【 りんご前線 – Hirosaki Encounters 】弘前れんが倉庫美術館 ①
「これ、村上先生の作品も展示されるから行ってみて」
昨年の秋、銀水食堂でバッタリ会った木村先輩から展覧会のチケットをいただいた。
先輩はごく最近、赤いちゃんちゃんこが似合う年齢になったが、その時も赤いジャンパーを羽織っていた。赤はお気に入りらしい。
娘が冬休みに入ったら一緒に行こうと思っていた。
ところが冬休みに入った途端に津軽は大雪。連日雪かきに追われる始末。
展覧会のことが頭から抜け落ちそうになっていたが、大雪でも忘れぬよう大切に財布に入れておいた。
少しだけ雪も落ち着いた金曜日、娘と一緒に美術館へ向かった。
「弘前れんが倉庫美術館」には駐車場がない。しかし土手町界隈には多くの駐車場がある。
そのどこかに車を停め(または、最寄りの駅から歩いて)弘前の街を探索しながら訪れてほしい…というのもこの美術館のコンセプトのひとつ(だったかな?)。
娘と一緒に土手町からの散歩も歩くない…と、思ったのも束の間。
猛吹雪。
駐車場から美術館まで歩くというだけでも困難を極めた。
途中の凸凹道で娘は派手に転んでいたし、美術館の敷地に入れば雪やぶを漕いで歩かねばならなかった。
さすがに最近のこの天気で、平日ともなれば客はいないのではないだろうか…と思ったが、予想通り館内はガランとしていた。
ロッカーに荷物を預けて身を軽くし、巨大なガラスの自動ドアを抜ける。
ここは美術館としては珍しく、館内の撮影はOKである。(ただしフラッシュや動画はNG)
しかし会場に展示された作品を写真に収めて、それをSNSなんかに投稿するのは少々気がひける。
いや、せっかくだから撮ってしまおう。でも、やっぱりヤメようか…などと思いながらiphoneでパシャリ。
自分が参加する写真展でも、誰かがその様子を撮ってSNSに投稿すると、嬉しいときもあれば、(え?)と思うときもある。
どんな風に投稿されるかで、撮られる側の気持ちも変わるということか。
SNSが生活と切り離せなくなった現代においては、作品を展示する側もこれまでと同じ考えでは通用しない時代になったのかもしれない。
1階フロア。
弘前市の名誉市民でもある洋画家「佐野ぬい」の青い作品が並ぶ。
佐野ぬいの作品を「青い」と表現するのは、稚拙であり安直であるのは重々承知だが、美術館に並ぶ作品を批評するだけの知識も感性も持ち合わせていないのも重々承知。
正直、ブログで美術鑑賞のことを書くのは荷が重い。だから批評は無し。
「佐野ぬい」に続き、「小林エリカ」「斎藤麗」「クリス・ウィン・エヴァンス」と弘前ゆかりのアーティストの作品が並ぶ。
1階フロアを一周し、2階フロアへと向かう。エレベーターを使わずに階段を上る。
階段や手摺りの質感が美しい。県美よりも好みだ。
2階フロアが近づくにつれ、心臓の鼓動が速くなっているのを感じていた。
期待と不安、そして畏れを感じていた。
木村先輩から展覧会のチケットを受け取ったときから、それを予感していた。
展覧会に足を運ぶまでに時間がかかったのは、大雪のせいだけではなかった。
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