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2018-03-11

3 . 11


2011年 3月11日の朝、私はソウルにいた。

朝7時頃にホテルを経ち、日本に帰るために「仁川国際空港」に向かった。

美しい朝焼けが、運河沿いにかかる橋を照らしていた。相乗りタクシーの中で、赤く染まる街並みをぼんやり眺めながら、これから帰る日本、青森へ気持ちを馳せていた。

数時間後、「機上の人となった」という言葉を使うほどのこともなく、昼過ぎには青森に着いていた。やはり直行便は早い。

そして14時頃には、弘前に着き事務所のPCの前に座っていた。「世界も近くなったものだなあ」などと考え耽っていたのかもしれない。

PCの画面を見ていると揺れを感じた。

「ん?地震だ」

デスクの前で、揺れが収まるのを待った。

しかし、次第に大きくなる。

いつまでも揺れは収まらない。

電気が消えた。

少しだけ揺れが収まったところで、1階の売り場に下りた。

すぐにまた揺れ始めた。

天井に幾本もある足の長いスポットライトがビュンビュンと音を立ててしなっていた。

何か得体の知れない…ただ事ではないことが起こったのを感じた。

外に出てみると、目の前の交差点の信号が全て消えていた。

はたして、どこで発生した地震なのか。電気はつかぬままで情報もない。

そのとき、店に来ていたお客さんが携帯を見ながら言った。

「震度7だって!」

宮城の方で、震度7を記録したらしい。三陸沿岸で震度7であれば「津波」が起きるかもしれない…と、ふと思った。

第一にやはり家族のことが心配だった。何度も携帯の番号を押し続け、なんとか連絡を取ることができた。

スタッフもそれぞれの家族のことが心配だろうし、おそらく店を開けていても客が来るとは思えなかったので、店を閉めることにした。

しかし電動式だったシャッターが降りない。さすがにシャッターを開けたまま帰るのは、セキュリティ上問題があるので、スタッフみんなで大きなロッカーを2階から下ろして入口に置いた。

まもなくして、妻が車に娘を乗せて店の近くまで来てくれた。

二人とも大丈夫そうな様子を見て安心したのも束の間、妻が「見て、これ」という一言の後、車のカーナビに映っていたテレビの映像を見て、私は自分の目を疑った。

そこには、名取市の田園地帯を、濁流とともに流れている家々や車の映像が流れていた。

逃げ惑う、ミニカーのような小さな車が見えた。黒い大きなうねりが、勢いを止めることなくすべてを飲み込んでいった。

その日の夜は、暗闇の中、ろうそくを灯し、みんなで毛布にくるまり眠れぬ一夜を過ごした。

ときどき車の中に入り、カーナビのテレビを見た。

街が壊滅していく映像を目の当たりにしながら、自分のような商売はこの先もうダメかもしれないと思った。

嗜好品の一つである、ファッションなどには誰もお金を使わないだろうと思った。

多くの人の命が失われているだろう映像を見ながら、自分と家族のこの先の…得体の知れぬ不安を身体で感じていた。

あれから7年が過ぎた。

 

 

幸い、今もあのときと同じ仕事をしている。

もちろん、一昔前のような買い方をする人は少なくなった。あの日以来、自分自身の生き方を変えた人も多くいるだろう。徐々に変わってきた人もいるかもしれない。

私たちのような洋服屋も、何を揃えたら今の世に中の人たちに応えることができるのだろうか?…そういうことを考える時代に変化した。

3.11を迎えると、「改めて復興を考えよう」「原発を考えよう」と、思い出したかのようにメディアが騒ぐ。

テレビでも特集が組まれる。SNSでも多く人が発信する。

おそらく私自身のこのブログもそのひとつに違いない。

あのとき、家族や友人を亡くし、家を失い、無力感に襲われ、悲痛な思いをされた方々。

被災地のそういう方々に寄り添うことはできたとしても、本当につらい思いというものを理解するのは難しいことかもしれない。

しかし、あの日、電気のない暗闇の中にろうそくを灯し、毛布にくるまった、あのときの気持ちは忘れずにいたいと思う。

震災の後、音楽やスポーツなどを通じて被災者を元気づけよう!というイベントもたくさん行われ、今現在もいろいろなカタチで継続しているものもあるようだ。

ただ、自分が携わるようなファッションやアートも、きっといろんな人たちを元気にするチカラを持っている、と確信している。

仕事にしている以上、店に足を運んでくださる方々に、そう思ってもらえなければやる意味はないし、稼ぐこともできないと思っている。

自分のすぐまわりにいる人たちを幸せにするためには、まず自分が幸せになる。

そのためにはどうしたらいいのか。

この日が来ると、いつも考える自分がいる。

が、いつも答えは出ない。


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