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2019-09-22

赤石の妖怪 / 【 第1回 鰺ヶ沢写真クラブ展 】


 

日曜日は、弘前市民会館で娘の合唱部の発表があった。秋の週末はなにかとイベントが多い。

なので土曜日の午後、ほんの3時間ほどではあったが、写真展に在廊することにした。

鰺ヶ沢に到着する頃には、車の後部座席で娘は完全に寝入っていた。拠点館の駐車場に入り無理やり起こすと、彼女は不機嫌そうな顔をしていた。

車から出ると、海の方から爽やかな風が吹いていた。このようなロケーションで、これほどまで立派な建物が有効活用されないのはもったいない、と改めて感じた。

 

鰺ヶ沢拠点館 と 秋の空

 

写真展は、拠点館に入るとすぐ、正面の大きなスペースで開催されていた。メンバーの佐藤Sさん姉妹と佐藤Mさんが出迎えてくれた。みなさん、設営準備から写真展のPRなど、精力的に動いてくださったメンバーだ。長期間にわたり、お疲れ様でした。

会場には、見慣れた写真仲間の顔もあった。弘前や五所川原、青森から駆けつけてくれた仲間もいた。仲間って、ほんとうに有難い。

 

展示会場は、大きなコの字を描いていて、中央に二つのパネル壁がある。合計30点ほどの展示。

壁スペースやパネル数に対して、展示できる数が決まってくるので、最終的に加藤先輩と私の作品とで、枚数や展示場所を調整することになった。最初と最後のパネルに、先輩と私の写真を並べた。

最初の壁の方に出品した作品は、前回のブログで紹介した「遠い記憶」の2枚。会場全体は、カラーの風景写真が多いので、私の写真はかなり地味である。モノクロで、かつ被写体も地味。

展示作品の中でも、佐藤Sさんのマクロで撮った花々の写真は、サイズも大きく迫力があり素晴らしい作品群だった。多くの人が見入っていたようだ。

 

一番最後の壁…の、さらにその裏側に、先輩と私の作品がひっそりとあった。

ひっそりが似合う、これまたモノクロの地味な写真。先輩の作品も私の作品も、どちらも赤石の海辺での写真だった。

先輩の写真は風景だったが、私のは「見てもよくわからない写真」だった。いや、撮った自分にはわかるのだが、観覧された方々からは「これ?なんですか?」と尋ねられた。どうやら、初日にもそんな質問が幾つかあったらしい。

 

今年の春先に赤石漁港を訪れた際、港の波打ち際を撮った写真だった。

なんとなく、カラーで撮っていたが、ファインダーから覗く被写体が、なにやら得体の知れないものに見えてきて、フィルムシミュレーションをACROS(モノクロ)に変えた。

すると、その得体の知れないものは、そのおどろおどろしさを増幅させた。

 

赤石の妖怪 壱
赤石の妖怪 弐
赤石の妖怪 参

 

小学生だった頃、とても怖くておどろおどろしい演劇を観た記憶がある。

町内の空き地にテントを張り、町内の人々を呼んで公演をしていた。寺山修司の「天井桟敷」だったような気もするが、記憶は定かではない。地方を転々としながら公演をしていたようだ。

ファインダーの中の画は、そのときの記憶を思い起こさせた。

 

会場は17時で閉館となった。スタッフのみなさんに挨拶をして、私と娘は会場をあとにし、海へと向かった。

海水浴場には誰もいないと思ったが、驚いたことに3人の若者が海に入っていた。

浜辺には無数のトンボが飛んでいた。

 

秋の海

娘がスニーカーを脱いで、海に入る。

私は何枚かの写真を撮った。が、無数のトンボがカメラを横切る。液晶の中で、それはレンズゴミのように写り、撮影は難儀した。

 

娘は、小さな白い貝殻を見つけ、嬉しそうに私に見せた。

足が砂だらけになっていた。とてもスニーカーは履けそうにない。

私は娘をおんぶした。何年ぶりだろうか。

 

軽々とおんぶしていたはずの娘が、

少しだけ重く感じた。

 

 


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