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2019-03-18

近藤金吾ライブ【 年中☆夢中 2019 】at 弘前ASYLUM


私は仕事を20時に終える。駐車場の車に乗り込み、キーを回してエンジンがブルルンと鳴ると同時に、FM青森がラジオから流れてくる。

カーナビが故障し、ディスクを読み込めなくなっているので、ここ2〜3年は車でCDを聴いていない。FM青森がデフォルトになっていた。

毎日のように聴く20時台のFM青森のなかで、火曜日20時の「せーのでFight♪」が楽しみだ。「チーン!!」 パーソナリティが喋りを噛むたびに鐘(カミチン)が鳴る。その、火曜日のパーソナリティが「近藤金吾」さんというミュージシャンだった。

 

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アーティストであれば「坂本龍一」とか「山下達郎」とか呼び捨てでもいい。だから「近藤金吾」さんも「近藤金吾」でいいのだが、ずーっとラジオを聴いていたせいか「金吾さん」が耳に馴染んでいる。ファンから寄せられる手紙やメールでは、誰もが「金吾さん」と呼んでいるからだ。

金吾さんと私は同じ1962年生まれ。そして彼は深浦、私は鯵ヶ沢と、これまた同じ西海岸の生まれ育ち。でも面識はない。もちろん、私が一方的にラジオを通じて知っているだけのことなのだが、つい先日ひょんなことから金吾さんとFacebookの友達になった。

私には、中学校の時に3年間クラスが一緒だった公樹という親友がいる。彼は山や森林の専門家だ。そんな彼と数年前に再会した。「どこか面白いところで飲んでみたい」という彼からのリクエストがあったので、私は弘前の土手町にある「ASYLUM」に連れて行った。

「ASYLUM」は知る人ぞ知る弘前の飲み屋だ。いや、店の雰囲気は知る人ぞ知るという感じだが、誰もが知っているロック酒場かもしれない。

店主のヒロシさんは、かつてルネス街というテナントビルにあったレコード屋「Joy Pops」を経営していた、知る人ぞ知る…いや誰もが知っている「弘前の音楽番長」である。

うちの店もルネス街の向かいにあったので、30年ほど前からヒロシさんのことは知っているが、今のヒロシさんはもはや仙人の風貌になっている。そんなヒロシさんの店「ASYLUM」に旧友の公樹を連れて行った。公樹は店のディープな雰囲気がとても気に入ったようだった。

飲みながら、話の流れで「近藤金吾」の名前が出た。実は、公樹は金吾さんとは高校時代からの友達なのだそうだ。するとヒロシさんが「お!近藤金吾知ってるんだ?」となった。ヒロシさんも知っているようだった。私は「たまにラジオで聴く名前だな?」という程度だったが、それ以来、金吾さんのラジオには耳を傾けるようになった。

いつだったかはっきりと覚えていないが、火曜日の夜、金吾さんが番組の中で「今度、初めて弘前で単独ライブをやります。「ASYLUM」というロック酒場でやります!」と話していた。私は、ふと公樹と飲みに行ったことを思い出し、公樹にメッセージを送った。「近藤金吾さん、あの時の飲み屋でライブやるみたいだけど、一緒に行こうぜ」

 

ASYLUM と 公樹

ときおり小雪の舞う3月の弘前。50半ばを過ぎたオッさんが二人、「ASYLUM」の前で記念撮影をする。そして小さなライブハウスのドアを開けた。

「金吾!」と公樹が小さな楽屋のカーテンを開けた。中から「お〜」と金吾さんが出てきた。「先日、メッセージした本間です!」と私は金吾さんに話しかけた。つい先日、公樹の紹介で私と金吾さんはFacebookの友達になっていたのだ。

「楽しんでってください〜!」 火曜のラジオで聴く、慣れ親しんだ声が返ってきた。

私と公樹はカウンターの前の方に座った。ビールを飲みながら、開演を待つ。次々とお客さんが入ってきた。公樹の話によると、どうやら青森から駆けつける人が結構いるらしい。小さなライブハウスはあっという間に金吾ファンで埋まった。

金吾さん登場。今夜は一人でチューニングからアンプの調整までやるらしい。機械をいじりながらギターの音をチェックする。どうやら調子がいまいち良くないらしい。プラグを抜き差しするうちに直ったようだ。

ライブが始まった。金吾さんの歌声を聴くのは初めてだ。ラジオで何度か耳にしたことはあるが、目の前で聴くと伸びのある高音がスゴい!さらにファルセットの情緒ある歌い方も素晴らしい。

実は、金吾さんの歌はほとんど知らなかった(金吾さん、すいません)。ラジオで聴いたことはあるのかもしれないが、どちらかといえば金吾さんのトークが楽しくて、耳を傾けていたのが正直なところだ。

一般的に初めて聴く歌は、メロディはなんとなく聴けても歌詞が良くわからない…ということが多い。しかし、金吾さんの歌は、何を歌っているかがよくわかる。私はまるでずっと前から好きだった歌を聴いているような気持ちになって、金吾さんの歌を聴いていた。

現代社会に対する疑問を歌ったデビュー当時の曲。ふるさと深浦や白神を想う曲。そして金吾さんが好きなビートルズのレパートリー。酒も入り、どの曲も心地よく聴けていたが、ビートルズを歌っているときに事件は起きた。

スピーカーから聴こえる音が途切れ途切れになり始めた。やはり、機材の調子が悪いのだろうか。金吾さんは歌を中断した。ヒロシさんも一緒になりいろいろと機材の調整をしていた。

「もう、今夜は電気なしでやります!」 金吾さんが言った。ライブは思わぬカタチで、アンプラグドライブとなった。金吾さんは少し申し訳なさそうな表情だったが、まわりの観客たちは生声、生ギターが聴けるとあって逆に大盛り上がり。

ジャックを外したギターと、マイクを外した金吾さんの声が奏でる「let it be」は最高だった。私はなぜか涙を流しながら聴いていた。

 

絶叫する金吾さん。この後、アンプラグドとなる。

結局、ライブは最後の最後まで、アンプラグド、ノーエレキテルのまま続いた。最後のアンコールでは、ラジオ収録用に観客全員による「せーのでFight♪」コールで締め。近藤金吾の初弘前単独ライブは、ハプニングを最高のパフォーマンスに変える素晴らしいライブとなった。

ライブの後、公樹は青森行きの最終電車に乗るために先に帰ることになった。「ASYLUM」に残った数人と金吾さんとで少しだけ一緒に飲んだ。一仕事を終え、ビールを一口飲んだ金吾さんが言った。

『 マイクなしアンプなし、電気がなくても歌が唄えた♪ 「そんなの当たり前だろ?」って誰かがどこかで笑ってる。 人生ってまだまだ面白い(^^) 』

 


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