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2017-06-04

旧三厩村の漁師小屋群


ここ3年ほどの間ですが、年に一度は訪れる場所があります。津軽半島の北端に位置する、旧三厩村。現在は外ヶ浜町に合併されています。津軽半島の北端といえば、やはり津軽海峡冬景色で有名な「龍飛崎」。龍飛崎まで行くと、やはり観光地然としていて、お土産屋やレストハウスが並んでいます。観光バスやツーリングのバイクも並んでいます。

私もロードバイクを始めてから、何度かこの龍飛までのロングライドを敢行しました。往復200kmという距離もさることながら、小泊方面から上る標高500mの眺瞰台を超えるのがとてつもなくキツい。しかしその頂上から望む津軽海峡と、その遥か向こうに霞む北海道を眼にすると、それは何かを成し遂げたような錯覚に陥るのであります。

そして龍飛崎まで降り、海の幸ラーメンだったりウニ丼だったりに舌鼓を打つわけですが、さていざ帰ろうかとなると、またあの500mを上るのはちょっとなあ…と逡巡。で、遠回りにはなるけれども、今別町から小国峠を経由して十三湖へ戻るというルートを選ぶか、それとも蟹田からそのまま青森経由のルートにするか、はたまたやはりあの500mを再度登坂するか…そのときの天候や体調や時間などによって選択を検討するわけであります。

ただツーリングに関して言えば、なるべく行きと帰りは違うルートの方が楽しい。その方が飽きないし、走ってみての新たな発見もあったりします。

初めてロードで訪れたときの写真

龍飛から今別に向かう途中にあった旧三厩村もそうでした。海沿いに集落が点在していますが、必ずと言っていいほど、どの集落にも漁師小屋が並んでいます。その立ち並ぶ漁師小屋群を初めて目にしたとき、私は衝撃を覚えました。おそらくかなりの年月が経過したであろう、漁師小屋が狭い国道沿いに並んでいる。

もともとは原色の青や赤で塗られたであろうトタンが半ば朽ちていて、なんとも言えぬ色合いに変化している。日課のごとく、強い潮風にさらされているのだから、朽ちるのも数倍は早いのかもしれません。

三厩の集落は幾つかあり、そのほとんどの集落にこの漁師小屋の列があるのですが、その中でも小屋の形、色、周りのロケーションなど、自分的に思わず「かっこいい!」と唸ってしまう小屋が何軒かあるのです。この厳しい環境の中で、黙々と仕事をしている漁師さんたちにとって、「かっこいい」などという言葉は迷惑千万な話であろう。それでも日頃、弘前の街に暮らしていると、この漁師小屋の並ぶ光景には、気持ちが惹きつけられるのです。おそらく自分が鰺ヶ沢という、これまた漁業の町に生まれ育ったから…かもしれない。

自分がロードバイクに乗りながら津軽のあちこちを走り、写真に収める、ということを自分のスタイルにさせたのは、この三厩の漁師小屋群に出会ったのが大きく影響しています。

写真を趣味にしている人の中には、廃墟マニアの方がいます。日本各地には、明治から昭和にかけて建てられ、その後廃墟と化した多くの施設があるらしく。マニアの方々にとっては、そういった施設、特に山奥などにある炭鉱施設や工場などは「萌える」らしい。

私が津軽のあちこちを撮った写真には、三厩の漁師小屋のような、古びた小屋や蔵などがありますが、それを見た人から「廃墟がお好きなんですね」と言われたことがあります。実はあまり廃墟は好んで撮りません。古くて、経年で年季が入ってしまった建物でも、そこで暮らす人の営みが感じられる方が好きなのです。

近年は肖像権の問題などもあり、安易に人物の写真を撮ることはありませんが、そこに人を感じる写真が好きです。「日常の中に潜むドキュメンタリーを撮りたい」という自分の求める写真がそこにあります。 

西目屋村などの農家の作業小屋なども好きですが、やはり海辺の漁師小屋の方がディティールが面白いのです。漁師小屋には、浮き玉や錨など独特のアイテムがあって、そういった道具が人間の営みを感じさせてくれます。

この場所、ロードバイクでしょっちゅう行けるとこではありません。特に冬場は無理。でも一度、冬の漁師小屋群も見たくなり、今年の2月と3月に車を走らせ行ってきました。まだ雪の残る北津軽の海。それは、かつて津軽の風景を写真に収めた写真家「小島一郎」の世界を垣間見るようでした。

最初の写真と同じ漁師小屋

「小島一郎」は好きな写真家の一人です。「小島一郎」は1924年に青森市に生まれ、戦後、青森を拠点に北国の風景を撮り続けた写真家です。モノクロームをメインにし、厳寒の津軽や下北の風土を大胆な構図と独特の世界観で表現しました。実際、小泊から三厩方面などの北津軽の風景も撮っていたようです。

プロの写真家の作品を自分のブログに載せるのは、気が引けますので、機会がありましたら、ぜひご覧になってみてください。

さて今年はロードバイクで三厩に行けるだろうか?腰痛やインフルと、まともに近場も走っていない今シーズン。ウニ丼の時期もあと2ヶ月ほどと考えると、ちょっと焦っているのである。

写真語録③
「人生の目的地まで直行便と各駅停車がある。自分の抱える劣等感の数が停車駅の数。でも名も知らぬ駅に思わぬ出会いがあるのです。」ハービー・山口


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