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2018-09-02

『24時間心電図ホルター』はキカイダーの気分


病院に行ってきた。喉や鼻の調子が悪くて病院に行くことはあったが、今回のは違った。ここ2〜3週間、動悸がしていた。夜中に動悸がして目を覚ましてしまうことも多く、睡眠不足にもなっていた。

雨が降っていた。部活に行く娘を学校まで送り届け、そのまま病院に向かう。予定の時間より早めに着いたので、しばらく待合室のソファに座りながら考え事をする。

病院で診察をしてもらうこと、実は嫌いではない。自分の身体がどのように診断され、どんな治療を受け、どんなふうに回復していくのか。いったんまな板に乗ってしまえば、もはや抗うことはできない。そのかんじは嫌いではないのだ。ただ、基本的にビビリなので、診察に行く前にいろいろと自分で下調べをしてしまう。医師から伝えられる衝撃的な一言に備えているのだろう。

「動悸」にもいろいろな要因があるようだ。ストレス、過労、飲酒喫煙、遺伝、加齢。確かに、ここ1ヶ月ほど少々忙しい思いをした。仕事では新しくギャラリーをオープンさせて、それに伴う写真展のお手伝いをしたり、娘の「Nコン」の県大会引率もあったし。ただ、どれも緊張を強いられるところはあるけれど、楽しめるものでもあったから、そんなにストレスを抱えていたわけではないと思う。

更年期からくる不整脈などもあるようだ。更年期による体調不良は女性に多いと言われるが、最近では男性にも多いことがわかっている。まあ、自分も年齢的には立派な更年期であるから、そのへんにも要因はあるのかもしれない。

「本間さ〜ん」と呼ばれた。少し鼓動が早くなった気がした。診察室に入ると、先生はいつものように優しそうな表情をして言った。「ここんとこ、ちゃんと検査してなかったから、血も採って調べましょう。夜中に動悸がするの?じゃあ、ホルターつけようか」

「ホルター?」聞いたことがあるような、ないような。とりあえず、胸のレントゲンを撮った。そのあとは心電図を取る。そして血を採る。おや?こうやって書いてみると、すべて体のことを「とる」のでもみな漢字が違うのだなあ。日本語は難しい。

少し待合室で待ったあとに再度呼ばれる。とりあえず取った心電図では、少々不安定な部分はあるけれど、そんなにやばいところは見受けられないらしい。ただ、夜中に動悸がするということで、24時間チェックしてくれる機械を胸に装着した。それが「24時間心電図ホルター」なるものである。

胸や脇に丸いものをペタッと貼り付け、真ん中には何やら小さな機械が装着された。小さな青い光が点滅していた。カラータイマーのようだった。すごい病人になったような姿であるが、人造人間になったような気分でもある。

無理矢理な流れではあるけれど、僕らの世代にとって「人造人間」と言えば「キカイダー」  もちろん「仮面ライダー」も人造人間なのかもしれないが「人造人間」は「キカイダー」なのだ。頭部が半分スケルトンになっていて、中の脳みそと機械が見えるというあのビジュアルは、なかなかエグい。そして当時憧れの的であったサイドカーに乗って颯爽と走る。

「キカイダー」は好きだったけど、誰が変身していたか、どんな怪人がいたのか、どんな主題歌だったのか。まったく思い出せない。ということはそんなに好きというわけではなかったか…まあ、とにかく「ウルトラマン」や「仮面ライダー」に次いで、こういった2番手ヒーローも子供たちの間では、常に人気があったのだ。

ブヨブヨの身体に装着されたその姿は、ヒーローからは程遠いものであるのは一目瞭然だったが、なんとなくその気に少しだけなった。しかしひとつ不安が生じた。その日の夕方、知人の披露宴があったのだ。「お酒は飲んでもいいのでしょうか?」「ん〜、あまり飲まないほうがいいけど、少しならいいでしょう」  楽しい宴の席で「少しだけ飲む」というのもなかなかツラい…

翌朝に取り外しに来るということになり、いったん帰宅した。身体に機械が装着されているせいか、あまり動き回る気分にもなれず、遅めの朝食をとったあと少しだけ眠った。不思議と動悸はしなかった。

夕方、知人の披露宴におじゃまし、自慢のカラータイマーをお披露目した。乾杯と最後の〆にだけシードルをいただいた。やはりこんな身体であったから、二次会は遠慮しておとなしく帰宅した。汗だくになったTシャツを脱ぎ、人造人間になった姿を娘に見せると、娘はギョッとした顔をして「怖〜い」と引きつり笑いをしていた。

寝酒もできないし、早めに寝ることにした。「夜中にヒドい動悸がなければいいな」少しばかりの不安を抱きながら布団に入った。

「人造人間ホルター」になった気分も明日の朝で終わりだ。困ったときにいつも現れるのが僕らのヒーロー。でも「人造人間ホルター」は、一度限りの激レアなヒーローであってほしい。


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