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2020-05-01

ツール・ド・ツガル / 岩木スカイラインの桜


 

前回の約束通り、小さなカメラバッグにX100Fを仕込み、未だ見ぬ桜を求めて岩木山に向かってペダルを回した。

弘前公園の外濠は満開から散り始め。このかんじだと、岩木山麓の桜はそろそろ咲き始めているだろう。

 

アネッコに近づくと、道なりに桜の花が咲いていた。いろいろな種類を植えているのだろうか。花の色が少しずつ違って、ピンク色のグラデーションになっている。

左側を流れる川の向こうに見事な桜の木があった。遠くに岩木山がそびえ、美しい風景をつくっていた。

 

 

宮地の造り坂を上る。

今日はスカイラインの入り口まで走ろうと思っていたので、無理せずにゆっくりと脚を廻した。

ゆっくりとしたスピード(もちろん自分なりのである)で走ると、まわりの風景をゆったりと楽しむことができる。

ところどころに薄ピンクの塊を見つけることはできるが、立ち止まってファインダーを覗くほどではない。結局、ウェストバッグからカメラを取り出すことなく、岩木山神社への直線道路に入った。

神社まであと少しというところで、左側遠くに警察が取締りをしているのが見えた。2台ほどが捕まっていた。

と、その時。「ピピー!」

一人の警官がいきなり目の前に飛び出してきて、旗を振りながら大きな笛の音を立てた。

(え!?俺?)

まさかこんなノロマなロードバイクを…と思ったが、その瞬間、私のすぐ横を猛スピードで黒い車が追い抜いた。

警官は必死に黒い車を止めた。私はトロいスピードのまま黒い車を追い抜き返し、何事もなかったように神社へと向かった。

 

神社には十数台の車が停まっていた。神社の周りにもかなりの数の桜の木があるが、思ったほどは咲いていない。3分咲きほどだろうか。

私は、鳥居の前で手を合わせ、すぐにスカイラインに向かってロードを走らせた。

スカイラインへと向かう路は、今シーズン初。右手に「アソベの森」へと続く道があるが、休業中の看板が立っていた。そういえば、弘前公園同様に桜林公園も閉鎖になっているらしい。

 

通称「はちみつ坂」に差し掛かる。ここの急坂にある桜の木は5分咲きくらい。

岩木山観光協会のあたりに来ると、道の両側に桜の木が並び始めた。しかし、ここも思いの外、桜は咲いていなかった。

今春は、記録的な早咲きになるだろうと言われていたが、4月半ばから寒い日が続いたせいだろうか。公園の外濠もまだ花がついていたし、山麓の桜はまだこれからなのだろう。

 

総合運動公園のところまで来た。

(ひと休みしよう) そう思い、ロードを左側に傾けた。が、すぐにブレーキを握った。

総合運動公園も閉鎖になっていた。テニスコートなどの施設は閉鎖になっているだろうとは思っていたが、駐車場もゲートが閉じられていた。

 

  

毎年6月末、「チャレンジヒルクライム岩木山」の表彰式で賑わうこの場所も、ひっそりとしている。

なにか複雑な気持ちになり、そのままスカイラインを目指した。道端の桜は、どの木も花を咲かせていなかった。

黙々と走り続け、やがて「嶽温泉」の看板も通り過ぎると、上り坂も終わる。そのまま少しスピードをあげて一気にスカイラインのゲートまで走り抜けた。

 

 

スカイラインにも、立入禁止の案内板が立っていた。

反対側の「アスリートの路」の方に下ってみる。桜のトンネルは、残念ながら全く咲いていなかった。

それでもいつものようにロードバイクを道の真ん中に立てかけて写真を撮る。それが決まりだ。

そばに落ちていた桜の折れた枝を、スタンド代わりにしてロードを立てかけようとしたその時、背後に車の気配を感じた。

私はすぐさま、ロードを脇に寄せた。私の目の前を通り過ぎた白い車は、30メートルほど走り停まった。

 

 

(あ〜、写真撮ってからなら良かったのになあ)と自分勝手なことを思いながら、すぐ立ち去るかも…と、しばしその車を見ていた。

白い車から女性が降りてきた。その女性は私の視線を感じたのだろうか。

「なんかしたんですか?」と、突然、声を発した。

私は一瞬躊躇して

「あ、ちょっと休んでるんです」と言った。

「あ〜休んでらのが」

女性は怪訝な表情を浮かべながら、袋のようなものを手にして茂みの中へ入っていく。どうやら山菜か何かを採りに来たようだ。

しばらくは白い車は動きそうにない。ロードなしで写真を一枚だけ撮った。

 

スカイラインの周辺では、まだ見ぬ桜を見つけることもなく、いつもの路でいつもの写真を撮ることもなかった。私は、今来たばかりの路を下ることに決めた。

 

少し走ると、視線の先にモノクロームの風景があった。

 

 

 

情緒ある薄いピンク色の自然もいいが、光が形作るモノクロームの自然もまた美しい。

私は、ふと、カメラバッグにオニギリを入れていたことを思い出し、立ち止まった。食堂や道の駅は避けようと、おにぎりを入れてきたのだった。

誰もいないモノクロームの風景を見ながら、私はオニギリにかぶりついた。

 

 

 

 


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