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2018-08-17

「NHK全国学校音楽コンクール」青森県大会2018 / 和徳小学校【金賞】受賞!


たっぷりと8時間。途中で目覚めることもなく、久しぶりにぐっすりと眠った気がする。布団からぬけだして居間に行くと、飼い猫のタンポポが窓辺の本棚の上に佇んでいた。私はタンポポを抱きかかえて再び布団に潜り込み、何も考えることなく猫と一緒に丸くなった。

 

16日の朝は5時に起きた。そして娘と一緒に6時20分に学校の体育館に向かった。体育館に着くと、すでに合唱部の子供たちがパートごとに練習をしていた。

前日に顧問の先生に声をかけられた。「明日の朝、私もピリピリしてると思うので、練習の前に子供たちをリラックスさせてもらえませんか?」 昨年の県大会の朝も、子供たちと朝イチで体操をしたり発声練習をしたことを思い出した。

私にできることなど、大して何もない。でもここは子供たちのためにも自信を持って、まずは朝の挨拶から。「おはようございます!」「おはようございます!」と力強い挨拶が返ってきた。

春先、月に2度ほど子供たちのボイストレーニングにおじゃましていた。県大会までは4ヶ月しかない。顧問の先生は曲作りに時間をかけないといけない。まして今年の課題曲は小学生にはかなり難度の高い曲だ。子供たちひとりひとりの発声指導をする時間を作りだすのは難しいらしい。

そこで、ボイストレーニングのお手伝いを先生に相談した。私はもちろん声楽家ではないし、恥ずかしながらまともなボイストレーニングの勉強をしていたわけではない。高校から大学、社会人で何年か歌っていたというだけの人間である。そして、あまり上手くはなかった。ただ、そのせいかもしれないが上手く歌えない子供の気持ちも、なんとなくわかるのだ。

月に2回ほど、3〜4人のグループに分かれて、別室でボイストレーニングを兼ねた練習をした。正直、自分でも手探りではあった。本音を言えば、自分が心掛けたのは「いい声になるように練習する」ことではなくて「自分一人の声がハーモニーを作っている」ということを実感してもらうことだった。全体で歌っていると、それを感じることは難しい。他人を頼りがちになる。これは大人でも同じだ。自分一人の声がハーモニーを構成していることを感じることはアンサンブルの醍醐味であり、合唱の基本になると思う。

本番も2ヶ月ほど前になると、曲作りも本格的になる。私のお手伝いも終了することにした。

そして県大会当日。ステージ直前の朝、私は久しぶりに子供たちの前に立つことになった。体操の前に少しだけお話をさせてもらった。どんなことを言えばリラックスするのか、やる気が燃えてくるのか。前夜にいろいろ考えてはみたが、いい答えは見つからなかった。ひとつだけ子供たちに伝えた。

「思いやりを大切にしよう」 先生が厳しくすると反発する子もいる。やる気をなくす子もいる。部員同士でも仲が悪くなったりすることがある。でも何かあったときに、声をかけてあげたり、助けてあげたり、そして誉めてあげたり。そういった小さな「思いやり」が信頼感を作り上げていく。自分が上手く歌えないところを他の友達が歌ってカバーしてくれるのが合唱のいいところだ。

長い時間をかけて作り上げた信頼関係がなければ「いい演奏」はできない。キツく、厳しかった練習の時間の長さは必ず「思いやり」に比例する。そしてその「思いやり」を感じて歌うことのできる子供たちの「演奏」は、きっと聴く人たちの心に届くはずだ。そのようなことを話した。

大きく体育館全体に広がり体操を始めた。身体をリラックスさせること。でも少しだけ緊張感を持たせること。たぶん昨年も同じことを言っていたと思う。はたして子供たちの気持ちはほぐせたのかどうか….自分自身には全く進歩がないのを実感しながら、体操と発声練習を終えた。

昨日から豪雨が青森県では降り続いていた。各地に警報も出ていた。青森市も土砂降りの予報であったが、リンクステーションに着いた頃はそれほどの雨でもなかった。会場に入れば、事前に作成したタイムスケジュール通りに動くだけだ。昼食会場に荷物を運んだり、リハーサル室を往復したりと、高い湿度の中で身体はぐっしょりとなっていた。

ここまでくると、子供たちも直前のリハーサルで声を出すのが最後。あとはステージまではエスカレーターに乗るが如く移動していくだけだ。子供たちと別れる直前に声をかけた。「今年の合唱部は昨年のようにパワフルじゃないけど、音がとても柔らかく演奏が美しいよ。自信持って歌ってきて!」

この春に卒業した昨年の6年生は、よく声も出るし人数も多かった。その6年生がいなくなった合唱部に、新しい部員は少ししか入らなかった。顧問の先生は、その様子を見て「今年のコンクールは厳しいかな」と言っていた。私もそう感じていたし、他の父兄の皆さんもそう思っていただろう。

