ツール・ド・ツガル / アートを巡る旅「齋藤咲子個展」
以前までは、休みの日に天気が悪ければロードに乗ることはできなかった。
自由人になった現在は、天気の良い日を選んでロードに乗ることができる。
いつでも好きな日に乗れる…となると、案外、乗らないことに気づく。
こりゃまずいと思い立ち、先日五所川原まで走った。
五所川原までツーリングするということは、ほとんどない。
走る距離としては中途半端だし、山や海沿いに比べ風景は少々退屈だ。
西からの向かい風を受けながら国道101号を走る。
海からはかなりの距離があるので潮の香りはしない。
栗の花の匂いがする。この時期特有の、むせるような匂い。
しかし夏を感じる匂いでもある。
巨大なドームが見えてきた。
アンサンブルの練習に来るたびに目にするドームだが、すぐ近くに来たのは初めてだった。
こんなデカいドームの屋根がパックリと開くのだから、現代の技術はスゴい。
ドームの上の蒼い空を見上げながら、市内へとロードを走らせた。
かつて、五所川原にはいくつかの映画館があった。
ちょうど50年前、ブルースリーの『ドラゴン危機一発』を観にきたことがあった。
それが「グリーンハウス」という映画館だった。「銀映」という映画館と2棟並んだ造りだった。
その建物が現在でも残っている。
建物そのものが、当時のモノなのかはわからない。随分とキレイなので、建て直したのかもしれない。
そして、その建物は現在ギャラリーとなっていた。
左右に分かれた建物には、ギャラリーとカフェが併設されている。
かつて映画を観たスペースは、演奏会などを開くことができるホールとして機能している。
ギャラリー「FOREST BLUE」にて、個展が開催されていた。
この個展を拝見するのが目的で、五所川原までロードを走らせたのだった。
会場に入ると、ひときわ目立つ背の高い女性がいた。個展を開催した齋藤咲子=パピコさんだ。
ツーリング姿の自分に怪訝な表情を浮かべたパピコさんだったが、私がマスクを外すと「あっ!」という笑顔に変わった。
【 齋藤咲子個展 Ave Maria 】
齋藤咲子=パピコさんは、ヒーリングアートやドットアートなどの作家として活躍されている津軽出身のアーティスト。
パピコといえばアイスが有名だが、津軽でパピコといえば、咲子さんの方が有名である。
パピコさんとの出会いは、もう7〜8年前にもなる。
私が写真仲間たちと一緒に開催した写真展に、パピコさんが来てくださり、その時にいろいろとお話をしたのが最初だった。
年齢はだいぶ離れてはいるが、彼女は中学・高校と私の後輩だった。
そして、そのときに絵を描いているということも知った。
彼女が描くドットアートは、繊細で美しい。
作品を目の前にすると、その細かな仕事に目を奪われる。
気の遠くなるような時間、そしてそれを成し遂げる執念すらも感じる。
最近は、デジタルでサラっと描き上げるようなポップアートも多い。
勿論それらを否定することはないけれど、やはり自分自身の手で長い時間を要して描く作品には心を打たれる。
久しぶりにお会いし、いろいろなお話もさせていただいた。
クールに見えるパピコさんだが、話し出すと、懐かしい西北五特有の強烈な津軽弁が炸裂する。
「クールな表情して」とリクエストすると、
「ワ、写真撮らいるの、マネんだって〜ガハハ〜」
と笑顔で応えてくれた。
パピコさんの個展を拝見して、自分の中で何かモゾモゾとするものがあった。
自分もそろそろ何か動き出さないといけない。
そう思った。
【 お知らせ 】
7月16日〜18日。弘前市立百石町展示館にて「今。切り撮る」展 が開催されます。
今回、ゲストとして出展させていただくことになりました。久しぶりの写真展出展です。
ご来場、お待ちしております。
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