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2020-07-23

「 髪を切った日 」 / デジタルカメラマガジン8月号〈デジタルフォト部門〉入賞


 

娘は、保育園から小学5年生くらいまでは、ずっと髪を伸ばしていた。

6年生のときに伸ばしていた髪を切った。それでも、ボブスタイルだったので髪はまだ顎のラインまであった。

今春、中学生になり、新しく増えた友達の影響もあったのだろうか。「もっと短くしたい」と言った。

 

髪が長かった小学2年の頃  岩木山神社にて

 

6月、初めてショートヘアにした。

写真仲間で美容師をしているコタリナのユーキ君に切ってもらった。前髪も梳(す)いてもらい、かなりボーイッシュに雰囲気になった。娘も随分とお気に入りのようだった。

自宅に帰った頃は夕暮れ時で、部屋の中はすでに暗くなっていたが、シュートヘアにした記念に写真を撮ることにした。

 

 

写真には「ポートレイト」と「スナップ」というジャンルがある。

一般的に「ポートレイト」といえば、被写体であるモデルが、撮られることを意識しているもの。「スナップ」は撮られることを意識していない、つまりは知らぬ間に撮られている写真。ということらしい。

そのくらいの違いは、素人の自分にもなんとなくはわかるけれど、でもこれまで自分が撮ってきた写真はどちらなのか?と言われると、よくわからない。

「モデル撮影会」も参加したことはないし、「隠し撮り」でスナップを撮ったこともない。

「人を撮る」とすれば、その相手はほとんどが娘(や娘の友達)で、なんとなくポーズを取っている写真もあれば、なんとなく歩いている写真もある。天を仰ぎながら「ガハハ」と笑っている写真もある。

だから「ポートレイト」のようでもあるけれど、「スナップ」のようでもあって…でも、撮っている自分はそんなことを意識したことはない。

 

簡単に言ってしまえば、娘を撮る写真は自分にとってすべて「記念写真」である。「記録写真」と言ってもいいかもしれない。

将来、娘が「自分の小さかった頃の写真」を見て、懐かしく思ってくれたらいいな…そんなふうに思いながら撮っている。

家族や友人を撮るとき、おそらく誰もがそんな思いで撮っているのではないだろうか。

「ポートレイト」や「スナップ」というのは、写真業界が作り上げたジャンルにすぎないのだ。

 

 

少し暗い部屋の中で、イームズの丸い椅子に娘を座らせた。

座面が小さいので、身体を小さくかがめるポーズで撮った。

ショートヘアになったので、幼くなるかと思いきや、その表情は少しばかり大人びている。彼女の視線が、ファインダー越しにこちらをじっと見ている。

(これは「ポートレイト」だ)と、初めて思った。

大人になり始めた女性に対しては、「スナップ」ではなく「ポートレイト」という言葉の方が似合う。そう思った。

 

 

 

初めてショートヘアにした日の記録。

初めてポートレイトを撮った日の記憶。

 

その日の記録と記憶が、デジタルカメラマガジン8月号〈デジタルフォト部門〉で入賞していた。

 

「 髪を切った日 」

 

 

「優秀賞」とはいかず、「佳作」ではあったけれど、選者の写真家〈大和田良 先生〉が以下のような講評を書いてくださった。

暗い画面の中でうずくまるようにして座るシルエットと、長い足と腕のラインに、成長していく身体の美しさが表れているようです。画面左のカーテンの膨らみからは風を感じ、豊かな物語を思わせます。

 

記録と記憶が、記念の一日になった。

*入賞作品はこちらから → デジタルカメラマガジン8月号〈デジタルフォト部門〉

 

 


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