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2019-08-01

最後の夏休み / 「ハプニング」を楽しめ!


 

目が醒めると、そこは八戸市内のホテルだった。娘はまだ熟睡している。部活の練習がないのも久しぶりだ。もう少し寝かせておこう。

昨夜フロントでいただいたドリップコーヒーを淹れる。テレビは点けずに持参したPCを開く。イマドキはどこのホテルもWiFiがあるので、PCを覗くことの方が多くなった。

今日は二人ともお休みの日だ。夏休みのほとんどが、部活の練習やコンクールで終わってしまいそうな娘にとって、今日の休みは貴重な一日。

二人で相談して、「いわて こどもの森」に行く計画を立てていた。3年前の夏休みにも、一緒に訪れていた。屋内には巨大なアスレチックがあり、外には広い水浴びスペースがあった。

そのときは、水浴びが出来るのを知らなかったので、Tシャツのまま水に入った。今回はしっかりと水着とゴーグルも持参していた。

 

いくらでも寝れそうな娘を起こし、店の駐車場に停めてあった車に向かった。天気は少し曇りがちだったが、雨さえ降らなければ水浴びはできそうだった。

コンビニで朝食を調達して、いざ出発! 高速を少しだけ利用して、およそ1時間半ほどのドライブだ。

 

 

しかし娘は起きたばかりだからか、後部座席にヨコになると朝飯も食べずに再び寝入ってしまったようだ。まあ、目的地に着くまでの間は、寝ていた方が飽きなくていいかもしれない。私は感度が悪くなったFMを聴きながらハンドルを握っていた。

高速を降りたところで娘を起こした。国道をひたすら走ると、「こどもの森」の看板が見えてくるはずだ。

しかし、目的地が近づくにつれ、空が黒くなりだした。やがて、フロンドガラスは小さな雨粒に覆われ始めた。

「いやあ〜雨降ってきちゃったよ…」

娘に言うと、「あ〜」と言いながら、しまいには「なんか具合が悪い」とか言い出し、再びヨコになってしまった。完全にテンションは下降していた。

道の向こうに看板が見えた。「もう少しで着くよ!」

私は後ろの娘に向かって叫んだ。娘は調子が悪そうな表情で窓の外を眺めている。まだテンションは下がったままのようだった。

国道を右折すると、「こどもの森」に向かい長い坂が現れた。しかし、その長い坂の上の方は、厚い雲に覆われていた。

28℃くらいあった気温だが、雲が垂れ込めてくるとみるみる気温は23℃まで下がる。小雨も降り、気温も低いとなると、これはいよいよ水浴びは厳しそうだ。

う〜ん。これは屋内のアスレチックだけになるかな…と思案しながら坂を登り続けると、やがて「こどもの森」の施設が見えてきた。自分の記憶も少しずつ蘇り始めた。

ぐる〜っと道を大きく回ると駐車場に出るはずだ…と思ったが、なにか様子が変だ。夏休みだというのに妙に静かだった。天気のせいだろうか。

駐車場の入り口まできたところで、私は自分の目を疑った。

「本日休館日」

おおぉぉ… 声にならない声が出たような気がした。

「休み…みたい…」 後ろにいる娘におそるおそる声をかけると、「へ?」と言って、彼女は再びヨコになってしまった。もはやこれ以上落ちるテンションはなかったようだった。

それにしても。事前に開館しているかどうか調べなかった自分が悪いのだが、まさか夏休みの真っ只中に、子どものためのレジャー施設が休館しているなど、これっっっぽっちも考えなかった。ラーメン屋なら店休日を調べたのだが…

途方に暮れ、どうしたらよいかわからない。トイレにも行きたかったが、どうやらコンビニも見当たらない。私はとりあえず「奥中山高原駅」に向かった。

「こどもの森」や「奥中山高原スキー場」のある最寄駅なので、勝手に観光地的な賑わった駅を想像していた。が、駅はこじんまりと、そしてひっそりとしていた。

 

いわて銀河鉄道「奥中山高原駅」

駅前も街と呼べるほどの規模ではなく、小さな集落といった方がいいかもしれない。ひなびた雰囲気というよりも、もともと小さな集落といったかんじだ。

駅の駐車場に車を停め、作戦会議。ここからどこかレジャー施設に行くとしたら、「小岩井農場」あたりか。でもけっこう距離があるなあ。

「とりあえず弘前に向かって帰りながら、途中どっか寄っていこうか?」

と訊くと、娘は「うん」と、面倒くさそうに再び後部座席で目をつむってしまった。

奥中山からは安代のインターに向かってひたすら山道を走る。車一台がようやく通れそうな狭い道。七時雨山あたりにくると雲は低く垂れ込め、再び小雨が降り出した。

やがて大きな道に出ると、安代の街まではすぐだった。ようやくコンビニを見つけ、休憩を取る。

さて、どうしようか。このまま高速で帰ってもいいが、それだとあまりに娘に申し訳ない。どこか面白いスポットがないかな?と検索してみると、鹿角の道の駅がオモシロいらしい。

 

道の駅かづの「あんとらあ」

高速で20分ほどで、あっという間に着いた。その名も「あんとらあ」

「あんとらあ」といえば、ウルトラマンに出てきた「アントラー」という怪獣を思い出す。カブトムシとクワガタを合わせたような怪獣だったと思う。

日本各地で「道の駅」の登録がブームというか競争になっている感もあるが、この「あんとらあ」は割と古い施設のようだ。そもそも、なぜ「あんとらあ」なのかと思ってググってみたら、名の由来は「鹿の枝角」(鹿角)の「antler 」をひらがなにしたものらしい。なるほど。

いたるところに「きりたんぽ発祥の地」と書いてあったので、「きりたんぽ」を食べることにした。味噌を塗って焼いたもので、とても香ばしく美味い。パクついていた娘も少しばかりテンションが上がってきたようだ。

「花輪ばやし祭り展示館」なるものが併設されていた。中には金色に輝く祭り屋台がたくさん展示されている。「見る?」と訊くと「なんかお葬式みたいだから見ない」と娘が言った。確かに、そう見えなくもない。

館内をぐるりと廻りながら、最後に桃のソフトクリームを食べた。

 

祭り展示館の前で。中には入らず。

鹿角を出発し、国道282号を弘前に向かって北上する。先日、ロードバイクで走った「小坂〜坂梨峠」を走る。まさかこの短期間で二度も走るとは思わなかった。

峠を越えると碇ヶ関だ。私はふと思い、娘に言った。

「もう少しで碇ヶ関だけど、前に行ったことがある碇ヶ関のプールに行く?」 「行く行くー!」

娘のテンションは一気に上がった。

 

酸ヶ湯経由で八戸に行き、八戸から「いわてこどもの森」を目指し、最終的には碇ヶ関で泳ぐことになった今回の旅。

帰り際に娘に尋ねてみると、一番楽しかったのは、「碇ヶ関のプール」だったとのこと。子供にとっての楽しい思い出は、「どんな遠くへ行く」ことよりも、近場でもいいから「何をした」なのかもしれない。

反省の旅であったが、「ハプニング」もまた良き思い出。

 

道の駅情報 ⇩⇩

「道の駅かづの あんとらあ」

 秋田県鹿角市花輪字新田町11番地4

公式HP → 「道の駅かづの あんとらあ」


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