緒に、笑顔で返してくれた。
外に出ると、日頃弘前から見るのとは少しばかり違う姿の岩木山が、雪原の向こうに立っていた。
湯段温泉郷 『 時雨庵 』
住所:弘前市常盤野字湯段萢4-36 電話:0172-83-2089
立寄時間:9:00~21:00
日帰りでも貸し切りにしてくれるので、誰かと鉢合わせたりあとから入られるということも無いようです
営業時間は10:00~18:00みたいです