『 時をかける少女 』 ~『 君の名は。』を観て~
昨日、テレビで「君の名は。」を観た。
2016年作。年が明けたので、一昨年の映画作品ということになる。
「真知子巻き」で知られる、60年以上も前の映画『君の名は』と同じタイトルだったこともあり、けっこう話題にもなったようだ。(厳密には今回のは『。』がついている)
ちなみに、この昔の『君の名は』は、映画の前に、ラジオドラマとして放送されていたのだとか。あまりの人気ゆえ、毎週木曜の放送時間になると、当時の日本中の銭湯の女湯がカラになってしまうという、おそるべき伝説まであるらしい。
2016年作の「君の名は。」
一昨年から昨年にかけて、FBなどネットでもよくPRを目にしたが、個人的にはこの手のアニメはあまり得意ではないので、全く観る気がしなかったし、いささか宣伝も過剰のように感じていた。
ここ数年は、映画をあまり見ていない。たまに自宅で観ることはあるけれど、映画館で観たといえば、娘のつきそいで『妖怪ウォッチ』や『プリキュア』を観たくらいか…(汗)
最近はテレビすら観ることが少なくなった。仕事柄、いろんなバラエティやドラマを観た方が、いろんなお客様と話をする際に役立つのかもしれないけど、どうもあの押し売り的なモノ作りが苦手になったようだ。芸人さんを集めてのクイズやトークとか、なんか似たような番組も多いし。
だから、新聞の番組欄も見ることがなくなってしまった。
昨夜は、たまたま一人で晩飯を食べていたので、なんとなく音が欲しくなってテレビを点けたら、『君の名は。』をやっていた。
アニメ映画といえば、「宮崎駿」作品が有名だけれど、彼の描く主人公に比べると、『君の名は。』の主人公はかなり少女漫画チックというか、いわゆる「萌え系」のタッチに思えた。正直ストーリーは全く知らないし、昔の『君の名は』のファンだったわけでもない。
晩飯を食べ、ビールを飲みながら、なんとなくボーッと観ていた。
しかし、観てすぐに「最近の画はスゴいな」と感じた。
実写以上にリアル、というか。例えば、ちょっとした光景でも、ピントの合っている部分が次々と移り変わり、自分の眼でその光景を眺めているような感覚になる。
描写も細密で、登場人物の描き方以外は、実写を見ているかのような作り込みようだ。
ストーリーに関して言えば、あまり詳しくなるとネタバレになってしまうけれど、公開からだいぶ時間も経っているし、多少はいいだろう。
この映画を観て、デジャブを感じた人は多いかもしれない。
上でも書いたように、1953年作の『君の名は』をモチーフとしている部分はあるかもしれないが、実際かつての『君の名は』を観た方々はもうすでに70~80代のご年配であろう。いくらタイトルが同じだからといって、そのご年配の方々がこぞって現代の『君の名は。』を観たとは少々考えにくい。
だから、私が思うデジャブを感じた人というのは、40〜50代の方々のことだ。
映画を観た方は、もうお分かりだと思うが、もちろん大林宣彦監督の2作品のことである。
『転校生』と『時をかける少女』
ともに大林監督が手がけた「尾道三部作」のうちの2作として知られ、1982~83年にかけて上映された。
『転校生』は高校生の男女があることをきっかけに入れ替わってしまう、『時をかける少女』はいわゆるタイムトラベルを描いた映画。
ちょうどその頃、私は弘前大学の学生で、美術科の「構成研究室」に所属していた。
ひとつ上の先輩に「コージ先輩」がいた。私は一浪したので、「コージ先輩」と年齢は一緒だったが、私にとっては尊敬する先輩であった。
その「コージ先輩」が『時をかける少女』を絶賛していた。今思えば、映画が好きだったのか、主演の「原田知世」が好きだったのか怪しいところもあるけれど。
すぐさま私も観に行った。当時はビデオデッキなど高嶺の花で持っている訳もなく、観たい映画は見逃すと次はいつ観れるかわからないのだ。
ほぼ同じ頃に「薬師丸ひろ子」主演の『セーラー服と機関銃』も話題になっていて、「カ・イ・カ・ン」の台詞が、テレビや雑誌に度々登場した。
世間はこの二人のヒロインを比較していたが、ビジュアル的に「薬師丸ひろ子」のほうが目立っていたので、薬師丸ファンのほうが多かった気がする。正直、自分も「原田知世」のことは映画を見るまで全く知らなかったし、映画を見たときも彼女に対するインパクトはそんなに強いものではなかった。

でも映画は圧倒的に『時をかける少女』のほうが好きだった。
あの尾道を舞台にした、詩情を湛えた薄暗い描写がカッコよかったし、ストーリーの主軸でもある「タイムトラベルの持つ時空の矛盾」を紐解いていくのもまたおもしろかった。
「なんか、原田知世のほうがいいな…」なんて秘かに思っていた男子は多いかも知れない。私もその一人。
当時、主演した男女二人の演技を「大根」と評した人も多かったようだ。確かに新人だった若者の演技はどこかぎこちなかったり、台詞が棒読みだったりしたのかもしれないが、あの「尾道」の舞台と、大林監督の作風には合っていたのだと思う。
今となっては、音楽やアートに造詣が深い女優として知られる「原田知世」。なんと御年50歳。知性を秘めているお方は美しい。
今回の『君の名は。』は、『転校生』と『時をかける少女』の両方の要素を持ち合わせており、しかも未曾有の大災害となった「3・11」も背景のひとつとして描かれている。
ストーリーもとてもよくできていて、時空のねじれによる男女のすれちがい、歴史的な辻褄の合わせも巧みに表現できていた。
とにかく画が細密できれいなので、それもまた飽きることなく最後まで観させた要因かなと思う。

タイムトラベルをイメージしたわけではありませんが、2017年キタムラフォトコンで入賞した写真
それでもやはり、あの仄暗い「時をかける少女」のほうが好きかもしれない。
なんて、偉そうなことを書いたけど、「映画」に関しては全く造詣が深くありませんので、あしからず。
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