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2018-06-08

ツール・ド・ツガル 十和田湖一周 / 『憩い』のナポリタン


「ヒルクラ」も近いということもあり、チャリネタが多くなってきた。先週に続いて今週も平日の休日があったので、ロングライドを計画。前回は南方面の大館へ行ったことだし、今回は東か北にしよう。

北ならば十三湖か。または車で十三湖まで行って、そこから龍飛崎も考えたけど、朝5時とかに出発しないと娘の下校時間に間に合わない。東ならば、酸ヶ湯か十和田湖。こないだ酸ヶ湯行ったし、久しぶりに十和田湖に行ってみようか。弘前からの自走だと今の自分にはちょっとキツいが、虹の湖あたりからなんとかなるかも。

そんなことを計画しながら寝たはいいのだが、朝に娘を登校させた後、二度寝してしまった。毎度毎度、自分のアホさ加減には呆れてしまう。

前回「スランプ」気味な自分のことを書いたが、実のところ全く抜け出せておらず、早く寝たつもりが寝つけなかったのだ。歳のせいもあるのだろうか、11時頃に寝ても2時頃に目が覚めてしまうことが多い。そのあとにすぐ眠れればいいのだが、1時間くらいモゾモゾ。そんなことをしているうちに今時分は空も白んでくる。

そのせいか熟睡感に乏しく、つい二度寝。予定の出発時間を遥かにオーバー。とりあえずジャージに着替えて、カメラや小銭入れなどを準備して、チャリを車に積み込みとにかく車を出してしまおう。遥か彼方にうっすらと霞んで見える八甲田方面に向かって走りだした。途中、ローソンでおにぎりとアイスコーヒーを買って朝食を頬張りながら東へ進む。

自宅から自走した方が、トレーニングになるのは明らかであるが、こうやって朝食をとりながら車を走らせるのが好きだ。そして帰りも乾いた身体をアイスコーヒーで冷やしながらのんびり車を走らせるのも好きなのだ。

本来の予定であった虹の湖をそのまま通り過ぎ、十和田湖まで向かった。情けないけども、ここは割り切って「滝の沢展望台」から十和田湖を一周しよう、ということに決めた。チャリを始めた5年くらい前だったか、チャリの先輩のアニキとチィ先輩の3人で十和田湖一周したっけ。そのときは、チィ先輩の車に同乗して、滝の沢展望台から一周したのだった。二人に全くついていけず、最後の滝の沢の激坂では顔から火が出るくらい熱くなり、そして脚が何度も止まった。はたして今回はどうだろうか。

滝の沢展望台に着いた。車に積み込んでツーリングに出かけるのは慣れているので、到着してから走り出すまでは早い。周りにまとわりつくアブたちを払いながら「御鼻部山」に向かって走り出した。気温は下界とそんなに変わらず26度くらいあったが、自然が作り出す緑の木々のアーケードは心地よい。

路肩に駐車している車が結構いる。山菜取りに来ているのだろうか。熊よけの鈴の音やラジオの音があちらこちらから聞こえてくる。アップダウンをしばらく繰り返すと、延々と続く上りに入った。「滝の沢展望台」から「御鼻部山」まではおよそ7.5km。標高差で言えば、岩木山ヒルクライムの半分もないかもしれない。とにかく足を止めぬよう淡々と漕ぐ。

唯一立ち止まるのが、岩木山を展望できるところだ。ただ、今回は残念ながら、遥か向こうの岩木山は霞の向こうにあり、その姿を見ることはできなかった。そこからまた、何十分か淡々と漕ぎ続けると「御鼻部山展望台」の標識が見えてきた。キツかったけれども、なんとかいいペースで上れた気がする。

御鼻部山展望台

展望台の駐車場にはトイレがある。朝から用を足していなかったので、ここで済ませてしまおうと大用の便座を開けると、中から「ブゥ〜ん!」とデカいハエが数匹襲ってきた。いやあ〜山のトイレは怖い。

「御鼻部山展望台」からの十和田湖を眺めたら、あとは一気に「子ノ口」まで降り続ける。途中、いたるところにピンクや紅の花々が咲いていた。そして石の壁を覆う緑の草が色鮮やかだった。下りきると、湖の水面とほぼフラットになる。波はなく、穏やかな湖面がこれまた鮮やかなリフレクションを映し出していた。「子ノ口」で5分くらい休憩してすぐ走り出した。

「子ノ口」から「休屋」までは、そんなに距離はないが、ルートは二つある。厳しい坂のないトンネルを通るルートか、12%ほどの厳しい坂が続く「敢湖台」ルートを選択するか。ここはもちろんトレーニングも兼ねるということで、坂を選択。ルートラボで見ると「御鼻部山」へ向かう坂に比べると大したことがないように見えるのだが、これがなかなかどうしてけっこうな激坂である。

