ツール・ド・ツガル / 『蓬田村の風景 ②』
磯くさいかまりこは、故郷のかまり(かまり=かおり、匂い)。
蓬田の漁港は、鰺ヶ沢の雰囲気とよく似ていた。
私は漁港でしばしの間、ぼんやりと時間を過ごした。
カメラを片手に時間を過ごすのは、随分と久しぶりのことだ。
毎年のように訪れた三厩集落でも、撮る被写体といえばいつも漁具が多かったが、ここに来てもそれは変わらず。
この一帯は浮き玉が多い。ガラスもあればプラスチックもあって、カラフルな色もあれば黒もあった。私はいろんな浮き玉をファインダー越しに見た。でも浮き玉を撮るにはちょっと天気が良すぎた。反射がきつい。
特段フォトジェニックなものは無かったが、それでもよかった。長閑な時間と風景がそこにある。それだけで十分だった。
私は再びロードに乗って国道へと出た。「蓬田駅」の案内板が見えたので、駅の方に行ってみる。
当然のことながら駅は無人駅だった。新しくキレイな駅だったが、予想していた以上に小さい駅だった。
駅の中には誰もいない。非行防止を呼びかけるポスターがたくさん貼ってある。
とくに撮りたいものも無かったので、そのまま駅を後にしようと思ったその時、向こうにある踏切で音が鳴った。私は急いでロードを立てかけてカメラを構えた。
貨物列車があっという間に通り過ぎた。
貨物列車が通り過ぎた後、少しの間ぼーっとしていたが、我にかえり、国道からそのままバイパスへと向かった。
バイパスは道が新しいせいか、まわりに建っているのはホームセンターや道の駅(正確には村の駅)だったりして、どこにでもある見慣れた風景である。
古い家屋が並ぶ国道を走ってきた不思議な感覚から、いきなり現実に引き戻された気持ちになった。
「村の駅 よもっと」という道の駅のような施設があった。地場の農野菜などを販売しているが、海の幸もたくさん売られている。
蟹も売られていた。思わず(買って帰ろうかな…)と頭をよぎったが、さすがに蟹を携えながら走るのはちょっとシンドい。
館内にはレストランも併設されていて、平日ではあったが随分と賑わっていた。味噌ラーメンが人気のようだ。少し腹は減っていたが、帰りに浪岡でカツカレーを食する画策をしていたので、ここは我慢。
外に出ると、魚売り場の日当たりのいい場所で、猫が寝ていた。
バイパスから旧道に戻り、私は青森に向かい、再び来た道を走り出した。
ほんの少しだけ、日常を忘れさせてくれた「蓬田の旅」であった。
「グゥゥ〜」
あ〜早くカツカレーが食べたい。
(またもや次回へと続く)
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