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2017-08-05

金賞受賞しました /「NHK全国学校音楽コンクール」青森県大会


 

自分がステージに立つというわけでもないのに、眠れない。

朝5時にアラームをセットしたのはいいが、2時に目を覚ましてから眠れない。

子供たちがどんな演奏をするのだろうか。

彼らの演奏をちゃんとビデオ撮影できるのだろうか。

撮った写真や映像をどのような編集にしたらいいのだろうか。

別に今考えなくてもいいようなことも、勝手に頭がぐるぐる考え始め。

身体は寝たいのに、頭にアドレナリンが回っているようだ。

ヒルクライムのレース前日でもこんな緊張はしない。

かつて自分がコンクールに出たときもこんなには緊張しなかった。

やはり日頃、娘が頑張ってきた姿を見ているので、もしダメな結果だったらどうしようと、

今までに感じたことのない緊張を感じているのかもしれない。

当の本人は、朝早いからとぐっすり寝ている。

私は、外もだいぶ明るくなった頃、少しだけ眠っていたようだ。

娘に起こされた。

嫁さんにお弁当を作ってもらっている間に、二人で準備を始める。

ステージに上がる制服に着替える。

なかなか似合っている。

手伝いとして参加する保護者の集合時間は、7時だったが子供たちの集合時間の6時半に合わせて自宅を出た。

朝の練習の前に、私が子供たちの前でリラックスするための体操や発声をアドバイスするためだ。

もしかしたら、これをやることに緊張していたのかもしれない笑

体育館に入ると、もうみんな集まっていた。

先生に紹介してもらって、子供たちの前に出る。

「あ、よく写真撮ってるオッさんだ」

そんな顔をしている。

「みんな、おはよう!どう?ちゃんと眠れたかな?」

と自分が眠れなかったことを棚に上げて声を張り上げる。

大学時代、声楽の先生が僕ら学生たちに、発声やリラックスする仕方を教えてくれた。

その時の記憶をたよりにして、子供たちにもわかるように話す。

いい声を出すには、リラックスと緊張感が大切だ。

身体はリラックスしていないと声が硬くなってしまうが、意識は緊張感を持たないと声は響かないし、まわりとハーモニーしない。

「目を大きく開けて、次は鼻穴を開けて〜、そして口をポカンと開けて〜」

「体の中に空気を少しづつ入れていって、身体と頭の中に大きな空間を作る感じで〜」

「オ○リの穴は開けないようにね〜」

たまにくだらないオッさんギャグを入れながら、みんなの体をほぐしていく。

思い切って声を出してみる。

朝一で自分もあまり声が出ない。

アルトのパートをベースの声で歌ってみる。

いや、ひどい歌声だわ。

髭面のオッサンの練習前の練習は15分ほどで終わった。

彼らの緊張を解いてあげることはできたのか、よくわからなかった。

金賞を取れなかったとき、「あの朝イチのオッサンの練習のせいだよな」

と後々言われるのではないかと…変な汗が吹き出てきた。

そのあと先生による練習がおこなわれた。

私は少しだけ練習の様子を撮った。

みんないい顔をしている。

私はみんなより一足早く青森に向けて出発した。

ビデオ撮影の役割もあったし、駐車場も確保しないといけない。

カーステレオのすべての音源を切って車を走らせた。

青森に着くまで、ずっと歌っていた。

おかげで眠くなることもなく、青森に着いた。

「あ、ねぶた祭だもんなあ」

国道沿いにはたくさんの観覧桟敷が並んでいる。

「リンクステーション青森」に着いた。

昔、コンクールでよくステージに上がっていた頃は、まだ「文化会館」だった。

駐車場は思いの外空いていた。平日の朝だからまだ来ている人は少ないのだろう。

車を置いてロビーに出た。

 

