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2017-09-10

NHK全国音楽コンクール 東北大会引率記


 

土日、「NHK全国音楽コンクール」通称「Nコン」の東北大会に行ってきた。

娘の学校が青森県の代表ということで、名取市の文化会館で開催される東北大会に進むことになり、私も初めて引率者の一人として参加した。

土曜日の朝早くから学校で練習。

朝一で、私が発声練習や体操の指導をすることに。

この一ヶ月。県大会が終わってから、週に一度、発声や発音の指導に携わった。

指導の効果があったのかどうか、正直なところ全くわからないのだが、先生や保護者の皆さんも、だいぶ歌声が柔らかくなったと話してくださっていた。

私自身、彼らの練習の演奏を聴いてみても、荒削りだった演奏がかなりまとまってきたな…という印象。

私の発声練習が終わった後、先生の練習が昼過ぎまで続いた。

最後の練習とあって、先生の指導にも熱が入る。

練習の間に、引率者父兄が荷物をバスに積み込んだり、昼食の用意をしたりと慌しく動く。

皆さん慣れているので、とても手際が良く、引率に関して初心者の私は、もう指示されるままに動くかんじだ。

練習も終わり、いよいよバスに乗り込む。

校長先生はじめ、お見送りの方々がたくさんみえていた。

私は、元気にバスに乗り込む子供達をビデオに撮った。

みんないい表情だな。

こうして、東北大会に向かうW小学校チームを乗せたバスが、弘前を出発した。

私はバスの一番後ろに陣取り、お弁当やおやつなどを渡す係。

分刻みのタイムスケジュールを保護者役員の皆さんが作ってくださり、本当に頭が下がります。

途中、何回かの休憩を入れながら、バスはスムーズに目的地、多賀城市にあるホテルに着いた。

すでにバスの中で夕食も済ませているので、ホテルではすぐ寝る準備。

3人から5人の部屋に分かれ、各部屋には保護者が一名ずつ。

私の部屋は狭い和室で、私以外は男の子が二人。

翌朝、5時頃には起きなくてはならないので、シャワーをしたらすぐ寝る予定だったのだが、やはり修学旅行状態なかんじ。

もうかなりうるさい。

「明日、早いぞ!早く寝ろ!」

疲れていたのか、いったん布団に入るとあっという間に寝てしまった。

自分はというと、疲れているはずなのに、何か変な緊張感でもあったのか妙に眠れず。

結局、夜中に起きて、夜風にあたりながら一人外をみる。

大会が開催される名取市も震災で大きな被害を受けた街だが、この多賀城も甚大な被害を受けた街だ。

窓の外は暗く、海がどの方角にあるのかはまるでわからなかったが、なんとなく海の方に向かい明日の演奏に気持ちを馳せた。

隣に寝た4年男児の強烈なパンチを何度も浴びながら、ほとんど眠れず朝を迎えた。

朝食を済ませ、朝の練習をするために会場近くにある中学校へ向かう。

練習場所をお借りした中学校では、他の参加校も練習をしていた。

各県を代表してきているだけあって、声の響きが素晴らしい。

おそらく子供たちも「上手いなあ〜」と思いながらプレッシャーを感じているに違いない。

先生が会場の下見をするために、練習を30分ほど抜けたので、その間、私が練習を受け持つ。

ここまでくると、私が何をするということもできないので、おやつを食べ休憩しながら、なるべくリラックスできるように話をするくらい。

練習を終え、大会会場に向かう。歩いても5分ほどで着く。

名取市文化会館は、建築家槇文彦氏の設計による、素晴らしい建築。

時間がなかったので、建物の全容を見ることはできなかったが、ガラスをふんだんに用いたモダンな建築だ。

ホールに入ると、すり鉢状になった造りをしていて、音が気持ちよく響きそうだ。

こんな素敵なホールで歌えるというだけでも、東北大会に出場できた各校の子供たちは幸せだと思う。

 

