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2020-05-07

ツール・ド・ツガル / 『アスリートの路』 2020


弘前公園の外濠沿いを走ると、ほとんどの桜は散っていた。

私はロードを車に積んだまま、再び岩木山神社を目指した。先週は麓のアネッコからヒルクライムしたが、今日は神社のそばにある百沢温泉まで車を走らせた。

神社の周りの桜は、だいぶ散り始めていた。が、境内にはGWを外出自粛していたと思われる年配の方々の姿があった。

私は百沢温泉の駐車場に車を停めた。百沢温泉は、この辺りでも熱い湯で知られる。ツーリング後のあの熱い温泉を楽しみにして、私は先週と同じ道を走り始めた。

 

山のあちこちにピンクの塊が見える。道沿いにも、薄いのやら濃いのやら、いろんな樹種の桜が花をつけていた。

「はちみつ坂」の手前に、美しい景色があった。薄いピンクの桜と、濃いピンクの芝桜が岩木山を背景にコラボレーションしている。

 

ダブルの桜と津軽富士

 

快晴の蒼い空も、二つのピンクを際立たせていた。

 

「はちみつ坂」を超えると、道の両脇に桜の花が並び始めた。中にはかなり散っている木もある。

先週同様に、観光協会も総合運動公園もまだクローズしたままだった。しかし、コロナウィルスによる休業要請が終了したせいか、平日にもかかわらず多くの車が抜き去っていく。

嶽温泉を過ぎ、やがて青い「岩木スカイライン」のゲートが近づいてくると、ピンク色の長い列が視界の左側に入ってきた。

 

長く続くピンク色の『アスリートの路』は、道の両脇から桜が弧を描く「桜のトンネル」で、一直線に坂が200mほど続く。

『アスリートの路』という名前は、私が勝手につけた。3年前の【美しい村岩木日本で最も美しい村 岩木フォトコンテスト】で入賞したときの作品タイトルだった。

 

( Instagramより →【美しい村岩木日本で最も美しい村 岩木フォトコンテスト】)

 

だから『アスリートの路』なんてカッコつけた言い方をしているのは、恥ずかしながら自分だけである。

 

(早朝ならまだしも、昼過ぎであれば先客のフォトグラファーや観光客がいるだろうな…)と思ったが、案の定、車が2台ほど停まっていた。

桜の花は、ほぼ満開に近かった。しかし、太陽が真上にあるせいか、陽が当たっているところは妙に明るく、木の陰になっている部分が暗すぎる。天気が良すぎるというのは、桜を撮るには難しい条件とも言える。

道の真ん中に三脚を立て、低い位置から連写しているカメラマンがいた。周りには御構い無しに地面に這いつくばり、「パシャ!パシャ!パシャ!」と気合が入っている。

(これだけ気合が入っていれば、すぐに終わりそうもないな…)

私は先週同様に、ロードバイクを道の中央に置くことを諦めた。脇の桜の木にロードを立てかけ、先客の邪魔にならぬよう撮ってみたが、どうにも様にならない。

「今日は天気が良すぎて難しいですね」と先客のカメラマンに声をかけてみた。

「んだっきゃなあ」とカメラマン。

「望遠で圧縮して撮ってるんですか?」 「んだ!圧縮した方が桜が良く見えるはんでの」

「200mmくらいですか?」 「んだ!200mmだ」

機材のウンチクに弱い自分でも、このくらいの会話はできるようになった。会話の後に和気あいあいになるというわけでもなく、カメラマンは連写を続けていた。

トンネルの向こうに、人影が小さく見えた。親子連れだろうか。私は、ロードをフレームの中に入れずに、一枚だけ撮った。

 

 

X100Fを小さなショルダーバッグに仕舞いこみ、私はこの坂をそのまま下っていった。

先ほど見えた小さな人影は、小さな女の子を二人連れた家族だった。

そういえば、数年前は娘を連れて、よく「この路」で写真を撮ったっけ。マウンテンバイクの後ろに娘を乗せて、この辺りを走ったっけ。

 

今日、長い休校期間が終わり、久しぶりに制服を着て学校に行った。

休校中はYouTube三昧。たまりまくった宿題を夜中の2時くらいまでかけて、半泣きでやっていた。

そんなインドア娘だから、もうしばらくは「この路」を一緒に走ることもないだろう。

 

そんなことをぼんやりと考えながら、下ってきたばかりの『アスリートの路』を上る。

カメラマンはまだ地面に這いつくばっていた。

「お疲れ様です」と、すれ違いざまに声をかけると、「おう」と、カメラマンは一言だけ返し、ファインダーから目を離すことはなかった。

 

私は『アスリートの路』を振り返ることなく、百沢温泉に向かってロードを走らせた。

 

 


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