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2018-03-04

「吉野町煉瓦倉庫」のワンコ / 現代美術館への変貌


一昨夜、久しぶりにがっつり飲んだ。

アニキこと前田卓氏と、アニキの友達の盛和春氏と3人で飲んだ。お二人とも建築の専門家である。

盛さんは、2年ほど前にアニキに紹介をいただき、お花見の席で一緒に飲んだことはあったのだが、そのときはあまりお話はできなかった。だからじっくり語り合うのは今回が初めてだった。

元々、建築には疎い自分であったが、30代後半から店舗の内装を手掛けたり、自宅を建てる時に自分で外観や内装をデザインしたことをきっかけに、いろんな建築の本を読むようになった。

ファッション業界でも一時期、モダニズム建築や家具がブームになったこともあり、夜な夜なオークションで北欧の家具やイームズのチェアを探していた時期もあった。

ただ、お二人は当然のことながら、私のような薄っぺらい建築知識の持ち主ではない。

アニキは、弘前をはじめ、青森や八戸においても多くの公共建築や個人住宅を手掛けている青森県、いや東北を代表する建築家である。

アニキの作品は、完成するといつもオープンハウスの招待をいただくので、何度か拝見したことがある。どの作品も周りの住宅などに比べると、やはり異彩を放っているのであるが、不思議なことに周りの景観・ランドスケープに気持ち良く溶け込んでいる。

特に弘前の街は、弘前公園界隈や新寺町など、通りの景観がそのまま観光資源になっているエリアが多い。そういった場所の景観を壊すことなく、しかしオリジナリティのある建築をそこに創るということは、才能はもちろんのこと、いろんな角度から物事を見る、推察する視野の広さが求められるだろう。

アニキの作品「レストランBon Vue」にて

おそらくアニキもお若い頃は、エネルギーにまかせていろんな建築を手掛けた時期もあるのかもしれないが、一昨夜はこのようなことをおっしゃっていた。

「長年建築家をやってきて、『自分がその建築に携わることの意味』を年々強く考えるようになった。自分の手がけた建築で暮らす人は、そこで「何を感じ」てくれるのだろうか? そこで学ぶ子供たちは「何かを得て」いつか「自立して」くれるのだろうか?」

そんな熱い想いを語ってくださった。

盛さんは、市の職員という立場で「弘前市の芸術」に尽力されているお方だ。

元々は、市役所の人間ではない。しかしこれまで「建築」や「芸術」において多彩にご活躍された方だ。多方面にわたって、いろんな知識も豊富で、頭がキレる!という印象だった。

岩木山一周ファンライドでの盛さんの雄姿

お二方とも、今話題の「吉野町煉瓦倉庫の現代美術館への変貌」に携わっている。建築以上にアートに興味のある自分にとっては、話題の尽きない飲み会となった。

かつて、【奈良美智展 AtoZ】が開催された『吉野町煉瓦倉庫』(=吉井酒造煉瓦倉庫)であるが、弘前市では未来に向けたその活用法が常に話題になっていた。

昨年、メインの建築家とそのチームも決定し、少しずつ美術館の将来像も見えてきた。煉瓦倉庫とその周りの公園、そして弘南鉄道、中央弘前駅などとの連携も含め、弘前に住む小市民の自分としても「期待」と「不安」を抱かざるをえない大事業である。

なんとか、この事業がいいカタチになって成功してほしい思いもあるし、それだけに「うまくいくのか?」という不安や疑問もあり、酔いに任せていろいろな考えをぶつけてしまった。アニキ、盛さん、すいません。

「市」としてプレゼン、実行する人。「市」から委嘱されて作品を設計する人。そして、観たり利用したりして、喜んだり文句を言ったりする人。まさに三者三様の熱い飲み会になった。

さらにはそこから、「今後の弘前市」を占う「市長選」や「街づくり」などの話に飛躍していった。自分は政治的な話は全く詳しくはなく、苦手な分野ではあるが、これまでは飲みながら政治の話などすることなどあまりなかっただけに、いろいろと勉強になった。

だが、何を話したのかはあまり記憶がない(笑)

政治的な話など、SNSやブログで話題にするのはタブー的な側面もあるけれど、自分の場合は勉強不足すぎて書く気がない…というか書けないのが正直なところだ。

でもあまりあちこちで、いろんな人と語り合ってしまうと、いろんなバランスを取ろうとしてしまいそうで、それがまた恐い。自分の感じていることを言えなくなってしまいそうな…それはとても良くないことだと思う。

アートやファッションに日頃から接している自分にとっては、なるべくいろんな人に迎合しすぎないよう、しっかり自分の考えを言える人間でありたいと思う。少なくとも税金を納めている以上、市の事業に対して自分は「門外漢だから」などと言っていられないのだ。

《A to Z Memorial Dog》

今回の「煉瓦倉庫の美術館への変貌」にしても、多くの賛成・反対意見もあるだろう。私の写真仲間などは、あの趣のある「中央弘前駅」の存続を求める声は多いし、ルネス街裏のロータリー化を疑問視する声も聞かれる。

なにかしら大きな事業、特に公共施設となれば、常にいろんな賛否意見がでるのは当然のことだ。大きなお金も動くし、もちろん我々の税金も投入されることになる。

すでに動き出してしまっているプロジェクトだからこそ、是非とも『市民に愛される美術館』になってほしい。

『吉野町煉瓦倉庫』自体には、すでに百年以上の歴史が刻まれているわけであり、それが「新しく生まれ変わる美術館」の最もウリとなるのは間違いのないことだろう。それだけに、設計やデザインを手掛けるチームには、今後さらに50年後、100年後と評価される「時間をデザイン」してほしいと思う。

そしてもちろんのこと、「県美」に負けぬような「キュレーション」を発揮していただきたい。津軽弘前には、昔から「エフリコギ」は多かったが、「アングラ」を好む変人も多かったはずだ。そんな弘前の「土着」が表現できる美術館になればいいなと思う。

『吉野町煉瓦倉庫』といえば、誰もが思い浮かべるのが、奈良美智作の《A to Z Memorial Dog》=「ワンコ」だろう。

ウチの娘も、倉庫の向かいにある「みどり保育園」に通っていたので、何度となく一緒に「ワンコ」の周りを散歩したものだ。

残念ながら、今その「ワンコ」は倉庫の小屋の中に入っている。多くの観光客が「ワンコ」に触ったり、背中に登ったりと、ダメージも多かったようで、修復のあとはお外に出られない状態になってしまった。

いろいろな事情はあるのだろうが、かつて保育園の子供たちと楽しそうに遊んでいた「ワンコ」の姿を再び見たいものだ。

2012年 ワンコとともに

「新しい美術館」は、きっとそれを実現してくれると思っている。

夜中の2時に飲み終え、鍛冶町から自宅まで、代官町を歩きながら、そして歌いながら帰った。どんな話をしたのか、思い返すこともなく、ひとりでひたすら歌っていた。

「アングラ」どころか「ただの迷惑な人」である。


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