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2020-01-27

【 永遠のソールライター 】展 / 〈 Bunkamura ザ・ミュージアム 〉


 

写真を仕事や趣味にしている人であれば、憧れのフォトグラファーがいるはずだ。

作品展や写真集で作品を目にして憧れた孤高の人もいれば、作風や技術を参考にしたいプロの写真家もいるだろう。

私は写真に関してはまるで素人だった(現在進行中)が、仕事柄、店でフォトプリントTシャツを売ることがあったので、海外の有名なフォトグラファーは何人か知っていた。

ファッションとしてのフォトTシャツは、いわゆる風景写真は少なくポートレートやスナップが多い。

有名なところでは、リチャード・アヴェドンハーブリッツアウグスト・ザンダーヘルムートニュートン。日本ではやはり、森山大道だろうか。

ファッションフォトはモノクロのイメージが強いが、アヴェドンあたりはシルクスクリーンのような作品もある。そういった作品を目にすることが多かったせいか、写真、シルク、ポスターなどを区別せずに観ていた。

 

自分自身が写真を撮るようになってからは、いろんなジャンルの写真本を読むようになった。多くの写真仲間とも知り合うことができた。

そうして初めて気づいたのだが、世の中では「風景写真」が圧倒的に人気があるということ。初心者としても入りやすいジャンルだが、その魅力に取り憑かれ何十年もお気に入りの風景を撮り続けるベテランも多い。

しかし、「風景写真」といっても、いわゆる「絶景」だけが「風景」ではない。「風景」には、「光景」もあり「情景」もある。広義で考えれば、スナップも「風景」のひとつと言える。

海や山の「絶景」、祭りなどの「光景」、街角の「情景」、娘の「スナップ」を撮るうちに、自分が撮りたいものが、最近になってぼんやりと見えてきた。

撮りたいといっても「何を」ではなく「どのように」という方が正しく、「どのように」だからといって技術的な意味ではない。

目の前にある対象物が、自分の目に「どのように」映っているのか。それを「どう」写すのか。

 

そんな「モノの見方」を教えてくれたのがソール・ライター「「Saul Leiter」だった。

 

【 永遠のソールライター 】展

 

ソール・ライターは、1950年代からファッション・フォトグラファーとしてニューヨークの第一線で活躍。しかし58歳になった年に自らのスタジオを閉鎖し、世間から姿を消した。

その存在がふたたび脚光を浴びたのは、2006年のこと。ドイツのシュタイデル社から出版されたカラー作品の写真集『Early Color』が世界的な反響を呼び、当時すでに80歳を超えていたソール・ライターにとって、第2のデビューとなった。

ソール・ライターは2013年に89歳でこの世を去った。しかし、その住処であり仕事場でもあったニューヨークのイースト・ヴィレッジのアパートには、膨大な作品や資料が未整理のまま残されており、2014年に創設されたソール・ライター財団が、現在も「ソール・ライター作品の全アーカイブ化」に取り組んでいる。

(美術手帳のサイトより抜粋)

 

 

 

ソール・ライターの写真には、独特の表現や特徴がある。なかなか一言では言い尽くせないが、まずは長いキャリアの中でも、彼の写真は1950年代にカラーで撮ったニューヨークのスナップということが一番の特徴だろう。

同時代の多くの写真家が、モノクロ写真によってその時代や人間の真実に迫ろうとしていたのに対し、画家志望だったソール・ライターは、写真で絵を描いているかのようだ。

そして彼の特徴として「ある何かを被写体として撮っている」とは言い難い、混沌とした曖昧さがある。人物が映っている場合も多いが、横を向いていたりガラス越しだったりと、大御所ウィリアム・クラインロバート・フランクの人間に迫った写真とは対照的。

それは、何か特別な対象を撮るというよりは、そこにある光景全体を捉えているという感じ。全体を撮る場合は、広角レンズで「広く」撮るのが一般的だが、彼の写真は望遠レンズで遠くから「俯瞰して」撮っている。

望遠で撮ると圧縮効果によって、画の中にいろんな対象が入り込んでくる。しかし、色彩の感覚、画面の構成力によって、それはソール・ライターの描く作品となる。

 

美術手帳より

 

 

また、彼の作品の特徴は、彼の言葉にも表れている。

 

「重要なのは、どこである、何である、ではなく、どのようにそれを見るかということだ」

「私の好きな写真は、何も写っていないように見えて、片隅で謎が起きている写真だ」

「神秘的なことは馴染み深い場所で起きると思っている。何も、世界の裏側まで行く必要はないんだ

「世界は他人への期待で満ちている。期待を無視する勇気があれば、面倒を楽しむこともできる」

 

 

東京出張で仕事を終えた後、渋谷の〈Bunkamura ザ・ミュージアム〉で開催されている「永遠のソール・ライター」展 を訪れることができた。

憧れの写真家の作品を拝見すると、すぐに影響され、似たような写真を撮りたくなるのは私のような素人にはよくあることだ。

それでも良い。「何を」「どのように見て」「どんなふうに撮る」のか。

ソール・ライターの写真を眼の前にして、「次はどんな写真を撮ろうか!」とわくわくする気持ちが湧いてきた。

 

美術手帳のサイトをご参照ください)

 


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