敢湖台

それでも、ここでも脚を止めることなく上り切ることができた。当然スピードは遅い。でも休まずに上り切るのが大切だ。「敢湖台」に到着すると、母娘と思われる二人がお弁当を広げていた。青い十和田湖と緑の木々に囲まれながら、お弁当。そんな微笑ましい光景に、自分も腹が減ったのを自覚して、一気に「休屋」まで下り走った。

「休屋」では必ずと言っていいほど「憩い」という喫茶店で昼飯を食べることにしている。最初の頃はカレーライスが多かったけど、ここしばらくはナポリタンが多い。店内に入り、一息ついてメニューを見る。ナポリタンはメニューにないのだが、以前までは壁に「ナポリタン」と貼ってあった。今回はその貼り紙がなかった。カウンターに行って聞いてみると、対応してくれた男性が奥の方に聞きに行った。「大丈夫です。ナポリタンできますよ」との返事。するとすぐそのあとに「あら〜誰かと思ったら」と憩いのお姉さん(僕らはそう呼んでいる)が顔を出してくれた。メニューにないメニューを頼む人はそんなにいないのかもしれない。

店の周りは以前より随分とキレイに整備されていた。国立公園なだけあって、環境省が整備しているらしい。店の目の前も都会的な広場に生まれ変わっていた。そして店内も、カヌーのレセプションが設けられたりしていて、少しオシャレな雰囲気になっていた。

私はここで初めて、車の中に携帯電話を忘れたことに気付いた。しょうがないので、十和田湖の観光案内本などを見ながらナポリタンを食べた。ここのナポリタンは少し炒めたかんじの、懐かしい味のするナポリタンだ。サービスでミズの漬物も出してくれた。あっという間にナポリタンをたいらげて、アイスコーヒーを飲みながら、ぼーっと十和田湖を眺めていた。青森山田高校の生徒がたくさんいた。どうやら遠足で来ているらしい。

私は「憩い」のお姉さんに「また来ます」と挨拶をして、店を出た。山田高校の学生たちの間を縫って、ゆっくりと湖畔を走る。ここに来る度に、いつも気になる蔦の絡まる建物をカメラに収めて、出発地点だった「滝の沢展望台」に向かった。

「滝の沢」まではほぼ平坦な路だ。大きく湖畔をぐるりと走ると、さっきまでいた休屋の建物がすでに遠くに見える。十和田プリンスホテルを過ぎるとまもなく「レークサイド山の家」が見えてくる。「滝の沢」を上る前には、必ずここで呼吸を整える。ここは、小学生の頃、親戚と一緒に泊まりに来たことがあった。泊まり客が自炊できる設備が整った、コテージのようなところだった。今でもそうなのだろうか。ここにお気に入りの大木がある。映画のトトロに出てくるような木だ。初めて一人で十和田湖に来たときも、この木の前で写真を撮った。

新しいスポーツドリンクをボトルに入れて、激坂に向かう。しばらく走ると「滝の沢」と書かれた木の標識がある。そこからが坂の始まりだ。およそ4kmくらいだろうか。アニキたちと初めて上ったときは、苦しくて2度ほど休憩した記憶がある。チィ先輩が佐野元春を陽気に歌いながら、私の前を行ったり来たりしていたっけ。

平坦になる箇所はまったくなく、延々とキツい上りが続く。いくつかあるトンネルが、たまに日射しを遮ってくれると涼しい空気が身体に心地よい。何かを考える余裕もなく、もちろん歌を歌うこともなく、ただひたすら脚を回す。ハンドルにタイメックスの時計を巻きつけていた。何時何分までには上ろうと決めて上り始めたが、すでにその時間もわからなくなっていた。

40分ほど上っただろうか。コンクリートの壁面が見えてきた。確か、展望台が近づいた証拠だ。少しチカラが漲ってきた。遥か向こうに「弘前」と「御鼻部山」への分岐点を示す青い標識が視界に入った。

「あー着いた。とうとう着いた。脚をつかずに着いたぞ」

チャリの先輩たちからすれば、正直たいした坂ではないのだが、今の自分にとっては、上り切れたというだけでも少し自信になった。そしてずっと不安だった脚の痙攣もなく上ることができた。

私は駐車場に停めてあった車にすうーと近づき、黙々とチャリをばらして車に積み込みんだ。そしてシートに深く座り、窓を全開に開けて、何も考えずに坂を下った。


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