久しぶりの光景。

外に出てバスが来るのを待つ。

周りにはいろんな制服を着た子供たち。

他校の子たちは、みんな上手そうに見えるものだ。

自分の頃もそうだった。

バスが来た。

バスに酔った様子もなく、みんな元気そうだ。

会場に入り、受付を済ませるとみんなは控え室へ、私はロビー2階へ行った。

30分ほど待ってから、ホールに入る。

ビデオ撮影者の指定された場所へ行く。

今回は「自分の学校の演奏のみ、撮影ができる」というルールになっている。

そんな大役を仰せつかった自分。

事前にもらったお知らせには、かなり厳しいルールが明記されていたが、

ホールに入るとそんなに厳しいかんじでもない。

娘の学校は3番目の演奏なので、早めにセッティングをする。

審査員の先生方が入ってきた。

それにしても、芸術や音楽を点数で評価するというのも酷なお仕事である。

しかもまだ小学生である彼らに対して、数字で優劣をつけるというのは審査員の先生方にとってもツラいお仕事であろう。

でもそれがコンクールの宿命であり、審査員の役割でもある。

しかも3日間続けて。

ほんとうにお疲れ様です。

いよいよ開演。

2番目の学校のときにスタンバイする。

出番がきた。

子供たちが入ってくる。

堂々と入ってきて、こちらを見上げている。

いいかんじだ。

学校紹介のアナウンスが流れる。

指揮者とピアノ伴奏の紹介がある。

さあ、本番。

まずは課題曲。

最初の入り。

おお、いいぞ。堂々としている。

ユニゾンからパートが分かれる。

音楽が大きい。

いつもの彼ららしい演奏だ。

後半へ向けて、曲が盛り上がる。

ときどきある、子音を強調したピアニシモもいい。

大きな音楽をきちんと維持して、最後も決めた。

次は自由曲。

インパクトのある強い出だし。上手い。

音もリズムも難度の高い曲だ。

こちらも彼ららしい大きい音楽をしている。

しかし課題曲と違い3声に分かれるので、ひとりひとりの音が少し目立つ。

ソプラノの高い音が少し苦しいか。

アルトの低音も少し固い。

たまに全体がうるさくなる。

他の学校と違い、けっこう男の子がいる。

男子のファルセットは女子よりも少し太くなるので、どうしても音がまとまりにくい。

でもその分、パワーがあるのだ。

それがこの学校の特徴だ。

ひるむことなく、おじけづくことなく、小さくならず、歌い上げる。

それが君たちの音楽だ。

最後、フォルテシモのあとの落ち着いたフレージングで、演奏を終えた。

うん。よかった。

かなり荒削りではあったが、スケールの大きい演奏だった。

ビデオを撮る私の手はずーっと震えていて、うまくズーミングできなかった気がする。

機材をすぐにしまい込み、ホールの外に出た。

ロビーに行くと、歌い終えたばかりの子供たちの笑顔があった。

みんな、よくやったよ。

ハイタッチをした。

娘も満足したような笑顔を見せていた。

少しロビーで休憩してから、再びホールに入る。

自分も生で合唱を聴くのは久しぶりだ。

それにしても、小学生の合唱。どこも上手いなあ。

前半最後の青森市のT小学校

すばらしい演奏だ。

音がやわらかく、きれいにまとまっている。

圧倒的に金賞の候補だな、ここは。

さて、お昼休憩。

3階の和室でみんなでお弁当を広げる。

すでに演奏も終わっているので、みんなリラックスモード。

そんな様子もちょこっと写真に撮ってみる。

お手伝いで同行している保護者の方々もとてもきめ細かく動いている。

私はまだ子供たちの名前を数人しか覚えていないので、少し話しかけながら写真を撮る。

しかし緊張感いっぱいの午前中だったせいか、娘も私もおにぎり1個しか食べれなかった。

後片付けをして、再びホールへ。

後半もいい演奏をする学校がたくさん出場する。

席について、午後の開演を待つ。

後半が始まった。

課題曲はみんな同じなので、課題曲を聴くと、だいたいその学校の特徴やレベルもわかる。

すばらしい演奏をしたのは十和田市の小学校

ソプラノの音がやわらかく、パートがひとつにまとまっている。

音質がいいので、ハーモニーもとても美しい。

う~ん…強敵だなあ。

次の青森市の小学校にも度肝を抜かれた。

声が大人なのだ。ソプラノもアルトも。

とても小学生には思えない。

よほど発声のトレーニングをしているのかな。

後半、7校。計15校の演奏がすべて終わった。

聴いたのを思い返してみると、発声がすばらしく、音楽がきれいにまとまった学校が3~4校あった。

それらの学校に比べると、娘の学校は発声もまだまだで、あきらかに荒削りだった。

自分でもいい演奏だとは思ったが、全体を聴くと「次に行ける!」という自信はない。

ただ、唯一言えるのは、ほかの学校にくらべて圧倒的にスケール感が大きかったことだ。

とにかく堂々と声を出す。

だから音圧もあったし、聴く人たちにその音楽の大きさが届いたのではないか。

審査員の方々もひとりの人間だ。

録音審査ならアラが見える演奏かもしれないが、生のライブのパッションを感じてくれたのではないか。

審査員の方々には失礼な話かもしれないが、自分としてはそこに期待したい思いだった。

審査の間、一時間ほどの休憩。

寝不足のはずなのに、意外と眠くならないものだ。

10分ほど遅れての閉会式。

審査員がステージ席に着席する。

会場は演奏のとき以上に緊張感に包まれる。

発表は銅賞からだった。

ということは銀賞で呼ばれてしまったら終わりか…

とりあえず銅賞では呼ばれなかった。

続いて銀賞の発表。

4校あるようだ。

目をつぶり祈る。

私が強敵だな、と思っていた学校の名前が呼ばれた。

もしや、いけるか?

銀賞でも呼ばれなかった。

最後、金賞の発表。

「金賞は…弘前市立○○小学校!」

「ヤッター!」

子供たちの声が響いた。

娘の満面の笑みが見えた。

私も前に座っていたお母さん方と握手をした。

いやあ、ほんとに良かったなあ。

よかった。

金賞もう1校は、やはり青森のT小学校だった。

後の審査員の講評で知ることになるが、3校の出場枠があったらいいのに、という感想が出たくらい接戦だったようだ。

ロビーの2階に集まって、集合写真を撮った。

みんな生き生きしていた。

 

帰り道。

バスで帰る子供たちと先生を見送る。

娘と地下の駐車場に降りた。

「ほんと、よかったね」

「うん!よかった!」

車での帰り道、どこかに寄って美味しいアイスでも食べようかと話していたが、二人とも妙にお腹が空いていた。

「残ってるオニギリ食うが!」

「うん!」

国道沿いに並ぶ、ねぶたの観覧席にはもうすでにたくさんの人がいる。

衣装に身を包んだ跳人たちが歩いている。

賑やかな街の喧騒をぬけて、しばらくすると

娘は後ろの座席で、すっかり寝入っていた。

私は来たときと同じように、帰りも歌をうたっていた。

少しだけ小さな声で。


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