Nコンステージで歌える人数は35人以内と決められている。郡山のような合唱の盛んなところは、部員が50名とか70名とかいるらしく、コンクールにはいわゆる選抜されたメンバーで臨むらしい。それに比べ、今年の和徳小は3年生とかの新入部員全員がステージに上がっても25人しかいないのだ。

子供たちと別れて、ホールに入る。ホール1階の中央が和徳小の席だった。引率の方々5人ほどで席に着く。するとすぐ青森市の小学校がステージに入ってきた。和徳小のひとつ前の学校らしい。ステージにある段をすべて使い3列に並ぶ。おそらく規定の最大人数だろう。

演奏が始まった。課題曲は耳に慣れている。人数が多いせいか、やはり音楽が大きい。他の学校の演奏を聴くと、どこも上手く感じてしまうのはいつものことだ。とくに人数が多いところは、そのビジュアルだけで圧倒されてしまう。なかなかいい演奏だったと思う。

いよいよ和徳小の演奏だ。子供たちが自信のある表情でステージに入ってきた。前の学校とは違い、2列に並んでいる。紹介のアナウンスがある間、子供たちはとてもいい表情をして私たちの方を見ている。

課題曲「出発」が始まった。出だしのピアニシモから綺麗に響く。いい出だしだ。全体のユニゾン。前の学校ほどのボリュームはないが、声が柔らかくまとまりがいい。ピアノ、フォルテの強弱のバランスもいい感じだ。今年の課題曲は、音もそうだがリズムがとても難しく、スピード感もあるので発声が浅くなりがちだ。それでもなんとか、落ち着いて歌いきった。

自由曲。「歌声はどこへいくの」全国大会でも多くの実力校が歌っている。おそらく審査員の方々も、これまでに質の高い演奏を耳にしているだろう。人数の少ない今年の和徳小ではあったが、顧問の先生はどうしてもこの歌をやってみたかったらしい。

私も、この自由曲の出だしをボイストレーニングに使ってみた。ひとつのフレーズに低い音から高い音までが使われていて、裏声へのボイスチェンジも技術が要求される。練習の段階では低音があまりきれいな響きではない印象があったが、とてもきれいにまとまっている。

そして日本語がとても美しく聴こえる。先生が一番チカラを注いでいたのが、この日本語の美しさをどう表現するかだった。言葉ひとつひとつに対する気持ちの表し方。子音、母音をどう発音すれば聴く方に伝わるのか。それを子供たちはしっかりと表現していた。

中盤、ピアニシモで4声部に分かれ、音がぶつかり合うところも綺麗に響かせる。そして後半から最後へのフォルテの連続。ソプラノの高音がずーっと最後まで続く。昨年までのパワフルさはないが、しっかりと頭から響いている。子供たちは、大きな音楽を作り上げて演奏を終えた。素晴らしい演奏だった。彼らが、ステージをおりるときの姿は、涙でかすんでよく見えなかった。

演奏後、みんなで昼食をとり、ゆっくりと休む間も無く午後の演奏を聴いた。どの学校も素晴らしい演奏だったが、自分にはどこがどこより上手いとか、評価はできる耳はなかった。それでも、和徳小の演奏は少ない人数ながら、表現の質の良さを感じることができたと思う。あっという間に後半の演奏が終わった。

審査結果までの約1時間、子供たちは皆それぞれ思い思いに時間を過ごしている。私は、なんとなく一人ぼーっと考えごとをしながら過ごしていた。しばらくして、審査員の方々がステージに入る。会場の雰囲気が変わった。

主催者の挨拶、審査員の講評が終わり、いよいよ発表の時間がきた。まずは、銅賞の学校5校の発表。ここでは呼ばれない。続いて銀賞の3校の発表。ここで呼ばれたらアウト。ここでも呼ばれなかった。

「金賞の発表です。金賞は弘前市立和徳小学校!」

「ヤッターーー!!!」 子供たちの声がホールに響いた。

ロビーに出ると観覧に来ていた多くの父兄の方が、拍手で迎えてくれた。今回の引率では、私のメインの仕事は写真を撮ること。とくに今年が最後となる6年生の写真を撮った。親子ペアの写真もたくさん撮った。そして満面の笑みを浮かべた子供たちの全体写真を撮った。今年も、最高の笑顔の子供たちの写真を撮ることができて、自分自身も幸せな気持ちになった。

帰りのバスの中の一番奥の席に座ると、バスはすぐに出発した。私は、青森の街並みを眺めながら、ひどくホッとした気持ちになった。嬉しさよりも、妙に救われたような気持ちになった。

春先からのボイストレーニングが役に立ったのかどうかはわからない。子供たちにとっては、少しだけ普段の練習と違うという気晴らしに過ぎなかっただろう。逆に惑わせてしまうこともあっただろう。

そんなモヤモヤした自分の気持ちを晴らしてくれたのは、子供たちの歌声だった。

「歌声はどこにいくの」 

歌声は、私のこころに届けられたのかもしれない。

 


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