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2018-03-14

「 ちいさな 約束 」


昨日の朝、娘はなかなか起きなかった。

いつまでも布団の中でグズグズしている。

「ほら、起きろ。7時になるぞ!」

眠そうな目をこすりながら、ようやく起きてきた。

 

ゆっくりと朝食をとる時間もない。

昨夜買っておいたグラタンを食べることにした。

起きたばかりで食欲もないのか、三分の一くらいしか食べなかった。

 

学校へ行く前に「おなかが痛い」と言った。

「まだ時間大丈夫だからトイレに行っといで」と私は言った。

 

しばらくして、トイレから出てきたが、あまりすっきりしなかったようだ。

「学校でしたくなったら、ちゃんとトイレ行けよ」

「うん」

 

あまり元気とは言えない表情で、娘は玄関を出た。

「あっちの玄関にいるから」と私は言った。

 

「あっちの玄関」とは、もうひとつの玄関のことだ。

10年ほど前、増築した小さな住居にも玄関をつくった。

そこの玄関から、学校が見える。

登校していく、子供たちの姿が見える。

 

 

横断歩道を渡り、向こう側の通りを歩く娘の姿が小さく見えた。

こっちを振り向いてくれたら手を振ろうと思ったが、娘は俯き加減のまま校内に消えていった。

 

9時半ころ、仕事に行こうとしたら学校から連絡があった。

娘が嘔吐したらしい。

授業中、気持ちが悪くなりトイレに向かう途中で吐いてしまったようだ。

 

学校に迎えに行くと、娘は保健室にいた。

「パパ」と娘は言った。

 

娘を自宅に連れて帰った。

幸いにも、妻の仕事が休みだった。

たまに二人でのんびり過ごすのも悪くはない。

 

夜、帰宅すると娘はケロっとした顔でiPadをやっていた。

「ゲームのやりすぎで目が疲れて具合悪くなったりするんだから、今日はゲームすんなよ」

と言っといたのだが。

 

病気で学校を休んだときの、あの妙なウキウキした気分は、わからないでもない。

自分も小さい頃は、鰺ヶ沢中央病院の売店で「ウルトラマン」の人形を買ってもらえるのでは?とワクワクした。

人形が無理でも、帰り道にある本屋で「ドラえもん」のコミックを買ってもらったりした。

 

今朝も相変わらず、寝起きが悪い。

それでも、具合は悪くなさそうだった。

シスコーンとイチゴを食べて、娘は元気に学校へ行った。

 

「あっちの玄関にいるから」と私は言った。

横断歩道を渡り、向こう側の通りを歩く娘の姿が小さく見えた。

 

娘がこっちを振り向いて手を振った。

私も大きく手を振った。

校内に入る直前に、再び振り向いて手を振った。

私も、再び大きく手を振った。

 

 

毎朝、出がけにする「小さな約束」

何年前から続いているのか、忘れてしまったけど。

高学年になれば、娘も恥ずかしくなり、ヤメてしまうかもしれない。

 

毎朝、出がけする、ほんの「小さな約束」

それが守られた日は、なんとなく気持ちの良い一日の始まりになる。

 


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