会場に入ると、あとは係の方に誘導されながら、分刻みのタイムスケジュール通りに動くだけだ。

我々保護者はリハーサル室まで一緒についていく。

リハーサルを終えた後、ペットボトルのお茶で喉を潤す。

そういったきめ細かいところまで、保護者役員の方々が綿密に準備をしているのには、感服した。

子供たちと別れて、我々もホールに入る。

県大会とはまるで違い、客席はかなりの観客で埋まっていた。

我々が入ると、間をおかずに子供たちがステージに入場してきた。

県大会の時とは並び方を変え、扇型になっている。

娘が真ん中の一番前にいた。

演奏が始まった。

課題曲。

私が指導したときも、歌いだしの発音だけでも幾度となく練習をした。

特別に凝ったことをせずとも、聴く側を「おっ」と思わせる出だしをしたい。

いい歌いだしだ。

緊張した様子もなく、いつもの演奏ができている。

細かいところを言えば、まだまだなところはあるのだろうが、私は何も考えることなく彼らの歌う音楽を聴いていた。

自由曲。

最初聴いたときは、こんな難しい曲を彼らが歌えるのだろうかと思っていた。

県大会の彼らの演奏の録音を何回も聴き、何度か指導に携わっているうちに、私も曲を覚えてしまった。

いつしか、知らず知らずのうちに、この曲を口ずさむようになっていた。

無事に彼らの演奏が終わった。

すぐにホールを出て、彼らを迎える。

ホールでは距離があったので、表情はうかがい知れなかったが、演奏を終えた彼らはとてもいい表情をしていた。

ロビーで演奏を終えた彼らと先生たちの記念写真を撮る。

公式の記念撮影はないので、これは私の重要な役割だ。

いや、ほんといい顔をしているなあ。

子供たちは他の学校の演奏を聴くためにホールへ戻る。

我々は、3階に行って昼食の準備をする。

途中、ロビーでモニターに流れる他の参加校の演奏の様子を聴いた。

さすがに上手い。

声の質が全く違う。

東北は全国の中でもトップクラスのレベルを誇る地区大会だ。

とくに福島県(中でも郡山市)と岩手県は群を抜いている。

この中で入賞するのは並大抵ではないな…と思いながら3階へ向かった。

子供たちが好きそうなサンドウィッチを用意した。

演奏を聴き終えた子供たちが来た。

30分足らずで、閉会式が始まる。

県大会に比べ、プログラムの進行がスピーディだ。

みんなで急いで昼食を済ませ、再び会場に戻る。

遅れることなく、閉会式が始まった。

主催者の挨拶、審査員の講評がある。

声楽家の審査員の方による講評は、子供たちにもわかりやすく、そして指導する側にもとても勉強になる素晴らしい講評だった。

審査発表のときがきた。

出場15校のうち、銅賞は3校、銀賞2校、そして全国に進める金賞は1校のみ。

銅賞からの発表。

ここでは呼ばれなかった。

この段階で、すでに郡山と岩手の常連校が呼ばれている。

銀賞の発表。

ここで呼ばれなかったら…もう厳しいかもしれない。

ここでも呼ばれなかった。

銀賞も岩手の学校だった。

残るは金賞のみ。

隣に座っていた、お母さんは「え、どっち?どっち?」と囁いていた。

私は、この時点ですでに覚悟はできていた。

金賞の発表。

やはり呼ばれなかった。

最終的に金賞を獲得したのは、ここでもやはり郡山の小学校だった。

郡山の小学校、恐るべし!である。

6校以外の9校は、すべて奨励賞であった。

全体での合同合唱を終えて、ロビーの外に出た。

外に出てきた子供たちの表情。

悔しそうな顔をしている子もいれば、半泣きの子もいる。

観覧に駆けつけていた父兄の皆さんも一緒になり、先生の前に集まった。

会場の外は青空だった。

先生が子供たちを集め、お話をしてくれた。

今日の演奏が、ほんとうに素晴らしかったこと。

これまでの厳しかった練習が、これからの自分たちにきっと役に立つこと。

そして、今回の結果をうけて、歌うということを決して嫌いにならず、またこれからのステージに向けてさらに頑張っていって欲しいということ。

私の横で、観覧にいらしていた保護者の方が号泣していた。

6年生の娘さんのお母さんなので、なおさらなのだろう。

先生の話が終わり、みんなでバスに向かう。

いつも一番元気な5年生の女の子が思いっきり泣いていた。

娘は「こんなに練習したのに..ちくしょー!」と言っていた。

バスに乗り込むと、思い耽る間もなく弘前に向けて出発した。

一時間ほど走り、途中の長者原のサービスエリアでお土産などのお買い物をした。

子供たちは、すっかり元気な表情に戻っていた。

弘前までの道中、暮れかかるバスの外の光景を眺めながら、私はぼーっとしていた。

自分が演奏をしたわけでもないのに、妙に心にぽっかり穴が空いた感じ。

日頃の子供たちの頑張りを見てきたので、なんとか賞を獲らせてあげたいな…という思いもあったのだが。

でも考えてみると、この1ヶ月ほどで、東北大会出場という最高の賞をいただくことができ、その東北大会の場では全く歯が立たないという経験もし。

彼らにとっては、いい経験ができたのではないだろうか。

音楽に順位をつけるのは、誰も本意ではないだろうが、コンクールというのはそういう場である。

でも賞に入れなかった、彼らの演奏を素晴らしいと感じてくれた人もいるだろう。

きっと号泣していた、あのお母さんにとっては金賞だったに違いない。

 

私の頭の中には、何度となく自由曲の最後のフレーズが繰り返し流れていた。

〜そのとき ぼくが そばにいる〜

〜いつでも ぼくが そばにいる〜


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コメント2件

  • アバター Masaru より:

    「こんなに練習したのに..ちくしょー!」
    娘ちゃん、ますます好きになりましたよ〜♪

    • ferokie ferokie より:

      阿保さん、応援ありがとうございました!まだまだステージあるので頑張ります!^^

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